日本政府安全機関 ゾンビー討伐係
家に帰って夕食の支度をしていたが、美幸は佳奈子が言っていた言葉が離れなかった。
(…守っていることを誇りに思っています!)
夫は、この政府機関の事をどう思うだろうか?ゾンビーの事を言ったら信じてくれるだろうか?それとも、信じてくれないんじゃないか…信じてくれないだろう。もしかしたら、全部幻だったんじゃないだろうか?
夫が帰ってきて夕食、風呂、子どもの寝かし付けを終えて夫と2人でテレビを見ていた美幸は、今日の事を言うか迷っていた。
「おい、この絵は何だ?」
夫は、そう言いながら子どもが描いた絵を見せてきた。絵には赤黒い人の形をしたモノだった。
子どもは覚えていた。美幸は「知らない。」と、咄嗟に嘘をついてしまった。今日合ったことを言えば良かったのだろうけど、言ってはいけないと思ったのだ。
美幸は「もう寝るねおやすみ。」と言って子どもが寝ている寝室に入っていった。
美幸は、子どもの寝顔を見ながら考えていた。子どもは、しっかり覚えていた。怖かっただろうに。もしかしたら、あの時自分が倒さなかったらこの子はいなかったかもしれない。もしかしたら、この瞬間にもどこかでゾンビーがいて何もできなくて攻撃を受けて死んでいるあるいは怪我をした人や子どもがいるかもしれない。美幸は、そう思ったらゾッと背筋が凍りついた。だけどそれと同じに、自分の子どもを守るためなら出てくるゾンビーを倒してこの子が安全に過ごせる環境をつくってあげたい!とも思った。
「明日の朝電話しよう!」
朝。夫を仕事に送り出し、朝の家事が終わった時、昨日佳奈子から貰った名刺をポケットから取り出した。深呼吸をして、
「大丈夫。話を聞くだけ。」
そう言い聞かせ、書いてある番号に掛けた。
3コール呼び出しがなった後ガチャっと音がした。
『はい。日本政府安全機関、ゾンビー討伐係。山田勲です。』
男の声が聞こえ、美幸は少し緊張する。
「あ、あの、斎藤佳奈子さんの紹介で今回お電話をしたのですが…」
美幸は緊張したものの何とか言いきった。
男は斎藤佳奈子と聞いて「少しお待ちください。」と言い、保留音を鳴らす。
しばらくすると保留音が止んで、聞いたことのある声がした。
『お電話変わりました。斎藤です。』
美幸は少し悩みながら話をした。
「あ、あの昨日お話しした菊池美幸です。ゾンビー討伐係についてお話し聞きたいな。と思いまして…」
『菊池さん!全然良いですよ!どんなことが聞きたいですか?』
佳奈子は、嬉しそうに話を聞いてきた。
「えっと、ゾンビー討伐係は何人ぐらいで形成されているんですか?」
『はい!私を入れて、7人です。今さっき電話に出た山田勲も、入っています!』
佳奈子は自信ありげに言うが美幸は、心配になった。
「少なすぎませんか?」
そう、少なすぎる。日本政府の組織ならば、50人ぐらいいても良いものをまさかの7人。
『少ないですよね…それだけ、ゾンビーを見て覚えている人は少ないんです。それに、何故かゾンビーが見える人は全員主婦か、男の人の主夫何です。』
美幸は、驚いた。確かに、ゾンビーを倒した後私達以外は何事もなかったかのように過ごしていた。それに、全員主婦(主夫)しか居ないのも驚いた。
「見えることがそんなに特別だとは思っていませんでした。でもそんなに少ないと全部を倒すのは難しいんじゃないですか?」
美幸は、素直に思ったことを聞いた。
『ゾンビーが出る地域は決まっているんですよね。いろいろ調べてはいるんですが良くわかってないんです…』
「そうなんですね…あのもしゾンビー討伐係に入ったとして子どもとかは保育園とかに入れられますか?併設してますか?」
美幸は、子どもの事も聞きたかった。
『保育園は併設してませんが、ベビーシッターを政府が派遣していまして同じ施設内でお子さんの様子を見れますよ!…それに、私達は…』
佳奈子は、少し言いにくそうに話し始めた。
『政府が作ったとしても、これはボランティアのようなものです。確かに政府からは運営費や必要な物の費用は負担してくれますが私達にはお給料と言うものはないに等しいです。存在するかわからない怪物を倒す組織に給料までは…と言う感じですね。』
「そうですか…」
美幸は、働くという形になると思っていたのでお給料もそこそこ貰えるのでは?と期待もしていたのだがそうではないと知り残念に思っていた。
『でも!お給料を貰えなくても、私達は人の命を守っています!守るものに見返りは要らないんです!』
「見返りは要らない…」
『はい。…見返りがあるからこの人達を守ろうと言うことじゃないんです。子どもを育てているのと同じような事なんです。見返りが欲しいから子どもを育ててるとは思わないですよね?それと一緒なんです!私達みんな、将来子どもが安全に暮らせるようにするためにここにいるんです!』
美幸は、またしても佳奈子の言葉に気付かされた。自分の子どもを守るためなら…と思って電話を掛けていたのだ。
「わかりました。入ります。私ゾンビー討伐係に入ります!私も子どもを守るためなら入りたいです!」
美幸は力強く言った。佳奈子は涙声でありがとうございます。と言ってゾンビー討伐係がある場所を説明して会う日程を決めて電話を切った。
佳奈子達に会いに行く日になり、ゾンビー討伐係がある場所に向かった。
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