第3話 魔法士の血

勇者は意思

魔法士は血でなる


と言われている

そして、魔法士のは総じて高血圧が多い


何が原因なのかは不明だが、昔からそうなのだ

優れた魔法士ほどその傾向が強く、魔法の力と反比例するかのように短命である


結果的に、優れた魔法士は希少となる

今ではネビルのような健康体の魔法士が半数以上を占める



―魔法界の衰退―

そうささやかれ始めてから、何年経つだろう



(でも俺は、ネビルさんを尊敬してるっス)



テイトはネビルにウインクを送った

もう喋ることも疲れる域に達していた



「で、メリーナさんからお聞きしたのですが、テイトさんは神々の叡知を探している、と」

「まあ…」

「場所の目星はおつきですか?」

「東の縦穴から順に、しらみつぶしに回ってるけど…」



(これ以上、俺に話させないでくれ、疲れるから!)

テイトは祈った



「地底の国の入口ですね…」


祈りが通じたのか、ずっと喋り続けていたガーリエが、ここに来て黙った

耳が一瞬休まった


「昔、一度だけたどり着いたことがあります。わたしの計算が確かなら、次の満月の夜にはたどり着けるかもしれません」

「…!」

テイトは身震いした


神々の叡知を探し始めて2年になる

その間に、数多の宝具を手に入れたが、神々の叡知のありかは、ヒントすらつかめなかった


「ところで、なぜテイトさんは神々の叡知を探しているんですか?売ってお金にするなら他にいくらでもありますよね?」

「…」



テイトは迷って

「勇活を楽にするため」

と答えた





『宇宙の審理』

『未知なる領域』

『泡沫の夢』

『高嶺の花』

『因果の糸車』

などなど




テイトは、とある目的のために、これらの恩賜宝具を集めなければならなかった


「メリーナさんに聞いたのですが、“虹の架け橋”をお持ちなんですね?」

「おう」

「しかし、それでは、探索は半日がいいとこですから、中々進まないでしょう」


そうなのである

虹の架け橋は一度行ったところなら瞬時に行けるが、4時間経つと強制的に戻されてしまう


すると、ガーリエが立ち上がり、

「早速今日の探索にレッツゴー!」


言うが早いか、テイトをつかむと詠法を唱え始めた


「これは、高次瞬間移動…」

ネビルは口をあんぐりと開けて見入った


ガーリエとテイトは、まばゆい光に包まれたかと思うと、次の瞬間には目の前から消えていた


「すごい魔法士…ということはわかった」

メリーナが呆然として言った


「初めて見た」

ネビルも同じだった


が、メリーナはすぐに我に返ると

「でも、わたしの魔法士はお前ただ一人だからな」

と、顔を赤らめて言った


元大勇者の誰も知らない秘密


ネビルはメリーナの頬にキスをした

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