第43話 Another side:ジルベルト・オーガー3
ジルベルトは素直に顔を歪ませた。
「……言葉の意味が分かりませんね。どういう事です?」
「言葉の通り、としか言いようがありません。今この街には『神』が降りようとしている。それを促そうとする者が居るのです――!」
ジルベルトは理解出来ない。神が降りるなどと言われても、彼の知りうる限り、神なんて空想の中だけに存在するモノだ。それが――降りてくる?
「……」
デリオの様子を見るに嘘では無さそうだ。だがそうでも妄想としか思えない。まともに付き合う方が可笑しい。だが――。
悩んだ末にジルベルトは、今の言葉を『神格化された強大な何かが顕現しようとしている』と受け取る事にして、デリオの話を聞くことにした。同時に根拠のない予感めいた物を覚える。不気味に思う一方で、聞かなくてはならない気がしたのだ。
「つまり、暴動はその……神を降臨させる為に行われる、と?」
彼が口にした言葉を受けて、デリオは我が意を得たりと破顔した。
「その通りです! ああ、ご理解が早くて助かります。……私が国に進言した際は、病院を勧められてしまい、全く信じて頂けなかった……」
「……」
信じる者はいなかろう、とジルベルトは心中で独白する。
神が降りてくる! 街が滅びる! 助けてくれ!――なんて、こんなもの狂人の妄想にしか聞こえない。立派な大人が口にしていれば猶更だ。取り合うどころか、気味悪がって突き放すのがオチだろう。その場面が目に見える様である。
ジルベルトの印象もそれだ。しかし彼には『破滅の予言』が関与している様に思えて、くだらない話と一笑に付す事は出来なかった。そして彼が気に留めていた『事件』も、これに繋がっている様に思えてならない。
「もしやこの街で頻発しているという貧民層の失踪事件も、その件に?」
「――っ」
ひくっ、と喉を鳴らしデリオは凍り付いた。その目は現実を映さず、何か恐ろしいものを見ているかの様に震えている。彼の様子は恐慌状態に近かった。
只事ではない。彼が落ち着くまでジルベルトは沈黙し、そして覚悟した。やがてその口が開いた時、奇怪極まる話が紡がれるのだろうから。
「すみません。お呼びしたのは、私だというのに……」
深い呼吸を繰り返し、話せる様になったらしい。
ジルベルトは静かに彼へ声をかける。
「話して下さい。貴方がその恐怖を抱くに至った経緯を」
小さく頷いたデリオは顔を伏せ、訥々と語り始めた。
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