文化情報論その10.居直り企画

「B級グルメ」のように反意的要素(B級は低級←→グルメは高級)を組合わせた企画は何故か居直り企画とよばれている。


 A君は某大手製菓会社の開発部に勤めている。入社二年目だが、まだヒット商品を開発したことがない。

 空前のスウィーツブームと云われているが、その一方で、空前のヘルシーブームが「甘いモノ離れ」を加速させている。この矛盾に目をつけたA君は、極端に甘さを抑えた「全く甘くないスウィーツ」という居直り商品を考えた。

「部長、僕はこれ、絶対にヒットすると思うんですけど」

 A君は、ほぼ完ぺきと自負するプレゼンテーションの後、試作品を載せた皿を企画部長の前に置いた。

 部長は幾多のヒット商品を開発してきたベテラン企画者である。商品開発の神様と呼ばれた人だ。

 その神様を今日、唸らせてみせる。A君には絶対的な自信があった。

 部長は一口食べるなり、「ふん」と鼻で笑い、言った。

「あまいな」

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