1-6 ユニークスキル ファブリケーターの秘密

『申し訳ございませんが、現状攻撃魔法は使えません』


えっーーーーーーー うそ マジ えええええ ありえない!心が折れそうになった。憧れのチーレムが・・・ ああ 大賢者様とか呼ばれたかった・・・爆裂魔法使いたかった・・・・・ああああああ 泣きそう。


『誠に申し訳ございませんが、大多数の攻撃魔法スキルとファブリケーターは排他仕様となっておりますので併用できません。』


えっ まじですか?転生の際に女神様にお願いした気がするのだが、あっしたよ。確かにした。全属性魔法を使えるようにって。見た目はお願いしなかったが魔法はしたよ。


『はい。その件は確かに承っております。ファブリケーター内では全属性魔法が使用可能になっており、お約束の全属性魔法のリソースをご提供しております。』

『じゃなんで攻撃魔法が使えないの?』

『この世界で一般的に使われるとお客様のユニークスキル”ファブリケーター”では魔法の実行環境が完全に異なるためです。』


ステラによる解説をまとめるとこんな感じ


・ファブリケーターとは、この世界で一般的な魔法と全く異なる魔法体系である古代魔法をベースに女神様がカスタマイズして作り出したスキルである。スキル扱いだが実際には専用魔法。この魔術体系自体はガルムガルドでかつて使われていた体系であるが、使えるものが少なかったため廃れた。あまりにも複雑で詠唱できる者が少なかったからだ。学校制度もなかったし書物にもごくわずかしか残せず、それすら記述された言語を使う民族が絶えた為読めるものがいなくなってしまった。それを発見した管理神様がいい感じにアレンジして俺の体にインストールしてファブリケーターと名付けた。


一般的な魔法との違いは魔力の管理制御方式。パソコン用のOSをイメージするとわかりやすいかも。例えると昔の漢字トークと今のMAC OS位、大きく違う。具体的には、この世界の魔法使いは全て術者体内の魔力のみによって行使され、それを前提とした魔法体系を身に付けている。それに対し、ファブリケーターの魔法体系は、術者の魔力はあくまでもきっかけとしてしか使用しない。原材料と大気中の魔力を使うことで魔術を行使する。その結果膨大な魔力を必要とする物質を自由度高く作り出す事ができる。その代償としてこの世界の一般的な魔法体系の魔法を使うことができない。MAC OS上でWinアプリが動かないのと似ている。


・例外的に使用できるのは生活魔法と各属性魔法の初級の一部だけ。使用する魔力がごく微量だから。それでさっきウォーターは使えたのだ。理由は異なるのだが身体強化魔法も使える。これは元々が体内のみで使うので外部の魔力の影響を受けないから。同じ理由でファブリケーターの各種魔法は接触している相手に発動可能。但しこれにも制限があって威力が大きすぎる上にマニュアルで威力調整ができないので自分も巻き込まれる恐れがある。というかこの魔法体系は小さい方向へは制御しやすく精密加工等に向いているが、大きい方向へは制御しにくくあまりにも危険なので魔力制御のLVによって解放する制約を女神様がつけたらしい。その辺を考えて使う様に注意された。


・先ほど使った「ウィンドカッター」は風属性の攻撃魔法だが、俺がさっき使っていたのは別の魔法。見た目や効果が似ているのでそう呼んでいるだけで実際には「トルエノ フィロ」というファブリケーターの切断機能を具現化した魔法。攻撃にも使うことはできるが行使対象指定がエリア単位だったり威力の調整がマニュアルではできないので恐ろしく使いにくくお勧めできないと言われた。

『全自動で指定範囲内の生物を友軍諸共切断してしまいます。但し習熟度が上がると切断対象を個別指定できるので、その際はご利用ください』


では、ファブリケーターの環境で使える攻撃魔法を知りたいとステラにお願いしてみたが

『禁則事項です♡』と物まねで返してきた。お”い”(怒)どこからこのネタ引っ張ってきたんだ。


『ここで管理神様からのメッセージです』目の前にAR表示で管理神様のアップが表示される。


”お主に古代魔法の攻撃魔法を与えるとほぼ魔王状態になるぞ。この世界全体から討伐対象にされて勇者を次から次と送り込まれるぞ。妾にはそんなお主の未来が見えてしまった・・・・かわいそうじゃが高難易度攻撃魔法は封印したのじゃ。うっ・・・うっ・・・・不憫でかわいそうじゃけどお主のためじゃ分かってくれ・・・・じゃあのぉ” 画面がワイプアウトした。


『とのことです』

 明らかにウソ泣きだろそれ・・・。多分忘れたんだろうなー。ファブリケーターいじるの面白すぎて。で、後から気が付いて魔力制御とリンクさせたのだろう。まあそれでもいいや。最初はファブリケーターで創り出した武器を試していくさ。


・どうしても攻撃魔法を使いたい場合は何らかの物質に付与魔法で付与し魔石の魔力を利用して実行することはできる。ただし、コスパは最悪で魔石のサイズや属性の制限を受ける。当然大きな魔法は大きな石が必要で大変お高くなってしまう。


ここで嘆いても仕方ない。前向いていこー。と絶望的な点差で負けている試合中の高校球児みたいな気分になった。

見た目はおっさん、攻撃魔法は使えず・・・はぁ 魔法で無双 見た目かっこよくてモテモテチーレムの夢は早くも終了してしまった。


ただ冷静に考えてみると嫁一人でも苦労してたのにわざわざ複数と付き合うとか考えたら無理ゲー状態だよな。普通に考えると。

コミュ力お化けなら問題ないだろうけど正直俺はしんどい。若いうちに一緒になったなら一緒にいる状態がデフォルトだから苦にならないだろうけど、いい歳こいてもう一回誰か異性と暮らすとか考えにくい。

 

まっ、この機会に猫か犬でも飼ってみるのもいいかも。一人のままだと言葉を忘れそうで怖い。精神的にもつらいし。

気分を変えて資材集めを再開する。


『これである程度資材が集まりましたので、次は廃坑へ移動しましょう。トレーニングを兼ねて走って移動します。走りながら体に魔力を巡らせてください』


ステラさんや ちょっとそこまでストイックにならなくても良いのではなかろうか?


『いえ 作りたての身体ですので馴染むために少しずつ負荷をかけておかないといけないのです。身体状況はモニターしていますので安心して全力で走ってください』がんばれ 俺。

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