第19話 僕が旅に出る事になった話

 出発の朝。僕は両親に見送られた。


「気を付けるのよ。定期的にムリヤリ帰ってくるのよ。その時はお土産もよろしくね。悪い女に引っかかっちゃダメよ。お土産もよろしくね。それから――」


 そこから更に10個くらいお土産を頼まれつつ色々と言われた。僕は苦笑いしながらも首肯しておいた。初めての旅だ。ジルベルトさんが居るとはいえ二人が心配するのが当然だし、僕自身、報告が突然になってしまったから申し訳なく感じている。


「男は旅をして、色んな体験をして大きくなるもんさ」


 そういえば父さんは、僕が生まれる前から鉱床を探し回っていたんだっけ。話によると世界中を旅していたとか。僕に昔の自分を見ているのかもしれないな。


「解ってるわよ……でも、寂しいじゃない……!」


「心配しないで母さん。ジルベルトさんも付いているから」


「そうだぞエレノア。英雄の一人である彼なら、クロスを安心して任せられるじゃないか」


「そうだけどぉ……そうだけどぉ……!」


 泣きじゃくる母さんを抱き寄せる父さん。

 本当に仲が良いなと子供ながらに思う。


 そう。僕もつい昨日知ったのだけど、ジルベルトさんはフルビス王国の数少ない英雄の一人だった。魔法知識の探求に明け暮れていた僕だけど……反面、この国の英雄は一人も知らなかったので、ジルベルトさんを見ても全く分からなかったのだ。……英雄が取り乱すエリナのスキルって、本当にオカシイんだろうな。


「クロスー! そろそろ行きますわよー!」


「あ、うん、今行くよ!」


 家の外で待っていたエリナに催促される。隣にはルヤタンも居た。彼女は大きな欠伸をして眠そうにしている。この数日間、ルヤタンはエリナの家に居たらしい。


「じゃあ行って来る」


「ああ、行ってらっしゃい」


 父さんはニカッと笑って見送ってくれた。

 母さんも頑張って笑顔で見送ってくれた。

 二人共、僕の大好きな家族だ。


「さあさあ! 早く行くのですわ!」


「あ、待ってよエリナ。中央広場には20分もあれば着くよ。今はまだ8時半だ、普通に歩いても10分くらい余裕がある。ゆっくり行こうよ」


「……? よくわかりませんわ! 行きますわよ!」


 あれ、なんだろう。

 デジャヴ?


「なんで杖を出したのじゃ? 普通に歩いていかぬのか?」


「中央広場までは真っすぐ一本道ですわ! なら魔法を使えば一瞬で着きましてよ!」


「やっぱりそうなるのか!? マズイ、ルヤタン逃げ……」


「エクスプロージョン!!」


 白く世界が瞬いた。

 そして次の瞬間、僕たちは空を飛んでいた。


「どうしていきなりこうなるのじゃ!?」


「僕が聞きたいよ!!」

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