第8話

 1度頭を整理する為に部屋を出た、その背後から

「ああ、シンイチくん。キミが悪いが逃げたら死んで貰うよ、それは2人も了承済みだ。2人には選ばれなかったとして諦めてもらう、そう言う事になっているんだ。

まぁ・・その方が私としてはいいんだ、2人の生存率が高そうだからね」

 逃げても私は構わないんだ、って2人が笑って生きていられるなら逃げるのも手だが、アリス達の目が「逃げないで」と伝えている。

 大昔には[逃げるの奴は恥曝しで役にも立たん]と言われていた。

 1度逃げたら逃げ癖が付く。いつまでも[逃げれば何とかなる]とか、誰かがなんとかしてくれるとか考えるようになるからだ。

 オレも逃げ癖の付いた奴を友達とか同僚には要らないし、したくない。

 それでも今は逃げたい、今回だけは恥ずかしい踊りを踊ってもいいから逃げたい。

 土下座で許してくれるなら何度でもして誤魔化したい、先送りしたい。

『取り敢えずそのままで・様子見で』って、上のヤツの軽蔑する先延ばしの常套句だが、今回はそれを採用したい。

・・・無理だ、でも、やっぱり無理、でも。頭がグラグラする、なんでオレなんだ。

 オレに命を任せるような価値は無い、なんでだよ、なんでオレなんかにそんな選択をさせる。

 これ見よがしに鍵の開いた窓、だれも姿の見えない玄関、まるで崖の向こうには自由の国・天国や楽園・理想郷が開いていると言っているようなもの。

(大体は罠なんだよなぁ・・崖は自分が思っている以上に幅広く、その先は地獄か奈落) 逃げた先の天国や理想郷に自分の幸せがあるとは限らない、周りが天国の住人だったとしても、苦界である人間世界の住人が融け込めるか?逆に惨めになるだけだ。

 人間は産まれた世界で苦労して生きるようになっているのかも知れない、

『こんな所に居られるか!私は自分の部屋に戻らせて貰う』などと言えたら良かった。 ボクの出来る事は『私を殺そうとしている奴がいる屋敷なんて居られるか、私は先に山を下りさせてもらう』 などと言って夜の山道を下るくらいだ・・・・

大体襲われて死ぬだろうが。

(駄目だな・・与えられた情報量が多すぎて混乱してきた、つまり・・えっと)

 オレがアリスとイリスの好きな方を選べばいいのか?選ばれ無かった方も叔父さんが支えるって言うし・・・そもそもオレは2人が好きなのか?

 家族とか兄姉とかなら好きだと言える、大事な家族だ、それは間違いない。

 そもそも女の子として好きってなんだ?

 異性としての好きと家族としての好きは違うのか、おれはどっちが好きなんだ?

 改めて考えるとそもそも好きってなんだ?って感じになって来た。

 大事と好きは違うのか?守りたい・支えたい・傍に居てやりたい、それは好きって言えるのか?

(本気で逃げたい、物事から逃げる奴なんて軽蔑するしか無いクズ糞だと思ってたけど

今なら少しは同意する気も無くは無い)

 だって戦って何とかなるとか、向かい合ってなんとか出来る問題じゃないだろ!

「はぁーーー向かい合うのは自分の気持ちか・・」

 自分の気持ちほどいいかげんでわからない物は無い。

 どっちも好きだっていうハーレム野郎は唾棄すべき毒蟲だと思想していたが、少しは共感すべき所も見受けられられ無くも無い。

「だいたい、どっちを選んでも選ばれなかった方の泣く顔を見るんだろ!やだよ!」

 本気でイヤだ、『イリスを泣かす奴はオレが殴ってやる』ってどの口で言ったんだよ昔のオレ。

 退路は無い、選択指は二つ、こんな時に必要なのは・・・

 テレフォン・オレが最終問題で使うのはテレフォンだ!

「もしもし?ヨシハルか?時間が無いんだ、質問に答えてくれ!」

 大事な人がいる、2人の内どちらかを選ばないといけない、当然[選べない]とか

[沈黙]が答えって訳じゃない。時間も限られてる、「どうしたらいい」

「答えが有るようで無い問題を・・・いきなりなんだよ」

「トロッコ問題なら『助けたい方』つまり顔見知りとか、知り合い。後は金持ちとか 美人とか利害で判断すればいいのは解る、でも今回は命は掛かって無いけど選ばないと駄目なんだ、なんとかヒントだけでも考えてくれ」

「ちなみに・両方に利害関係が無いとすれば、シンイチはどっちを選ぶのか気になるね」

 ハハハ、どちらも選ばないさ。他人の命に関わりたくないからな、だからその答えは逃げる・もしは見守るだ。後は運の強い方が生き残るだろ?

「多くの人に好かれておく事の重要性が解る答えをありがとう、さて・・質問の答えにはもう答えたと思うけど?それでもボクの口から聞きたいかい?」

「ハハハ・・ありがとう親友、本当に」ヨシハルはクールに去るぜ、とか言って通信を切った。(友達の大事な人が、自分に取っては大事では無い)

 返答を避け通話を切ったって事は、見守りますって事。良く出来た友人だ事。

 参った、せめてアリスかイリスと交友を持っていれば話は変わったんだろうけど、

何故か名前を出すと嫌がるんだよなぁ両方とも。

 ファイナルアンサーが出ない、喉から声を出すのを体が嫌がってる。

 そんな時優しくしてくれるのはサクラだけだよ、冬も近い寒くなった部屋のベットで丸まる毛玉がボクに気付いて顔を上げる。丸い顔に三角の鼻、髭いっぱいにして大きな欠伸をした。

 なでなで・・グググググ・・・目を細め自分の手に顎を乗せて丸くなる。癒しだ・・

猫がベットで寝ていると何故か眠くなるのは何故だろう、特にグググググって喉の音を聞いてると体が脱力し、添い寝してしまうのは猫の魔法だろうか。

 猫の魔法に掛かってしまった、奴のグググとフカフカサラサラの毛皮と丁度良い温さについつい引っ張られた・・・なんか違う。

 ベットにいるのはオレと猫の筈なのに、肩に当たる柔らかい物はなんだ?

 明らかに猫の形をしていないソレ、細く目を開いたオレは金色の髪が向こうを向いて ベットを半分以上占領して・・。

「イリス、なんでボクのベッドで寝てるんだよ」子供みたいに枕まで奪って。

 スースーと寝息を立てるイリスの寝顔を覗くと、本当に熟睡していた。

 こっちは難問のお陰で頭を抱えているってのに、呑気な・・指でおでこを触って見る。形の良い眉毛と目を瞑ってても解る綺麗な睫毛、油断し過ぎだ。

(あんまり悪戯してたら噛み付かれるからな、今日はここまでにしておいてやる)

感謝しろ侵略者。

 ガキの頃、あんまり可愛かったので髪とかホッペを触ってたらガブリとやられた。

あの時の親指の痛さはガキのオレに、[可愛くても危険]と教えてくれるものだった。

 その後少し赤くなった指を舐められた時のヌメヌメ感は・・秘密だ。

(猫はザラザラなんだけどな、やっぱり人間と猫は違うんだよな)

 寝ている間に侵入者に気付いて逃げたらしいサクラ、起こしてくれてもいいのに薄情な奴だ。

「はぁ、どっちが好きとかじゃないんだよなぁ」選べと言われて選べるもんじゃない、 籤とかサイコロで選んだとしたら・・きっと怒るだろう。それでも大昔、生け贄とかを選ぶ時にクジを引かせて選んだらしい。

 結局選べない選択を、神任せ運任せを選んできたのが人間。そんなものにはオレは頼らん・・ひとの人生を決める一大事を、他の何かに任せるなんて出来ない。

 向かい合うしかないよな、自分の気持ちとイリス達の気持ちに。

(ってこっちが真剣に悩んでるってのに呑気な顔で寝て、どんな夢を見てんだ?)

 なにやら口元を上げて笑ってる奴の顔を覗く・・少し瞼が上がり目の焦点が合った。 モゾモゾと布団の中に顔が沈み、様子を見ていると素早く伸びた手に耳を掴まれた。

「なに」をするんだよ、抗議を口にする前に暗闇に引き込まれ、ミントのような匂いに包まれる。「・・・」掴んだ耳をもみもみ触る指、多分あと十数㎝先には顔がある。

「シンイチ・・・私を選びなさい、もし私を選んでくれたらシンイチの言う事なんでも聞いて上げる、シンイチの好きな大人しい子にだってなって上げる。

なんでもして上げる、尽す女になってあげるから私を選んで」

 暗闇で見えないイリスの顔、真剣な声が突き刺さる。

「オレがイリスを選んだらエッチな事だって言うかもよ、それに恥ずかしい格好だって」

「全部して上げる、アリスには絶対出来ない事だって、何でもして上げるから・・」

 柔らかい息が近い、ゆっくりと髪が流れるような音。

・・・!、「こう言う!っていうか相手の顔も見えないようなキスは駄目だ!」危うく口が当たる距離だった。駄目だ、イリスの奴本気だ、冗談が通じ無い。

 耳から手がすり抜け、闇から顔が出た。

・・・丸まった布団の塊を上から捕まえて撫でる、捕まえた瞬間は身を固くした塊の力は抜け膝に丸い頭が膝に乗る。

「・・ゴメン、私・・焦ってた」そっぽを向いて顔が見えないのは猫の様、サラ艶の髪を撫でていると赤くなった耳が見えた。

「・・・体の事、気にしてたのか」

 機械の手足、自由に走れない体、思いっ切り運動し汗を掛けない苦しさ。全部解ってやれたとは思えない、全部支えてやれたとは思えない。

 それでも、オレに選ばせないといけないほど悩んでたのか。

「ごめん」兄姉のように育ったオレには、今は謝ってやる事しか出来ない。

「・・それは・・アリスを選ぶって事?」顔を上げることの無いイリスの寂しそうな声。「そうじゃないよ・・おれに選ぶ権利なんて無いから」選べない、そう言いたかった。

「じゃぁまだ私にも可能生はある・・・の?」小さい返事にオレは答える言葉も無く、髪を撫でた。


 もし健康な体が一つで、どちらにも必要とするなら、オレはアリスを選んで上げたい。

彼女の内蔵も骨も目も、命の殆どが人工物で支えられている。その辛さはイリス以上の苦しみだろう、でもそれは・・・・・・・。

 悩み抜いた結果、おれは地下のラボ・研究室の戸を開けた。

調整室とは違い、薄暗く狭い部屋に重なる紙の資料やデータ。

「PCに保存して誰かに見られたら大変だからな、機密はいつでも燃やして廃棄できる紙資料だ。それももう必要無いらしいが」

 人間のクローンは医師倫理規定にも、国際法にも違反している。そんな犯罪を犯したオヤジはすでに事を成終えたからか、脱力しどこかサッパリとした顔をしている。

「桐山さんの土産の中にお前には見せない物がいくつかあったろ?それがソイツだ。

マイクロチップから拡大した資料やデータ、ガワは下らん物ばかりだが中身は違法データの塊。美術品に混ぜていればそうそう見付かる事は無いんだ」

「・・・それで、完全に健康な体のコピーが出来るんだろ?」オヤジなら。

 科学者なら絶対バックアップは取ってある、なら健康な体は一つじゃない筈だ。

「無理だ、それにそれは依頼者の意志にも合致しない」

「なんでさ、科学の再現性から言ってもオヤジが予備を用意して無い筈が無いだろ」

 科学は再現される、偶然や奇跡に頼らず同じ行程と手順を踏めば同じ結果に辿り付くだからこその科学だ。

「・・・64人、それだけの死体を積み上げ、脳と体が成長した者があの2人だけだと本気で思っているのか?」

 っと待てよ!どう言う事だ。イリス・アリス以外に意志を持ったクローンが、彼女達にまだ姉妹がいるって事か?

「アリスが生きていられるのは、最初に意識が目覚めたからに過ぎない。そしてイリスは内臓や感覚器官の一部が正常に反応したからだ。ならイリス以降のクローン体、

彼女達に意志の反応が無いと言えるのか?お前は」

 脳細胞・脳神経が一定量存在すれば意志を持つのが生物の宿命、イリスの体が45%生身なら、60%の体80%の体だって目を覚ます可能生がある。

「殺して来たのか・・彼女達を」怒りや辛さ、そんな物を越えた無為の殺意、彼女達と同じ顔、声をした人を殺したのか?

「・・憤るなガキが、ソレを見ろ」散らばった紙に、多分大陸国語で乱雑にメモされた走り書き、そこには、意識・自我の移植、その領域と。

「大昔、共有国家・人民が全ての物を共有しようと謳う国があった。いまでも有るが、その国には世界人口の25%の人間がひしめき、ソレを束ねる指導者がいた」

 指導者はその国の王・帝らしく権力を握ると、次ぎに美食と健康・最後には不死を 求めた、だが肉体は衰え、内臓は機械で補助しても脳の衰えには勝てないと解った。

 自分のクローンを作り出し、それに後を継がせる事も考えたが。

 そもそもクローンと自分、同じ細胞同じDNAであっても自我・自己のあり方が異なる事には直ぐに気付いた。

 自己・自我領域の研究、これは肉体に魂が宿るとか言う宗教や輪廻転生を信じる宗教国では出来ない思考・学問。

 共有国家の指導者は人間とは脳であり情報であるとし、脳の移植・脳神経の転移実験を繰り返し、前頭葉・側頭葉・海馬・脳幹、あらゆる所にメスを入れ電極を挿した。

 ある民族を全て捕らえ、家族・学歴・生活を語らせ、録画し、脳を切り刻む事で、 脳が物を記憶している場所、どこに何を憶え自分が何者かが解らなくなる部分、つまり自我のある場所を探した。

 電極を挿し一部を麻痺させ語らせる、その実験に数千数万の犠牲者が出た。

余った内臓は海外からの移植希望者に売ったとも言われている。

「正に人間牧場・人間の実験場だ、そこでようやく解ったのが脳領域、SJ4680とRG8815だ、この意味解るか?最悪でもA0001から数えてSとJの4680番の人間の脳が切り刻まれたのがそこにある資料だ」

 残された資料の数字以上の人間を切り刻んでいる、XX9999人まで実験された可能生の方が多い。

「人口の多い国はそれに比例して人権が低く見積もられる、15億とか17億の人間がいたら、1人2人の命なんて軽い物だ・・ヤツらの国では16世紀の消滅した脳外科手術が大盛況、ロボトミー技術の進歩は正に日進月歩、最新医療のオンパレードだよ。

 結局その資料の殆どは焚書され国家の闇として葬られたんだが」

 皇帝を名乗った大陸国家の王は、結局自分の脳を切り刻む事が出来なかった。

 変わりに脳以外の部分を全て機械に変え、脳すらも徐々に機械に換えていく事で半不死を手に入れた。

 最後には機械の脳、自分のデータパターンを模した機械が皇帝を名乗って部下に破壊された。機械の手足は自分の脳部には届かず、自分の脳を人質とされ、最後には人民の管理より生を『自分を殺すな』と願ったとか。

「自我を構築するさい、人間の顔形は重要だって事だ」

 例えば幼い体で過ごせば、人間の精神は幼くなり。大人・老人の体で過ごせば精神はやがてその姿に追い付く。

 いつまでも若々しくありたいなら発言や行動も若さを保ち、フェイスケア・ボディケアをする事が重要だと。

「人間を獣の中で育てた場合、子供は自分を人間として認識できず。

脳が成長期を終えていた場合、人の社会に適応出来ない場合がある」

 自分で鏡を見る・他人の目を通す、その二つが揃ってこそ、自分が彼等と同じ人間種である事を認識出来る。完全機械になった体と他人が自分を見る目、その二つが

[人間を見る目]で無くなった場合、それはもう人間ではあり得ないのだ。

「あの2人の場合は脳を開いて移植する必要は無い、ほぼ99%同じ構成だからな」

 後は自我と呼ばれる領域の脳幹信号をクローンに写し、今の脳を破壊する。

「自分が2人になった瞬間、目の前の自分を意識した瞬間に別人格に分かれちまう。

アリスとイリスのように」

 2人は元々1人の少女のクローン、難病を抱えて産まれた彼女から死を遠ざける為に産み落とされた存在。2人が2人の人間として存在するのは、目覚め成長し・別々の時間を生きて来たからだ。

「同じ空間軸に2人の人間は存在出来ない、二つになった瞬間に似ているが別の存在になる・・だがそれは三次元での話だ。情報世界・データ上では一つの情報を複数で共有・その逆、複数の情報を統合し一つの独立した存在を誕生させる事も可能だ」

 アリスとイリスの生活・知識・感情・感覚を時間事に完全体の脳に同期させる事で 二つの経験が一つに統合されて行く。

「だから、仮にアリスを選んだとしても、そこにはイリスの記憶も残っている。それが彼女達が望んだ希望だ」

 自分が選ばれ無くても、『自分と共にいた記憶を忘れないで』それが彼女達の思い。

「長い時間を過ごしたお前達の記録を、一瞬で移動する事なんて不可能だ。それを逆手に取ったんだろう。だからお前が選んだ方の娘は肉体が新しくなっても今まで3人で暮らした記憶を持っている」大事にしてやれ、そんな事言われても。

「2人の内、肉体が欲しいのはどっちなんだ。知ってるだろ」

 完全な肉体が目的なら、オレの選択は関係無い。違うか?

「・・お前、本当にオレの子か?女の本気がお前には解らんのか?」

「だってそうだろ!オレが・・その、好きって言ってくれるのは嬉しいさ。でも」

「振られた方は体も得られず、って?馬鹿にしてんのか?」

・・・

ハァ・・・「お前がそんな腰抜けとは思わなかった、お前、1人の女を幸せにするって事は、一途に愛するって事は、他の女に目もくれず愛するって事は、お前を愛する人の思いを踏み躙ってでも、嫌われても愛するって事だ。

『全てを犠牲にする決意』ってのは、自分を好きだと言ってくれる人間すら犠牲にする覚悟も含まれるんだ」

 少なくとも桐山さんは、愛する我が子と奥さんの願いを天秤に掛け、死に逝く彼女達を見捨て、64人の娘の命を犠牲にして、一人の娘の幸せを願った。

 たとえそこにいたるまでに、意識の断片を持った彼女がいたとしても、目を開く前に目を覚ます前に犠牲にした・犠牲を積み重ねた。

「そんな人間の思いの結晶を、お前みたいな腰抜けにくれてやらんといかんとは・・・気の毒、違うか。お前の偽善・良い人でいたいとする外面は、醜悪過ぎて反吐が出る」

「良い人間でいる事が悪いのかよ、誰だって好きな人とか、その人の家族の前では善人で居たいんだ!違うかよ!」

「薄っぺらい善人の仮面は、見透けられる者からすれば邪悪なんだよ。世の中の善人を気取るヤツらがどれ程糞悪党か、自己愛の過ぎた『オレ良い人だろ』って奴の吐く息は糞以上に臭ぇ事を、詭弁・偽善を吐く奴以外は皆知っているさ」

 善人の仮面を被るなら誰にも見破られないようにしろ、自分すら捨てて善のみに生きる覚悟が無いなら善人を気取るのは止めろ。善に死ぬ覚悟の無い奴が善人を語るな。

 絶対善、そんな者は存在しない。

 人を救っても、その人間が生み出す罪を無くす事など出来る筈が無い。

 科学者も政治家も国・民の為に最善を尽して行動しても、科学で生み出された産物の被害を完全に予測は出来ない。

 当然政治も一方に良い政策でも、片方には不利益になることなんて目を覆う程ある。

「人間なんて物は元々が悪なんだ、多少良い事して誤魔化し誤魔化し生きるているのが普通の人だ。その事を忘れて善人を気取るのが無脳のアホ。

 他人を犠牲にしない人間なんて紀元前から存在しない。

 人類史上完全な善人は存在しない、宗教を作った教祖だって余所の宗教信者と対立し血を流させている、だからって悪人になれっていってる訳じゃないが、必要な時に悪を成せない人間に、善悪を語る資格は無いんだ」

 追い出された、解ってたけど、どうしたらいいんだよ・・・本当に。

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