SIDE―S⑩

「んだと……コラッ! 調子に乗るのも大概にしろよ! いいのかよ? 抜けてこの拠点を守れるのか? あぁん?」


 俺の言葉を受け、相澤は激高する。


 ここまで拗れたら、相澤との関係は修復不能だ。


 佳奈を守るためにも、俺も引くわけにはいかない。


 最悪の未来は、木下、内海、北川の3人が相澤に同調し、に暴動を起こすことだ。


 松山から贈られた装備品は立派だが――まだ、実践で試してはいない。


 こちらの戦力はフル装備の俺と乾。佳奈と木村も装備品を入手したが、共に攻撃には向かない。


 後はこちら側で戦力になりそうなのが……栗山と菅野。


 勝てるのか……?


 勝つため……いや、佳奈を守るための道筋は――


「あん? なに黙りこくってんだぁ? 今更怖気づいたのかよ! トォージィー! 大体、てめーは最近気に入らなかったんだよ! あんまり調子こいてっと――」

「黙れ。相澤、『俺たち』と言ったが……それは誰を指してるんだ? 誰がお前みたいな、野蛮で短慮な奴に付いていくんだ?」


 俺の導き出した答えは――相澤の戦力を減らし、こちらの戦力を増やすことだった。


「あん? んだと……コラッ! コタロウ(木下)! タクヤ(内海)! ケイスケ(村井)! ……あと、北川ぁ! てめーらからも言ってやれ! この勘違いしたお山の大将に、現実を教えてやろうぜ!」

「勘違いしたお山の大将? 自己紹介か?」

「んだと……!」

「木下! 内海! 村井! 北川! そうなのか? お前たちは後先考えずクラスの調和を乱すこいつに従うのか?」

「んだと……コラッ! おい! お前らからも言ってやれ!」


 木下は一切の反応を見せず、内海は緊張した面持ちで拳を握りしめ、村井は俺とも相澤とも視線を合わせないように下を向き、北川は俺と相澤を交互に何度も見て狼狽している。


 揺さぶりをかけるか。


「宮野! 古瀬! 木村の近くに! 木村は結界の準備を!」

「う、うん」

「わ、わかりました」

「は、はい!」


 まずは、明確に宮野たちをこちら側に引き込む。乾も盾を構えて、木村の前に立ってくれる。


「本当にいいのか? 相澤に従ったとして未来はあるのか? そもそも相澤にこれから先のビジョンはあるのか? これからどうするつもりだ? ここから立ち去るのか? それとも俺たちを追い出すのか? 飯はどうするつもりだ?」

「ざ、ざけんな! 日和見主義のてめーにこれ以上は任せられないってんだよ!」

「日和見主義……? どういうことだ? 松山たちとのことを言ってるのか?」

「ったりめーだ! お前が甘ちゃんだから、あんな雑魚が調子に乗ったんだよ!」

「つまり、相澤は――松山たち……クラスメイト同士で殺し合いをしたいのか?」


 俺は敢えて直接的な表現で問いかける。


「ち、ちげーよ! どっちが上かハッキリと教えてやるんだよ!」

「何のために?」

「は? んなもん、あんな雑魚に舐められたままで――」

「木下! 内海! 村井! 北川! もう一度、問う! お前たちは本当に相澤に付いていくのか? お前たちもクラスメイト同士で争うのが目的なのか?」


 ここまで話して相澤に付いていくと言うのであれば、木下たちも手遅れだ。


 俺は松山同様にここから立ち去ることを選択し、危険な争いを回避しよう。それすら許されないのであれば――覚悟を決めよう。


「ぼ、ぼ、僕は……」


 北川が全身を震わせながら、言葉を紡ごうとする。


「俺はみんなで協力して、この過酷な現状を乗り越えたいだけだ。クラスメイト同士の争いは望んでいない。しかし、その望みを、希望を阻むというのであれば……許すことはできない」

「ぼ、ぼ、僕も……く、クラスメイト同士で争うつもりは……」


 北川は目に涙を浮かべながら、こちらへ駆け寄る。


「北川ぁぁぁあ! てめー!!」


 相澤は青筋を立てて、北川へと炎を纏った拳を振り上げるが、


 ――!


 盾を構えた乾が飛び出し、相澤の拳を受け止める。


「――ッ!? ハハッ……凄いな……この盾」

「い、乾ぃぃぃいいい!」

「俺は佐伯を支持する。仲間を傷付けることは許さない!」


 乾は盾と槍を構えて相澤と対峙する。


「コタロウ! タクヤ! ケイスケ! こうなったら戦争だ! やっちまうぞ!」

「木下! 内海! 村井! 本当にいいのか! お前たちが望む未来はなんだ!」


 俺と相澤が同時に木下たちに問いかける。


「剛……悪いな。俺はトウジにつく」

「コォォォタァァァロォォォ!」

「トウジ、構わないよな?」

「あぁ、歓迎する」


 木下が俺に賛同してくれた。


「お、お、俺は……」

「クソがっ!! 上等だ!! 上等じゃねーか!! 出てってやるよ! こんなクソッたれた集団はこっちから願い下げだ!! タクヤ! ケイスケ!! 行くぞ!」

「お、俺は……」

「つ、剛……」

「タクヤ! ケイスケ! 行くぞ!!」

「お、俺もここに残る……」


 しかし、内海は相澤の言葉に従わない。


「クソがっ! どいつもこいつも日和ってんじゃねーよ! ケイスケ……お前は……お前だけは、俺と一緒に来てくれるよな?」

「……わ、わかった」

「てめーら、覚えてろよ? 俺はお前たちや松山みたいな甘ちゃんとは違う! 道が違えたとか甘ったれたことは言わせねぇ! ……敵だ! お前らは全員俺の敵だぁぁああ! 覚えとけよ!」


 相澤は怨嗟の言葉を吐き捨て、村井と共に拠点から立ち去ったのであった。



――――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


いつも本作をお読みいただきありがとうございます。


これにてサイドストーリー(佐伯編)は一旦閉幕となります。


んー……私の構想とどんどん違う展開になっていく……笑


今後も『勇者召喚に巻き込まれた〜』をよろしくお願い致します。(なんか、素敵な略称か……タイトルないかしら?)

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