或る独白_(01)
――或る時代。
そこに一人の科学者がいた。
戦なき時代に、
そんな
ヒトが滅ぶ。文明が滅ぶ。世界が滅び、形而上下の全てが揺らぐ。
否、或いはそれを滅びと捉えたのはヒトのみであったのかもしれない。生命は輪廻し、
輪廻を否定する。死後の世界を夢想と断じる。少なくともそれらを、手放しに信じることは出来ぬ。せめて証明を、観測を、根拠を求む。世界から闇を払った時代のヒトは、明かりでは払えぬ不明瞭たる闇を恐れた。
そして
幸い、その方法にはアテがあった。その年、或るヒトがゼロを暴いたのだ。
それを誰もが否定しない。いつかの時代なら恐れられた禁忌を暴く冒涜を、その世に限っては誰もが肯定する。死を否定する英雄は、英雄たるべき精神性を維持したままで領域を犯せた。子を慈しみ、悪を絆し、老人に花を手向けるその手で
人の世は変わる。殺人を戒め、不倫理を戒め、裏切りを戒め、その次に「死を受け止めること」を戒める。
これは、人世の自然淘汰、洗練化の一途である。少なくとも、
そう解し、英雄たちはその願いに挑む。そして、その果てに、
――
間違いだったのは、
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