第15話 脅威の気配

 ――ヴィレの森、奥深く。

 そこには異常な光景が広がっていた。


 ヴィレの森に生息する強力な魔物たちの死体が、辺り一面に転がっている。

 そしてその死体を喰らう一体の化物がいた。


 漆黒の体からは二本の角と、二枚の羽、そして太い尻尾が生えている。

 細身の体のどこに入っているのかという勢いで、次々と魔物を喰らっていく。


「足リナイ、マダ、喰ラワナイト」


 そのような邪悪な姿で、片言とは言え人間の言葉を使う姿はまさに異常と言う他なかった。


「ふふふ、残念ですね。この辺りにいた魔物はもう逃げてしまったようです……森の外を目指しでもしているのでしょうか」


 不意にどこからか、一人の男性が現れる。

 整った容姿からは一本の角が生えており、片目は黒、片目は赤。

 漆黒の衣装にその身を包んでいた。


「ディーノ、サマ!」

「そのまま食事を続けなさい。せっかく面倒な手順で魔石にしないよう殺したのです。全てを喰らい力を得た後、命令通りあちらにある町を襲うのです」

「分カッタ。強力ナ、勇者、俺ガ殺ス」


 化物は再び魔物の死体を喰らい始める。

 それを見て醜悪だと吐き捨てた後、男性は森を出た先にある町に視線を向ける。


 あそこには強力な聖なる力の使い手がいる。

 にとって、その力は脅威となりえる。

 今のうちに排除しておくべきだと考えた上での行動だった。

 今ならばまだ、この程度の下級悪魔レッサーデーモンでも十分に任務を遂行できる。


「ええ、楽しくなってきましたよ。

 これも全ては、この世界を我らが手中に治めるために――」


 言い残し、男性はその場から消える。

 残されたのは、異形な化け物ただ一体だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る