第4話 東の縦穴

テイトは、干したての布団に勢いよく飛び込む夢を見た


気を失う、というより、寝落ちに近い感覚


あまりの意識の失い方に前後不覚に陥り、目覚めたときには、そこがどこだかわからなかった




「目が覚めましたか?!」


顔の真上から声が注がれた

その時、初めてテイトはガーリエに膝枕されていることに気がついた


「は?なんで?」

「テイトさんが、それは気持ち良さそうにすりすり寄ってきまして」

ガーリエは、嬉しそうに笑った


「ここはどこの洞窟?」


ガーリエの杖の先に灯った青い炎で、見られる範囲を見回した

岩陰という岩陰に、びっしりと魔物が張りついている



(俺はこんなところで気絶していたのか…!)



あまりの禍々しさと、己の愚行に身震いしたが、なにやら魔物たちの様子がおかしい



「フフフ。気づいちゃいましたか?!私の炎は特別製でして」


ガーリエが先端に青い炎が灯った杖をひらりと一回転させた

杖の動きに合わせて、青い炎もクルクルと回った

「この光が届く範囲は、魔物は知覚できません」


確かに、襲ってくる気配はない


「便利な魔法があるもんだなあ。俺にも分けてくれよ」

ガーリエの杖の先の炎を見つめる


「私が精製しました。褒めてくれても構いません。ただし、完璧ではありません。神が作った宝具みたいに万能にはいかない。それは我々も神が作りし創造物だからですね。どんなところが欠点かというと、光が届かない範囲、例えば足の裏なんかは魔物に知覚できてしまうのです。だから足元に注意してくださいね。時々いるんですよね~勘のいい魔物が」


テイトは足の裏だけなくなった姿を想像してゾッとした

自然と歩くのも慎重になる


「狙われないコツは、地面から足を離すときに、素早く離すことです」

そう言って、ガーリエは得意気に歩く


「かかとから下ろすのも効果ありですよ!」

テイトは何の健康法だろうか、と思った


ガーリエの歩き方講座を聞きながら、二人は洞窟の奥に進んだ



10数分ほど歩いた時、テイトはあることに気がついた


「ここ、一番最初に来た…」

「おや、気づきましたか?テイトさんは、なかなかどうしてしっかりした勇者さんじゃないですか。正直疑ってましたが、私は勇者の実力があろうがなかろうがどうでもよいので…しかし、これでやっと、テイトさんがハイパークラスである合点がいきました」


一言二言、いや三言どころか五言多い、そして耳が疲れる、とテイトは思った


数多の魔物が巣くう闇の中で、よくこんなにキャンキャンと喋れるものだ、と呆れるを通り越して感心した


「なぜわかったんです?縦穴なんて、どこも同じような作りなのに」

「一度来たところは忘れない」

「そんな宝具ありましたっけ?」

「違う…人間の…俺のギフト才能だ」

「へえ」

ガーリエは興味なさそうに相づちを打っただけだった

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