第8話  経過

=========入院から1か月が過ぎた========


いろんな事があった。


朝5時になると決まって「ニワトリ」の鳴きまねをするお婆さん。


何故か廊下を1時間以上も歩きながら何かをつぶやいている少年。


ひたすら新聞を読んでいるサラリーマン風の男性。



いまだに主治医も含めて医者と面談していない事。


初日以外に両親?も含めて面会に来る人間が一人もいない事。


必ず就寝時間になると入院患者全員が、ナースセンターに並んで薬を渡されて、その場で薬を飲むのを確認するまで帰れない。

その薬の効能が、おそらく限りなく睡眠導入剤だと思った事。



・・・・・・・・・・例を挙げればきりが無い・・・・・・・・。


特に気になる事と言えば、おそらくかなりの頻度で採血されている!

それも決まって夜中や朝方といった、誰もが就寝している時間帯にだ!

しかも、・・・・無言で・・・・ 何も説明なく・・・・・そっと!


「東条さん、今日は心理カウンセラーの診察ですから声かけますね」

いつもの看護師から告げられた。


ここに入院して検査された事は、おそらくそっと採血されている以外では始めてになる。


心理カウンセラーって何するんだろうと疑問に思った。


昼食の後1時間ほど経ってから、白衣を着たカウンセラーっぽい女性が現れた。

まあカウンセラーっぽいってどんな人の事を言うのかは想像して欲しい!


ひとつ付け加えると、いまだに部屋には鍵がかかっていて、自分の意思では部屋を出る事が出来ない。(トイレ・入浴以外だが・・・)


「東条さんですね?」


私・「はい」


「それでは検査に行きますのでこちらに来て下さい」


私・「はい」


何が始まるのか想像が出来ないので、返す言葉は「はい」しか浮かばない。

カウンセラーの印象は、どことなく懐かしい感じがするのは何故なんだろう?


廊下の突き当りの部屋に入って、目の前にある椅子に腰かけた。


・・・・・・・・・相変わらずなんの変哲もない真っ白な部屋・・・・・・・・・


・・・・・・・・・目の前の机に1冊の本が置いてある。・・・・・・・・・・・


「それではこれから簡単な質問をしますね」

「あまり深く考えないように思ったままの事を答えて下さい」


カウンセラーはそう言うと、目の前にある1冊の本を開き私に向けて見せた。


「これは何に見えますか?感じたままで良いので気楽に答えて下さい」


その1冊の本に書かれているのは文字でもなく絵とも言えない、おそらく左右対称に見える黒1色の不思議な形をした絵?だった」






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