第14話 僕がジルベルトさんにぶん投げられた話
その後、僕たちがどうなったかというと。
「君たちは私が預からせてもらう」
場所を移動し、背後に森を背負う学校の演習場にて。蒼天の下、腕を組みズバッと言い放つジルベルトさん。僕とエリナはポカーンと眺め、興味のないルヤタンは欠伸をしている。
「えっ……と、それはどういう?」
「君たちはあの学校に通う事は出来ない」
「そんなっ!」
「ですわ!」
僕とエリナはショックを隠せず、興味のないルヤタンは蝶々を追っている。
「クロスはあの魔王に懐かれている。となれば君が学校に通えば、あの魔王が着いて来る事になるだろう。それは他の生徒へのリスクが大きい。よって通えない」
僕は膝から崩れ落ちた。
「僕の……憧れの……マジカルキャンパスライフが……!」
悲しみに打ちひしがれ涙を流す僕になど目もくれず、ジルベルトさんは話を続けた。鬼だ。
「そしてエリナ。君はその身に宿したスキルが余りにも規格外だ。正直あの学校で魔法を学ぶ意味はないし、その危険性から目を離す訳にもいかない」
「そうなん……ですの?」
エリナには自分の凄さが解っていないようだ。
なおルヤタンの姿は無い。
「よって君たち三人は……三に……ん?」
ジルベルトさんが周囲をキョロキョロ見渡した。
何だろうと思って僕もキョロキョロしてみた。
「魔王はどこにいった?」
「さあ? さっきまで蝶々を追いかけてましたが」
僕がそう答えた瞬間、遠くでどーん、と重たい衝撃音が轟く。何だろうと反射的に目を向けると、森の中からひょこっと、巨大な蛇の頭が出てきた。
「あ。ヨルムンガンドだー」
「ええい厄介なッ!!」
のほほん、と見ている僕とは対称に青ざめた顔で駆けだすジルベルトさん。彼の体が僕の視界から消えたと同時に、僕の胴に腕が回り体が浮いた。
「え? ちょっとなんで僕まで!?」
「魔王には君が一番、効果的だろう!」
「確かに!」
これは納得せざるを得ない。
仕方ないなと僕が身を任せていると。
「!? またあの蛇ですの! 今度は負けませんわ! 来たれ、エクスライトフィ……」
エリナがまた禁術を使おうとしていた。
「っさせるかぁッ!」
僕はすかさずボタンを押す。
この時の素早さはクイズ王に勝るとも劣らないだろう。
「ナーベぅ!? ……ふぇええ、いふぁいふぇふわー!」
するとエリナはベロを出して涙目になっている。舌を噛んだらしい。いや危なかった。また数千人の命を背負う所だったよ。ボタンもたまには的確に危機を脱してくれるんだな。
「いたぞ、魔王だ!」
やがて背中から彼の声が響く。ルヤタンが居たらしいけど、後ろ向きの僕には何も見えない。その代わり、頭上にゆらりと佇むヨルムンガンドは見えた。周囲一帯に影を落としている。
「すっごいなぁ……格好いいなぁ……」
「何を呑気な! アレが何をするか解らないんだぞ。よし行くぞ、魔王に蛇を引っ込める様に言って……こいッ!」
「行くぞ? ……ってちょっとぉおおおおおお!?」
突然、体が勢いよく後ろに吹っ飛んだ。見えなかったジルベルトさんが不意に現れてすぐさま遠ざかっていく。僕を物みたい投げた!
「後は頼んだぞ!」
「この人でなし!!」
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