文学理論その2.ドラマの本質

 Frances Marion(米1888-1973)は、主人公の目的達成へ向けた行動とその様相、即ち、対立と葛藤がドラマの本質であると説いた。


i.e. 対立・葛藤のないストーリーはドラマではない。また、達成すべき目的を持たぬ登場人物はドラマの主人公にはなりえない。従って、『白雪姫』の主人公は、これといった目的をもたぬ白雪姫ではなく、悪い王妃である。王妃が目的を持たないとドラマは崩壊する。


e.g.『SNOW WHITE 1』

王妃「鏡よ鏡、世界一美しい女は誰?」

鏡 「それは貴女です。王妃様」

王妃「白雪姫は?」

鏡 「白雪姫? あんな不細工な娘など貴女の足元にも及びません」

   そして時は平和に過ぎていくのでした。 ドラマ不成立。


e.g.『SNOW WHITE 2』 

鏡「王妃よ王妃、世界一賢い鏡はどの鏡?」 

王妃「残念ながら貴方じゃないわ。白雪姫が持っている鏡が一番よ」

鏡 「えっ! …そんな…あり得ない」

王妃「何なら私が、白雪と一緒に彼女の鏡も亡きものにしてあげようか?」

鏡 「よろしくお願いいたします。王妃様」

 ドラマは成立する。主人公は鏡。


e.g.『SNOW WHITE 3』

鏡「白雪様の御指図おさしず通り、私の手下てしたに白雪様が世界一美人と言わせておきまし

 た。やがて毒林檎どくりんごを持ってここに来るでしょう。でも御安心を。毒は無害な

 ものとすりかえてありますので」

白雪「鏡よ鏡、あの意地悪なババアが失脚して私がこの国を支配したら、お前を悪

 いようにはしないわ。ところで例の国の王子の件は?」

こびと1「そちらは我々が手筈てはず通り…これで例の国も白雪様のもの」

白雪「こびとたち、お前たちもワルよのぉ」

こびと2「ホッホッホッ、白雪姫様ほどでは…」

ドラマ成立! もちろん主人公は白雪姫。


*i.e.。 :id est(つまり) 

*e.g.:exempli gratia (例をあげると)


・派生ストーリー

SNOW WHITE4

王妃「鏡よ鏡、世界一の美人は誰?」

鏡「それは貴女です。女王様」

王妃「それでは、世界で一番お世辞がうまい鏡は?」

鏡「…」

王妃「ちゃんと答えんかい!」


SNOW WHITE5

「鏡よ鏡、世界一の美人はもちろん私よね」

「私の主観では答えになりませんので、美人コンテストに出場なさったら如何いかが

 しょうか? 本年度ミスユニバースの出場申し込み書をお取り寄せ致しましょ

 うか?」

「私は一応既婚者だよ。ミスコンに出場していいの?」

「ミスユニバースの出場資格など、貴女のお権力ちから如何様いかようにも変更可能です」

「そうよね。結果も何とかなるわよね」

「もちろんでございますとも。多少費用はかかりますが」

「すぐに審査員の名簿を手に入れてちょうだい」


SNOW WHITE6

「鏡よ鏡、世界一美しい女は誰?」

「その質問の答えは調査費がかかりますので有料となります」

「わかったわ。じゃあグーグルで検索する」

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