第9話 潜在

・・・・・・左右対称に見える黒1色の不思議な形をした絵?・・・・・・


なんとも言えない図形のような絵を見せられて、何に見えるかって?

私・「ん~蛾が暗闇で飛んでいるところ?」


もちろんそんな場面を経験したことは無いが・・・。

しいて言うならばである!


「はい、ではこれはどうですか?」


ページをめくると、今度は黒と赤のなんとも不思議な形である。

私・「これは熊が2匹で戦っているように見えます」


赤い斑点のような形が飛び散っている血液にしか見えないからである。

その回答を聞いた時のカウンセラーの顔が一瞬曇ったように見えたのは気のせいか?


「次はどうですか?」


また黒と赤の2色である。

私・「仮面を付けた女の人がけがをしている」


「これはどうですか?」


私・「犬が2匹で向き合って戦っている?」


この調子で数枚の絵に対して回答をしたが、最後に気づいたのは・・・・。


========赤い部分が全て血液に見えた事!========


部屋を出るまでの時間がとても短かったように感じた!

そもそも部屋から出れることが少ないので、良い気分転換になっていた。


それから1週間が経過した。

特に検査をするわけでもなく、面会者が訪ねてくるわけでもなく、医師の説明があるわけでもなく・・・。


日常で異変を感じていた様々な出来事については、相変わらずニワトリやら少年やらサラリーマン達は、何一つ変化のないまま続いているが・・・・。


その時、ドアの向こうで女性の話声が聞こえた。

明らかに会話しているように聞こえるので2人以上はいると感じた。


「ガチャ」ドアの鍵が開く音がしたと同時にノックの音が・・・・。


・・・・・・・・・・・・・「大丈夫?」・・・・・・・・・・・・・・


知らない40代位に見える女性(実際は分からないが)が声をかけてきた。

その右手には小さなかわいい女の子の手を繋ぎながら。

ただ、その女の子は女性より半歩後ろに下がり体の右半分しか視界に入らないが。


私・「あ、大丈夫です」


========恐らくすぐに消えていくような小さな声で。========


「思ったより元気そうで良かった。すぐに面会に来れなくてごめんね」

「何か思い出したことあるの?」


口調はとても優しそうに思えたが、何かどことなく緊張しているように感じた。

それより気になった事があった。


=========女の子の目が私から一時も離れていない========





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