1-5 【悲報】仕様により攻撃魔法は使えません。

草原から森の浅い場所を目指して歩き出した。そして歩きながら考える。この世界でどう生きていくかを。

 

第一にここ周辺で食料を確保しながら自分の能力やこの世界のことを把握するのが先決だと思う。特にファブリケーターは多機能すぎてその力を把握しきれてないから、まずは理解して色々と試しておく必要がある。食料のあるうちに。俺は結構、取説はきちんと読む派なのだ。


次に魔法の練習。異世界の醍醐味。これがなかったら多分この世界には来なかったと思う。爆裂魔法でヒャッハー! 妄想ダンスィの夢だよね。これは地球世界に全くなかったので何が出来て何ができないのかを知りたい。もし使えるのなら魔法で狩りをしてたんぱく源を確保したい。


もちろん装備類もこの段階である程度揃えておいた方が良いだろうからその準備もだ。


 その次が戦闘訓練。実際この世界で必須と思われるがこれも経験がない。極めて当たり前の事だが、戦闘経験というやつが絶望的に不足している。オラオラ系のヤカラならともかく普通に日本で社畜していたから不足してて当たり前だ。そもそも人を殴ったこともないし野生の熊と戦おうと思ったこともない。色々とステラに教えてもらう必要があるな。


『ステラ そういえば さっき見たステータスというやつの中にあったスキルってあっただろ?あれ何?』

『スキルとは習得している技能を数値化しているものです。才能+経験×強度+知識+スキルアーツの総計値を基にこの世界で相対化した後、表示されます』

『という事は 俺は既に格闘術や短剣術、射撃術がある程度身についているってことか?』

『はい お客様が管理神様に願われた 地球世界での経験や技能を置き換えたスキル がこれらのスキルになります』


 銃を撃ったこともなければナイフ?を振り回したことも無いのに何でこのスキルが生じたのか。関連する経験って盛り場をフラフラと歩いていた時、おまわりさん4人に囲まれて「君ナイフとか持ってないよね?」といきなり職務質問されたことくらいか。


『この元になる技能や経験は実戦でなくともトレーニングでも取得可能です。覚えていませんか?』


あっ あれか。射撃術は地元のエアガン屋の常連だったので、親睦サバゲー大会によく出ていたからか。人数足りないとき良く呼ばれてたし。いつも自前のカスタムプロップガンで出てたから 変態カスタムオヤジって呼ばれてたのはいい思い出だ。それに自宅一階の工房にシューティングレンジ作ってテスト射撃相当やってたし、会社で嫌なことあったらアサルトライフルで撃ちまくってたからか。何となく納得。


 格闘や短剣術はそのサバゲー大会で良く合う駐留軍人の黒人軍曹フランクが副業で教えていたダイエットと護身術をビリー教官っぽく教えるクラブマガ教室で習ってた。彼らも給料安いので色々と副業やっているらしく賑やかしとカンパとエクササイズ兼ねて参加していた。フランク 子供4人いたしな。週1回、1回2時間で3000円 月額払いで1万円だった。

 ダイエットを売りに客を集めていたが、クラブマガって本来、軍隊や警察向けの格闘術だから効果あったのかな。おまけに本来だったら一般人に教えないゴム製ナイフ持って攻撃方法まで教えていたし。どんなダイエットじゃ。

 しかもエアガン屋とコラボしてやってた格闘射撃術 C・A・Rシステムの限定セミナー 廃墟型のサバゲフィールド貸し切り3時間10,000円と高かったが気分はジョン・ウィ〇クで大人気だった。現役のプロが教える室内戦闘。3時間で2つのセッションがあり1つは基本動作と最低限の連携、もう一つは人質を取ってビルに立てこもるテロリストを制圧する訓練。テロリスト役が全員現役の兵士でマジ怖かった。まあ人質役がエアガン屋の店長だったから失敗してもいいか、くらいに考えていたのは俺だけか。それにしても、あんな技能教えてくれる人がいないからって所属不明の公務員様達に大人気ってやばくね マジモノが集まるあのセミナー。


 ただ、フランクに習っていたクラブマガも本質的には対人格闘であり魔獣なんて想定していない。殺し合い前提では役不足な気がする。彼も護身術として教えてくれていたし。基本的には襲われたら逃げろってのが口癖だったからね。何らかの攻撃手段を身に着ける必要はあるだろう。生き残るためには。


 魔法はどうだろうか?全属性の魔力適正、貰ったけど使いこなすまでにはまだまだ時間がかかると思う。今日明日の身を守るには心もとない。やはり得意な武器”銃”を手に入れる必要がある。銃はファブリケーターで作れると思うが火薬はあるだろうか? 後でステラに聞いてみるか。そんな事をダラダラと考えていたら森に着いた。


 森に着き果物をもいで食事をすませた。イーゴって普通においしい。果物ってスーパーで買うと意外と高いから久々に際限なく腹いっぱい食べた。果物だけで満腹ってある意味とんでもない贅沢だな。文字にすると美しいエルフの食事シーンっぽいが、見た目単なるおっさんが野生の果物をむさぼり喰ってるだけだからな。ああ、せめてジャ〇タレ位のルックスって女神様にお願いしておくんだった。後悔先に立たずだ。


 ステラの指示で森の薬草や果物を「ウィンドカッター」と「ブロー&コレクト」で収穫した。これらも収納されファブリケーターによって各種の素材になるらしい。また薬草は売却できるので一部素材状態で保存することにした。

 ディメンションストレージ内には時間経過の無いエリアを設定することができ、鮮度や温度を保つ必要のあるものを分けて収納できる。イメージ的にはクラウドストレージにホルダーを作ってホルダー内の機能を任意に設定できる感じだ。デジタルデータならともかく、現物を無制限に収納したり時間経過を変えたり、内部で自動加工したりと、ここだけで立派なチートだよな。女神様ありがとうございました。感謝と恩返し大切だよね。ドラマで目つきの悪い銀行員役の人も言ってた。うん。 そんな事をうだうだと考えながら木陰にすわり食休みして心地よい風を愉しんでいた。


落ち着いたところで懸案だった事を聞いてみた。


『ステラさんや 攻撃魔法を覚えたいのだが、すぐに覚えることは難しいか?』


『申し訳ございませんが、現状攻撃魔法は使えません』

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