空の見守る物語

@yume_nanohana

クリスマスプレゼント

クリスマスプレゼント

今日は12月22日


街を歩くとイルミネーションがキラキラしていて

店に入ると有名なクリスマスソングが流れて

小さなクリスマスツリーがたっている

まだ少しクリスマスには早い時期



「あっ、これ可愛い…でも着てくれるかな」


たまたま買い物ついでに入ったペットショップ

わんちゃん用のサンタ服をみて少ないお小遣いを見ながら買おうかどうか悩んでいた

僕の家では2匹犬を飼っている

ミニチュアダックスとロングコートチワワの2匹

ダックスはラッキーという名前でもう13歳

人間でいえば65歳。おじいちゃん犬

チワワはナナという名前で10歳

人間でいえば50歳ぐらいのおばちゃん犬だった。

寒くなってきたから着てくれるかな…と思いながらも

ラッキーだっておじいちゃんなのに着せるのもなぁ

と買うことを断念した


でも、理由はそれだけではなかった


ラッキーは体が良くなかった

毎日寝続けていたし、起き上がればそらを仰いで


“わふ、わふっ”


と、少しおかしな吠え方をしているだけだった

昨日だって点滴をするために動物病院に連れていったぐらいだった

そんなラッキーに服を着せるのは難しい

だから断念して帰ることにした




「ただいまぁー」


と言って家に入るとまずナナが走ってきた

その後ろからゆっくり、本当にゆっくりラッキーがお出迎えをしてくれていた

これは僕が物心着いた頃には日常になっていたことだった

いくら寝ていても、具合が悪くてもラッキーはお出迎えしてくれていた


「お〜ナナ、ラッキーただいまよ〜」


と言いながら玄関で2匹を撫でてリビングに向かう

ラッキーはリビングに戻ると布団にポスンと横たわる

本当に辛いのにお出むかえにきてくれているみたいだった

そして、夜ご飯を家族と食べていつも通り家族と他愛ない話をしていると、ラッキーが起き上がってきた

少し寝たからなのかな?

いつもみたいにフラフラしてなくて

元気だった頃のラッキーを見ているみたいだった


「ん?ラッキーどうしたん?めっちゃ撫でてアピールするやん」


「久々に元気だし、甘えたいんじゃない?」


と姉さんと母さんが話している

僕はラッキーが元気になったんだって嬉しくて動画とか写真をいっぱい撮っていた

明日からまた元気に走り回って一緒に遊んでくれるのかな

なんて考えていると急に足の上にラッキーが乗ってきた

僕の体はまだ小さかったから安定しなくて

いつもなら乗ってこないはずなのに、、、?

と少しびっくりしたけど嬉しかった

そのあとも家族4人と2匹で何気ない時間を過ごしていた


その日の夜、ラッキーは母さんの布団で寝ていた

枕に頭を乗せて布団を被って

まるで人間みたいな寝方をしていた

そして夜が明けていく頃には父さんの布団で寝ていた

父さんが仕事の準備をしているのをいい事に

父さんの枕にでーんっと寝転んでいた

そして、


“わんっ”


と一回だけ鳴いて父さんの方をじっとみていた

父さんがラッキーを撫でると満足そうにしてまたすやすやと寝ていた

そして朝、僕が目覚めるとラッキーはすぐ横で寝ていた

普段ラッキーは僕の布団では寝ないから珍しいなぁと思いながら撫でると少しだけ目を開けてまた閉じた。

12月23日

祝日で姉さんも母さんも僕もいた

クリスマスイブの一日前

父さんにクリスマスプレゼントを買いに行こうという話になって準備をしていた時だった

喘息のような呼吸音が聞こえて僕は振り返った

ラッキーの様子がおかしい

そう思って急いで母さんを呼んで、動物病院に電話をかけてもらった

姉さんとふたりでその間僕はずっとラッキーのことをみていると、スっと喘息のような呼吸音が止まった

初めは治まったのかな?と思っていた

でも僕はすぐに気がついてしまった


「ラッキー、息してる、?」


「やめてよ!そんな怖いこと言わないで!」


そう言って姉さんが怒った

でも、だって、


「胸のところが動いてないよ、、?」


いつもなら上下に動いてるはずの胸のあたり

そこがぴたっと止まっていたから

まだ小さな僕でもわかった


「息、して、ない」


泣きそうになりながら必死に呼びかけた

母さんにもすぐに伝えて、急いで病院に向かった

移動中涙は止まらない

でも必至に


「ラッキー、いかないで、!だめだよ、!戻ってきて、」


って声をかけ続けてた

病院について直ぐに先生に診てもらった

先生は直ぐに診察室に連れて行ってくれて、心臓マッサージをしてくれた

一生懸命、全力で、声をかけながら

でも、だめだった


ラッキーが死んだ


その事実が僕には信じられなかった

信じたく、なかった

産まれる前から家にいて、生まれてからずっと一緒だった

そんなラッキーがいなくなる、?

僕の涙はもう止まらなかった

今でもその時に言った言葉を覚えている


「サンタさんなんて来なくていいから、!プレゼントなんて、いらないから!ラッキーを返してよ!!」


って泣き叫んでいた

毛布にくるまれて動かないラッキー


「お疲れ様」


って声をかける母さんや先生

無言で泣き崩れる姉さん

全部がスローモーションみたいで

これは悪い夢なんじゃないかって

そう思ってしまうほど悲しい出来事だった

初めて死というものに対面した小学6年生の冬だった。


その後、家にラッキーと一緒に戻って

火葬の準備や可愛がってくれていた人たちに連絡し

家に来てもらっていた

たくさんの人が来てくれていた


「よく頑張ったねぇ」


「歳もあったんやなぁ、ゆっくり休んでや」


みんな色々な声をかけていく

夕方まで続いた

途中僕は泣き疲れてラッキーのそばで眠ってしまっていた


夜になって母さんに抱きついてさらに泣いた


噛まれたこと

いたずらされたこと

一緒に遊んでくれていたこと

服をお揃いにしたこと

散歩に行ったこと

僕が小さな時のこと


全部の思い出を思い出して目がパンパンになるまで泣いた

そして次の日腫れた目のまま学校に行って、

帰ってきてから火葬場に向かった


ラッキーが点に昇っていく時も涙は溢れてきた

でも、最後は家族みんなで


「ありがとう」


と言って見送った

ラッキーは分かっていたのかな

自分がもう長くないこと

だからあんな行動をとったのかな

それは君にしか分からないだろうけど。






ラッキーがくれた思い出や記憶はすごく大切なものだし

時には僕らに勇気をくれるものだった

あの日のことは一生忘れない

すごく悲しいクリスマスイブになってしまったけれど

命の大切さ

楽しかった記憶

大切なものをたくさん残してくれた

後悔したことだってある

もっと構ってあげればよかったとか

もっといいもの食べさせてあげればよかったとか

それでも前を向かなきゃいけない

僕が思い出して泣いてる日には絶対に夢に出てきて励ましてくれる。前を向く力をくれた。


だからね、ありがとう!

そしてこれからも見守っててね


生まれ変わっているなら、どこかの幸せな家庭で幸せに暮らしていますように。

願ってもいいのなら、またどこかで出会えますように。


高校3年生になった僕より。

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