文化情報論その3.伝達過程における情報の変容「おかしらつき」

ユーモアはベースノレッジ:Base Knowledge(共有された情報)上にビルドbuildされなければならない。

情報環境(文化のこと)が異なる場合 、つまり情報交換の当事者双方に情報が共有されていない場合、ユーモア(特にギャグ)は成立しない。

 TV等で話題になっている海外のトンデモ日本食は、伝達過程における情報の変容が原因と云われている。しかし、情報変容の責任の多くは情報の発信者=日本人にあるのではないかと私は思う。

 米を炊いたことさえないのに知ったかぶりして外国人に和食の調理法を教えたり、ユーモアのつもりで、わざと頓珍漢とんちんかん法螺話ほらばなしをしてみたり…といった事例を私は数多く知っている。


 ある留学生から「オカシラツキ」とは如何いかなる料理かと問われた時、私は極めて真面目顔マジがおで、次の四説を説明した。


御頭おかしらつき:リーダーのことを日本語で”おカシラ”と云う。

 一寸大きめの魚が複数の魚をひきいているといった感じに盛り付けされた魚料理。

 小魚を数尾並べただけの「雑魚ざこだけ」という盛り付けもある。

 宴席でお頭つきの皿を各席に並べる場合、最も大きく首領しゅりょうっぽい御頭魚おカシラざかなった皿は上座かみざに置く。

 高級料亭では、上座に置く魚は、生前魚群ぎょぐんの先頭を泳いでいた魚を特別に魚河岸うおがしで仕入れる。


②お菓子等かしらつき:デザートにスウィーツなどがついたメニューのこと。


③おかしらつき:高級料亭などで魚料理を注文するとオマケとして焼いた魚の頭部(カブト焼き)が出てくることがある。このメニューのことをお頭つきという。


④尾頭つき:尾も頭もついたままの魚。慶事(auspicious event)に用いる。


 私は④が真説であると強調したのに、彼が採用したのは①だった。同席した日本人学生たちは皆、笑いをこらえていた。①説は留学生の間であっという間に広がり、彼らは多くの日本人に笑いを提供した。


 悪気はありませんでした。反省しております。すみません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る