1-3 T-10〇0じゃねぇよ とりあえずパンツ作ります。

『お客様・・・・お客様・・・』


背中が痛い。目を開けると空の明るさが目に刺さる・・。

周りを見るとここは草原で少し離れたところに砂利道が通っている。その道の向こうには廃墟じみた鉱山っぽい物と深い森が見える。ひょっとして、ここがガルムガルド?


『お客様・・・』


何だ・・・風がひんやりして気持ちいいい・・・・・つか何で裸なんだ?俺 


えっと・・・ まるで未来から送り出された殺人サイボーグ映画の第二弾みたいだ。

ひょっとして体が液体金属?その辺のおっさんから服、剥ぎ取らないといかんの?


『お客様・・・・・・・お目覚めになりましたか?』


どこからか声がが聞こえる。自然だけどどこか機械的な女性の声だ。まるでコールセンターのオペレーターの話し方に似ている気がする。


『お客様 ご気分はいかがですか?』


「誰だ?どこにいる?」


『お客様の頭の中でございます。女神シェミエル様よりご案内があったかと思われますが、お客様のユニークスキル 統合開発環境ファブリケーターのナビゲーターと申します。お客様がファブリケーターをご利用の際、スムーズにご利用できる様サポートいたします。よろしくお願いします』


「よろしくお願いします。ナビゲーターって役職名ですよね?お名前を伺っても宜しいですか?」 思わず仕事口調で聞いてしまった。


『声に出さず、頭の中で考えて頂ければ会話が可能です。ご指摘の通り管理者としての名称です。よろしければ呼びやすい名前でお呼びください』


『じゃ ナビ子 で』 


とっさに思いついた名前は、なんか微妙なB級ガジェットのキャンペーンキャラみたいな、しまらない名前だった。


『・・・・・・』


『訂正 ステラ でどう?』 天体ナビゲーションソフトの有名どころの名前から頂きました。


『ありがとうございます。では 以降 ステラとお声かけください。よろしくお願いします』


やっぱ嫌だったんだ・・・・ナビ子 ・・つか ごめん。


『了解 ステラ 改めてよろしくね』


『改めてご案内いたします。なぜ 裸かと申しますとこの世界”ガルムガルド”へ転移する際 肉体を再構築いたしました。ですが生命の宿る肉体の再構築は魔力的な負荷が大きいため、お召し物のような人工物は”そのくらいは自分でがんばるのじゃ”という管理神様の一声でご自身で作って頂くこととなりました。悪しからずご了承ください。』


・・・・・・・女神さ・・ま・・・。


『早速ではございますがお召し物を作成したいと思います。まずは最低限身にまとうものを作りましょう』


”おうっおう・・”


『まずは周囲をご覧ください。周囲に生えている草から服を作ります。そのためには以下の流れでこの肉体での魔力セットアップが必要になります。下記の手順で行ってください』


目の前に文字とイラストが浮かび手順が示された。おおARグラスっぽい 異世界って無茶苦茶サイバーっかも


『いえ これはお客様のユニークスキル”ファブリケーター”による能力の一部です。この世界でこういう見え方をする人は他におりません』


そうですか。 まあいいや  オラ ワクワクしてきた!


1.まずは座禅の体勢になり落ち着きます。


2.へその下あたりにある(丹田)を意識して少し力を入れてみてください。


3.丹田の中に少し熱を感じられると思います。それを体の中を巡らせてみてください。


4.何度も繰り返し体中に巡らせるようになると終了です。



うーん 裸で草原で座禅って・・・・怪しい新興宗教みたいだ・・・。でもやらない訳にはいかないんだよね。


まあ やってみますか。


体感時間で10分ほどやっていると何となく体の中に何か力が湧き出てくるのが分かった。

へその辺りでぐるぐると廻し、その力を手足、頭の先と意識して動かしていく。

指先の一本一本まで行き渡ったと感じたとき精神が落ち着いたような気がした。


『初期設定 魔力充填が完了しました。次に現時点での状態を確認してみましょう。ステータスと念じてください』


『ステータス』

名前:コージ(高瀬 浩二)

 種族:ヒト族

 年齢:15歳(39歳)

 性別:男

 LV 1

 HP(生命力):100

 MP(魔力):300

 

【スキル】

  異言語理解

  格闘術:LV2

  短剣術:LV1

  射撃術:LV2

  生活魔法:LV1

  鑑定術:LV1

  隠ぺい術:LV1

  錬金術:LV1

  鍛冶術:LV1

  付与術:LV1

  探査術:LV1

  詠唱破棄

  多重魔術行使

  魔力操作:LV1

  魔力耐性

  毒耐性

【ユニークスキル】

  取得経験値増加

  ファブリケーター(統合開発環境)

  ハイスピードマルチシンク(高速並列思考)

  ディメンションストレージ(無制限)

【魔法属性】

 火:LV1

 水:LV1

 土:LV1

 風:LV1

 光:LV1

 聖:LV1

 闇:LV1

 無:LV1

 空:LV1

 *古代魔法のみ有効

【加護】

管理神”プリティー”シェミエルの加護


 まるでゲームのステータス画面のようだ。内容が多すぎて頭がついていかない。

『こちらの説明は追々いたしますが、今は周囲の草を刈り、服を作り着用することを優先事項と考えます』

『了解した。因みにこのまま裸で他人に見つかるとどうなる?』

『推測ではございますが、蛮族の襲撃とみなされ攻撃された上、最悪は殺害されることがリスクとして想定されます』

うーんヤバイよヤバイよ 通報どころじゃないよ。マジヤバイ。話しても分からないのがデフォなところとは怖すぎ野蛮すぎ。

『周辺には人はいないと推定されますのでご安心ください。では始めましょう。最初に材料を集めましょう。周囲をスキャンして見てください』


いきなり、見えるすべての物にAR風に名前やら注意書きが表示された。うざっ。

『必要な物をイメージしてください。表示情報にフィルターが掛かることで表示情報を制御することが可能になります』


糸にできる草 でサーチすると周辺にリナセアという文字が表示された。どうやらこの草で糸が作れるらしい。

『では 周辺一帯の草類をすべて刈ってしまいましょう。刈った物を収納し自動で分類し、素材として利用可能な状態まで前処理をしてしまいます』


ちょっと待って。ひょっとしてフルチンで草を手でむしるの?! それこそ変態の所業ではなかろうか?


『いえ、範囲指定した上で風属性魔法で刈り取ってしまいます。その後風属性魔法で一か所に集めて収納してしまいます。本来でしたらトレーニングが必要でございますが、今回はチュートリアルということで私がリモートで魔法の発動及び魔力制御いたします。まずは刈り取る範囲をイメージしてください。次に風属性魔法ウィンドカッターとトリガーワードを唱えてください。回転する刃をイメージするといいと思います。では、お願いします”』


「ウィンドカッター」 そっとつぶやくと 3つの1mくらいの円状の刃物が出現し ぐるぐると回りながらあっという間に見渡す限りの草原を刈りつくし、そして刃物は消えた。


『では次に刈った草を集め収納しましょう。風魔法”ブロー&コレクト”と唱えると目の前に集まります。集まった草を”素材収納&プレ加工”と唱えると材料として収納されます。では、お願いします』


「ブロー&コレクト」 3つの小さな魔法陣が現れそこから小さな竜巻が起こると刈り取った草を巻き上げながら動き出した。やがて目の前に集まると1つに交わりそして収まった。背の高さの3倍くらいの大きな草の山が出来上がっていた。驚きの吸引力!あの掃除機もびっくりだ。


「素材収納&プレ加工」 大きな山が一瞬にして地面の中に引きずり込まれるようにして消え、目の前にAR表示でたくさんのリストが表示された。


『これは収納した物の一覧になります。物質名の横にあるのが状態表示です。今 すべて加工前処理の工程を行っておりますが、10分ほどで衣類に最適な糸になりますので、その後衣類が加工可能になります。続いて作りたいものをイメージしてください。サイズは先ほどステータスを確認した際のデータが反映しますので、形状を指定してください』


頭の中にトランクスをイメージした。ウエストは紐で縛るようにし前開きはボタンなしにした。

布状にして縫製するのではなく、糸をイメージした形状に編み上げる形で作るようだ。


「プリント」トリガーワードを口に出すと 魔法陣が地面から浮かび上がり空中に麻で出来たトランクスが出力された。


「おおおっーー すげーーーー」麻のパンツって上質すぎる!。早速穿いてみる。


 ジャーーーストフィッーーート! 

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