3、
私の容姿は自分で言うのもなんだけど、確かに美人だと思う。
ハイカラピンクのマリアンヌとは全く違う、紫の髪に紫紺の瞳。妹は健康的な肌色に対して、透き通るような白い肌。少し高い鼻はまっすぐ鼻筋が通って程よいバランスをもっている。ぷっくりして弾力ある唇は、紅を差さなくても程々に赤みがかっている。
全体にバランスのとれた顔立ちに、均整のとれたプロポーション。出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでると言いましょうか。──出るべきところが寂しくて、引っ込むべきところ……特にお腹が出てる妹とは少し、いえかなり似てないとは思います。
そんな私の容姿に騙されたとは、はて?整形なんてしてないんですが。
「この顔は生まれつきですので……騙したつもりはございませんよ?」
だからそう言えば、「ちっがーう!!」と怒鳴られてしまった。はて?
「そういう事を言ってるのではない!お前の容姿なら私の妻となるに相応しいと思っていたのは確かだ!だが!根本的にお前は私を騙していたと言ってるのだ!」
「はあ?どういう意味なんでしょう?」
もう早く結論言ってくれないかなあ。授業開始の鐘が鳴ってしまったではありませんか。
他の生徒は気になりつつもゾロゾロと去ろうとしている。が、私達に声をかける者は一人も居なかった。
だって王太子だもの。
王太子に意見出来る人なんて、あんまり居ないと思うんです。教師でも。
「あの、授業が……」
仕方なく、私が言おうとしたら。
それを遮って、ビシッと王太子は指を突きつけてきた。
「お前は!公爵令嬢では無いだろうが!!」
「はああああ!?」
王太子の言葉に。
今日一番の『は!?』が出ちゃいましたよ。
その叫びで教室に向かおうとしていた生徒の足も止まる。
もうね、授業よりもこっちの方が面白そうだって野次馬な顔で見てるのが丸わかり。
なんだなんだと見てるので、恥ずかしくなってきた。
「タルジャン様……何を言ってるのですか?このような場で変なことを言わないでください」
内容が内容だ。こんな所で話すべき事じゃない。なので声を潜めて切り上げようとしたのだけれど。
「変なこととはなんだ!お前が公爵家の実の娘でない事は調べがついてるのだ!お前はあの家の養女だろうが!!」
「はあ!?」
もうね。
今日何回『は』と『はあ』を言ったか分かんない。それくらい素っ頓狂な事を言われてるわけですからね。
「え、王太子……一体何を」
「とぼけるな!お前はあの家の養女で、その身に流れる血は何処の馬の骨とも分からぬ者のものだろうが!」
「はあ……」
確かに、私とマリアンヌは似ていない。
けれどマリアンヌは両親──公爵夫妻のどちらにも似ていて。
私は妹は元より両親とも似てない。
疑問に思ってもおかしくないのだけれど。
まさか王太子に身辺調査されるとは……さすがに思ってませんでした。
私と王太子の婚約は王家が、つまりは国王が言いだした事。当然私の素性を全て知ったうえでの婚約なのだ。
「どうだ、何か反論はあるか!?」
「はあ……いえまあ、確かにそうなんですけどね」
なので私は否定することなく、真実を話す事にした。
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