第2話 目黒駅 権之助商店街の青果店

昔ながらの青果店『みっちゃんのくだものや』は、目黒駅から少し離れた権之助商店街の一角に店を構えていた。

主人の三井拓郎は、店先でパインジュースを道行く人々に配っていた。

奥では妻の霧子と息子の孝明が忙しなく働いている。時刻は午後4時。

丁度お腹が空いてくるいつもの時間だ。

拓郎は霧子に声をかけた。


「これ終わらせたらメシ食うよ。アレ食いたい」


「あいよ」


霧子は店奥の居間へと消えていった。


『みっちゃんのくだものや』は大盛況だった。

特にフレッシュフルーツジュースは瞬く間に巷で人気となっていた。

それというのも、口コミサイトで美味しいと評判になったお陰だ。

だから拓郎は、ながらスマホの若者には積極的に声をかけるようにした。

今もこちらに向かってスマホを見ながら駆けてくる、若い眼鏡の女性を見つけて拓郎は迷わすにフレッシュパインジュースを彼女に勧めた。

女性は立ち止まり、一気にそれを飲み干して。


「美味しい!」


と叫ぶとまた走り去って行った。

拓郎は、会話をする間もなく駆けて行く女性の背中を見ながら呟いた。


「忙しない世の中だねえ。さ、メシ食お!」

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