文学理論その6.物語の人称とアバター

 アバターavatarはゲームの世界で使われている概念。ゲームの物語に登場する(ゲームをする人の)化身けしんのこと。一時、読者の化身といった意味で文芸理論にも転用され研究対象になったことがある。

e.g.

・“He is a batter.” He said。 Holmes looked him。(「彼は打者バッターだ」と彼は言った。ホームズは彼を見た)『シャーロックホームズの冒険』では語り手のワトソン博士が形式的な主人公且つアバターである。


・貴方は窓枠にとまった虫を見て言うだろう。「あっ! バッタ」

  …この場合、アバターは貴方(読者の人称をもった劇中人物)である。


・「ジャムにしますか? それとも…」

 「あ、バターにしてくれ」とMはコレステロール値を気にしながら言った。

 「コレステロールを気にしているのね」

  奥方はMのメタボ腹を見た。

  …この場合アバターは主人公のMではなく奥方。


・その四人グループを見て、「ABBAだ!」と1970年代の若者なら声をあげるだろう。でも1990年生まれの彼はそのユニットを知らなかった。

 …この描写にアバターは不在。強いて言うなら作家がアバター。


痘痕あばたーもえくぼ:アバターとは何の関係もありません。


*文芸理論におけるアバターについては信頼できるテクストが見当たりません。似非科学かも。

*アバ(ABBA)1972年から1983年頃活躍したスウェーデンの4人組ミュジシャン。

*アバターは正しくはアヴァタ avatar、バッターはbatter、バターはbutter。英語が母国語の人に上記の話をしてもまったく伝わらない。

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