文化情報論その8. 先入観と情報補正

 情報は現実の事物を捨象しゃしょうしてつくられた「記号」であり、いかなる情報環境も限られた不完全な要素によって構成されていると言わざるを得ない。閉じられた情報環境に置かれた者は時々、情報の欠落部分の補正を(少ないデータが生み出す)先入観によって行う。

 北大、慶大、明大など100円朝食を提供する大学は多いが、湘南にある某工科大は何と朝食0円である。そこの兼任講師を務める父親とともに当校を訪れその事実を知ったM家次男(当時小5)は、その感動を小学校のお友達に伝えたが…

「朝にも給食があるなんてすごい学校じゃん」

「昼の給食もタダなのかな」 

「昼の給食費は四千円じゃないか?(小学校の給食費は\4,000/月)」

「朝の給食がタダなんだから昼の給食もタダに決まってるよ」

「もしかして、夜の給食もタダかな?」

「学年で下校時間が違うみたいだから夜の給食は無いと思う」

「担任の先生も一緒に食べるのかな」

「もちろんでしょ*」

 …といった議論が延々と続き、

「僕、そこの大学に入学したい」

「俺も」…

 某工科大学は少なくとも三人の入学希望者を獲得した。


 *小学校の担任は児童と一緒に給食を食べる。某工科大のゼロ円朝食は学生のみ。

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