探索①
俺の提案は仲間たちに受け入れられ、日々の行動が大きく変わることとなった。
具体的には、今まで前半と後半の2回に分けられていた狩りが1回になった。これにより狩りの時間は延長となり、防衛のため拠点に残る戦闘職のメンバーは2人になった。
狩り――小川の向こう側を探索するメンバーは、俺、アキ、ナツ、アコの4人は固定となり、残り2人のメンバーをワタル、ミユ、メイ、山田の4人から2人が交互に選出されるスタイルとなった。
「――という訳で、組み合わせはどうする?」
「組み合わせ?」
俺の言葉にアキが首を傾げる。
「ワタル、ミユ、メイ、山田の4人を2、2に分ける組み合わせ。毎回ランダムで選出したら、誰かが連続して防衛になるだろ? それを避けるためには交互に選出することになるから……2、2に分ける必要があるだろ?」
「なるほど!」
ワタルもミユもメイも山田も小川の向こう側を探索するのに賛成していたメンバーだ。公平に参加させないと不満を募らせる可能性がある。
「ワタルとメイは戦闘スタイルこそ違うが共に前衛だから分けるとして……ワタルとメイ、ミユと山田でグーパーじゃんけんして決めるというのが無難か?」
「おうよ!」
「ん。わかった」
「オッケー!」
「承知!」
グーパーじゃんけんの結果、ワタルとミユ、メイと山田のペアに決まった。
「んじゃ、第一陣はどっちにする?」
「ん。私たちがパーで勝った」
「いやいや! その理屈はおかしいだろ!」
メイの無茶苦茶な理論が通るわけもなく、ワタルとメイがじゃんけんをして決めることになった。
「ん。正義は勝つ」
「もぉー! なんでチョキを出さないかな!」
「男なら拳を握り締めてグーだろ……」
「メイ殿、さすがでござる!」
こうして小川の向こう側を探索する第一陣は、俺、アキ、ナツ、アコ、メイ、山田の6人となった。
◆
翌日。
俺たちは万全の準備を整え、小川の向こう側を目指した。
「到着っと!」
「お! これが噂の川か!」
「むむ! あの森の奥地が新天地でござるな」
「ん。頑張る」
初めて来たナツたちが周囲を見回す。
「アコ、ぎりぎりまで近付いてから……《索敵》を使ってくれ」
「りょーかい!」
アコが小川に近付き、目を閉じて集中する。
「どうだ?」
「んー……ちょっと待ってね……」
アコは真剣な表情で川辺をゆっくりと歩く。
「お! 発見! でも、この反応は……この前の蜂じゃないかなぁ?」
「《索敵》は、どのくらい先までカバーできるんだ?」
「んー、正確な距離は測ってないなぁ」
「それじゃ、測るか」
「さすがは『神算鬼謀』の名で知られたハル殿ですな! 某が遠くまで行ってみるでござるか?」
「そうだな。山田、頼む」
「主のためとあれば!」
「して、どこまで行けばいいでござるか?」
どこまで……?
スマホが通じたら、電話をすればいいが……この世界には電波がない。
「んー……そうだな……」
「某の一歩はおよそ82cmでござる」
「そうなのか?」
「某の身長は182cm。歩幅は身長✕0.45でござる」
「そうなのか?」
俺が再び首を捻り、山田以外の仲間たちに視線を向けるが、全員が肩をすくめる。
「某はこのような事態に備えて、異世界に転移したら! シリーズの知識を蓄えていたでござる」
「そ、そうか……」
備えあれば憂いなし……と、でも言えばいいのか。時々披露される山田の予備知識には驚かされる。
「えっと……つまり、山田が122歩歩けば100メートルなのか? 122歩歩くたびに30秒停止してくれ」
「承知!」
「あと、念の為に護衛として俺も付いていくか」
「――! 某の命を賭して、ハル殿をお守りしますぞ!」
「いやいや、護衛は俺だから」
その後、実験した結果アコの《索敵》の有効範囲はおよそ1,000メートルと把握できた。
「そういえばアコって《索敵》で敵の強さもわかるんだよね? ハルみたいにランクだっけ? が、わかるの?」
実験が終わるとアキがアコに質問をしていた。
「んー、ランクとかはわからないけど……強い敵だと肌がチリチリする感覚かなぁ?」
「ほぇ〜……そんな感じなんだぁ」
アコが言うには、俺の《鑑定》とは違い、感覚で敵の強さがわかるようだ。どのくらい強い……とかではなく、オークよりも強い、みたいな感覚でわかるらしい。
「んじゃ、実験も終わったから、探索の準備を始めるか」
「おー! って、準備って何するの?」
「アコに《索敵》をしてもらって、安全な場所から探索を開始しようかと」
小川の向こう側から素材とモンスターのランクが上がる。この世界はゲームではないので、当然入口などがある訳でもなく、どこからでも侵入は可能だ。
「ん。新たな敵との戦闘は?」
「とりあえずは新たな素材を集めよう。出来れば、鉱石か糸みたいな装備品に繋がる素材がいいな」
「ん。新たな敵とは戦わない?」
「んー、どうだろうな? 戦うとしても1匹とかではぐれた奴を狙いたいな」
「了解! 1匹だけでうろついてる敵を探せばいいんだね!」
「いや……別に……あぁ……もう、それでいいや」
どうやら、メイだけでなくアコたちも新たなモンスターと戦闘をしたいようだ。
「それじゃ、改めて出発ー!」
「「「おー!」」」
アキのもと、俺たちは小川の向こう側の探索を始めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます