第13話 僕が自分のスキルを調べた話

「えーと…………ん????」


 僕は困惑した。とにかく困惑した。こんなスキルがあって良いのか。


「そんな……馬鹿な……ッ!?」


 ジルベルトさんも驚愕している。そりゃそうだろう。

 さて、気になる文面がコチラです。


~~~


スキル ―― アカシャコネクト


・現存する魔法全てを行使できる。

・発動には詠唱を必要としない。発動数に制限も存在しない。


~~~


 そうそう、こういうのをチートスキルって言うんだよね。特に二行目だよ。なにこれ意味わかんない。つまりエリナが『あんなこと良いな』って思えば勝手に魔法が何とかしてくれる。そんなの猫型ロボットどころじゃない。もう神様と同じような物じゃないか! 


「こんな……こんなスキルが、人に備わっていて良いのか……!?」


「ダメじゃないでしょうか」


 唯一の救いは、宿ったのがエリナだったって事だろう。もし悪意のある存在にこんなものが宿ったら、大変な事に……っていうかこれ『魔王の種』だよ! なんなら『魔王の種』の中でも殊更にレアな奴だよ! ああ僕の直感は間違っていなかった! 間違っていて欲しかったけど!


「これは一体……?!」


 頭を抱えて悶絶しているジルベルトさん。

 その横で僕はあることに気が付いた。


「あ、これ僕のスキルの詳細も解るぞ」


 あまりにも謎に満ちていた僕のチート(という噂の)スキルも、このレアアイテムを使う事で詳細が明らかに出来る。そうなればボタンの起こす結果も操作出来るようになる筈だ! これは試さざるを得ない!


「あのーすみません。それもう一枚もらえますか?」


「馬鹿な……こんな事が……!!」


 ジルベルトさんは悶絶している。声が届いていない。僕は仕方ないので、脇に抱えているソレを素早く抜き取った。文箱をかぱっと開けてみると、ほんのり輝く白い紙が重なっている。なぁんだ意外と沢山あるじゃないか。


「ではでは早速」


 僕が一番上の一枚を摘み引き上げると。


「は?」


 紙は一瞬で燃えて灰になった。

 紙は一瞬で燃えて灰になった。

 大事なことなので二回言いました。


「も、もう一回!」


 数秒間のフリーズを経て復帰した僕は、すかさずもう一枚取った。

 でもやっぱり燃える。


「な、なんで?」


 何度取っても燃えた。持ち方を変えてもダメだった。

 こうなりゃ物量で勝負だ!


「ふんす!!」


 僕は残っている紙を全て握り込んだ。

 瞬間。


「え? え? え?」


 紙は電撃を放ちながら燃えていく。


 流石にこうなると触ってはいられない。僕はすかさず握った紙束を地面へ叩きつける。それらはしばらく電撃を放っていたが、数秒後には収まった。残っているのは黒い塊だけ……かと思いきや。


「あ、一枚だけ無事だ」


 僅かに覗いていた白い物を引っ張る。今度は燃え上がる事も電撃を放つ事も無く取れた。だけどかなりボロボロで、今にも崩れそうだ。


「文字が……あるぞ」


 なんとか一部を写し取っていた!

 僕は期待に胸を弾ませながらそれを読んだ。


~~~


スキ  ―― 創  の開 


 用   に って  万 を  し、   き 。

  の祖  ず  能  。真な  たる 


~~~


「……ダメだ、まともな文章になってない」


 でもこのスキルと思しき文字の横。これ『一発逆転ボタン』じゃない。僕はあのうんこたれ神様の言葉を思い出す。


『何をおっしゃいますか! 天界でも誰一人として持つことの無い、ウルトラスーパーユニークスキルですよ! あまりにも危険すぎて、長らく封印されていた代物です!』


 ……僕に与えられた能力って、一体なんなんだ?


「ぁあああああっ何ですかこれは!? 貴重な『秘跡の炙書』が全て灰に?!」


「あ」


 バレた。


「これ一枚を用意するのに、どれだけのお金が必要になる事かッ!!」


 教員の叫びを聞いて僕が「どうしよー」とワタワタしていると、頭を抱えていたジルベルトさんが怒り気味に、取り乱す教員へ怒声を放った。


「そんな事はどうでもいいんだ!」


「どうでも良い事がありますか!」


 教員は引かなかった。そりゃね。国宝級のレアアイテムだからね。そうだよね。


「……よいしょと」


 僕は右手にボタンを用意した。まあ危機だよね。弁償とかになったら、いくら僕でもどうしようもないし。僕はそれ以上、考える事を止めてボタンを押した。


 ――ぽち。


「……? なんです、急に地面が揺れて……?」


「!? マズイ、地震だ! 皆早く建物の外へ出るんだ!」


 ジルベルトさんが大きく叫ぶ。生徒たちも教員も、後ろのエリナまで慌てふためき外へと駆けだす。な、なんだろう。地震ってそんなにマズイ物なのかな。


「いやー! ですわー!」


 逃げ去っていく背中を見つめながら、僕は立ち尽くす。地震とは言ってもかなり小さい。揺れてるなー、くらいだ。こんなんじゃ建物が崩れるとも思えない。何だろう。何か地震を殊更に怖がる伝承とかあったっけ?


「のじゃ? 皆慌ててどこに行くのじゃ?」


「なんか地震を怖がって外に避難しちゃった」


「ふむ。この地域ではあまり起きないのかもしれんの」


「そうなのかな」


「詳しい事は解らん。とりあえず、儂らも合わせて逃げておくのじゃ」


「うーん。そうだね」


 僕たちは歩いて建物を後にした。なんやかんやで数分後には地震も収まり、騒動は鎮火した。騒動が収まった頃に「どうしてそんなに怖がるの?」とエリナに聞いてみると。


「クロスは知りませんの? 例の予言を」


「予言?」


「そうですわ。宮廷魔法士の中には占術が得意な方が居て、その方が最近予言をしましたの。曰く『太陽が消え、大地が揺れる時、この世に破滅が降臨せん』……と!」


 あまりにも真剣に言うけど……この世の破滅、か。

 この手の予言って当たる気がしないんだよなぁ。


「その人の予言って、よく当たる物なの?」


「今のところ、的中率90%という話ですわ」


 それはヤバいね。

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