第5話 勇者の邂逅

やがて洞窟の最深部に到達した


「ここを見てください」


ガーリエが指差したところから、わずかな光が洞窟内な漏れだいていた

ガーリエは光が漏れる小さな穴に、杖の先をねじ込んだ


「うーん…まだ固そうですね。やはり満月の夜がいい。出直しましょう。今夜は近くの村に泊まりますよ」

「え?やだよ。魔法でパパッと帰ろうよ」

「高次瞬間移動は一時的に血圧上がっちゃうんで、1日1回までと決めています」

「聞いてない!」

「まあまあ、満月まであと2日です。宿にこもって寝てりゃいいんですよ。わたしはおいしいものを食べて観光しますけどね」



二人は元来た道を戻り、縦穴を抜けた


テイトは、前回来たときには、もちろん近隣の村には寄っていない

自分が訪れることで、村が魔物に教われたりしたらたまらない

ただでさえ縦穴は魔物が出入りしやすいのだから


そう思うと足取りが重くなる

どうせ歓迎されない身だ


「どうしたんですか?」

魔法士の祭服についた埃を払いながら、ガーリエが聞いた


「俺はここで野宿する」

「まためんどくさいことを」

その時、テイトはあることに気づいた

「お前のその炎…!」



村人たちは、ガーリエの訪問を喜び、盛大なパーティーを開いてくれた

テイトは当然よい顔はされなかったが、ガーリエと、ガーリエが見せた炎のおかげで、受け入れてもらうことができた



なんでこんなに冷遇されてまで勇者になったのか、自分でもわからない


旅先で出会った勇者たちは皆正義感に溢れており、勇者が魔物に襲われてしまうことすら、【有名税】のようなものだと受け入れていた

テイトはそんな彼らに鳥肌が立つ



人には優しくされたい

歓迎されたい


それが当たり前ではないか


助けたら感謝されたい

功労を認めてもらいたい

労ってもらいたい



勇者はそれを望んではいけないのか




幼い頃に見た父親の姿が脳裏をよぎる

テイトは、思い出の中の父親を救いたくて、旅をしているのだ

しかし、テイト本人は、そのことに関しては無自覚だった



勇者は嫌われ者だけど稼げる


と、言われたから


誰に?

思い出さない



父親ではなかった

師匠でもない

あれは誰だったのだろうか


村に着いて草々、ガーリエは村人を集めて、青い炎を配って村中に灯させた

理論上は、これで村は魔物たちに知覚されないはずだ



(明日は一日中寝てたいなあ…)



お酒も入り、眠くなったテイトは、用意してもらったベッドに倒れこんだ


しばらくすると、そこへガーリエがやって来た

部屋は隣のはずだ

何しに来た?


顔を枕にうずめた状態で、うっすらと目を開けて様子を伺った


ガーリエは酔っぱらっているのか、真っ赤な顔をしていて、足元もおぼつかない

フラフラとベッドに近づいてきたと思ったら、テイトの上に倒れかかってきた


テイトはとっさに寝転がり、下敷きになるのを回避した

ガーリエはぐうぐうとイビキをかいて寝てしまっている


「なんだよ、こいつ」

テイトは仕方なく、ガーリエの部屋に向かった


「鍵閉まってるじゃねーか」

その夜テイトは、ガーリエのイビキを聞きながら、椅子で寝るしかなかった

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低血圧勇者と高血圧魔法士 @hanazanmai

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