話し合い③
「質問? どうぞ」
「なぜ、松山くんがリーダーなのでしょうか?」
なぜ、俺がリーダーなのか?
……なんでだろう?
アキとナツが強引に担ぎ上げたから?
俺はリーダーをするようなタイプの
理由……理由……理由……。
頭の中にぐるぐると理由というキーワードが駆け巡る。
「答えられないのですか?」
話し合いをしているときに言葉を詰まらせると、一気に主導権を奪われてしまう。俺は何とか言葉を紡ぎ出す。
「えっと……ナツとアキが……じゃなくて、ここにいる全員が俺をリーダーとして選んでくれたからかな」
「そのとおりだ! ここにいる全員が、リーダーとしてハルを選んだ! リーダーとは、自らなるものではない! 選ばれてこそ真のリーダーだ!」
俺の拙い言葉の後に、ナツの力強い言葉が続いた。
「選ばれてこそ、真のリーダーですか。それならば、尚更獅童くんをリーダーに選ぶべきではないのでしょうか?」
「――? 話を聞いていたのか? みんなが選んだのは俺じゃない、ハルだ」
「そうだよ! 私たちが選んだのはハルだよ!」
「うんうん。ハルっちだね!」
「だな! 俺たちが選んだのは松山だ」
「然り、某の主は松山殿でござる」
ナツの言葉に仲間たちが次々と賛同してくれるが、
「本当にそうなのでしょうか? 私にはそのようには思えないのですが?」
古瀬さんは仲間たちの言葉を真っ向から否定する。
「おい? 委員長さんよ……いい加減にしろよ? なんで俺たち自身の言葉をあんたに否定されなきゃいけないんだよ!」
古瀬さんの言葉にワタルがイラつき始める。
「ではお聞きします。佐藤くんをこのグループに誘ったのは誰ですか?」
「あん? それは……ナツだよ」
「佐藤くんを誘ったのは獅童くんですね。佐藤くんは最初から松山くんがリーダーだと思って、このグループに参加したのですか? 獅童くんがリーダーだと思って参加したのではないのですか?」
「そ、それは……」
「塩谷(ミユ)さんと野村(アコ)さんはどうですか? 誘ったのは辻野(アキ)さんだとは思いますが、最初からリーダーは松山くんだと思いましたか?」
「そりゃ……最初はナツっちがリーダーだと思ったけどさ……」
「……」
古瀬さんの言葉にワタルとミユは言い淀み、アコは沈黙する。
「勘違いしないで欲しいのは、私は松山くんを否定したい訳じゃありません。ただ、リーダーになる者は選ばれるだけではなく、資質が必要だと言いたいのです。獅童くんにリーダーの資質があると、誰よりも思っているのは――松山くんじゃないですか?」
古瀬さんが力強い視線を俺へと向ける。
「……」
俺が答えに詰まっていると、古瀬さんは更に言葉を重ねてきた。
「みんなの言葉を借りるなら――この世界に転移した初日。不安に襲われ、悩み、苦しむ私たちをまとめてくれたのは獅童くんでした」
「ッ!? ち、違う! 最初のあの日もハルの考えで!」
ナツが古瀬さんの言葉を必死に否定しようとする。
「仮に初日の獅童くんの言葉が松山くんの言葉だったとしても――なぜ、松山くんじゃなくて獅童くんが話したのですか? それは、獅童くんなら……不安に駆られたクラスメイトをまとめられると思ったからじゃないのですか?」
「そうかもな」
「もう一度言いますが、私は松山くんを否定したいわけではありません。ただ、何一つ先が見えないこんな状況だからこそ……クラスメイト全員を救うためにも、リーダーは獅童くんがなるべきだと考えます」
「クラスメイト全員を救う……?」
なるほど。
俺と古瀬さんは、目的――目指すべき道が違うのだ。
「はい。例えば、あの日――佐伯くんと口論になり拠点を飛び出したのは誰の考えでしょうか?」
「俺の考えだな」
「やはりそうですか。獅童くんだったら、私たちを――クラスメイトを見捨てる選択はしないと思います。獅童くんがリーダーになればみんな従います。相澤くんたちもあそこまで暴走しなかったでしょう」
「……そうかもな」
俺がもう少し上手く立ち回れれば……もっと積極的に動ければ、ナツをリーダーとしてクラスメイトをまとめることができた未来もあっただろう。
「もう一度聞きます。なぜ、松山くんがリーダーなのでしょうか? ひょっとして、この中で一番強いからですか? 《鑑定》によって安定した食事を供給できるからですか? 本当にリーダーの資質があるのなら――なんであの時私たちを見捨てて立ち去ったのですか! 私たちを唯一救える存在の獅童くんを奪い去っていったのですか!」
古瀬さんは感情を剥き出しにして、大声で叫ぶ。
「古瀬さんの主張は理解したよ。つまり、古瀬さんは俺たちの仲間になりたい……だけでなく、ナツをリーダーにして将来的にはクラスメイト全員を救いたいってことでいいのかな?」
「なんで……そこまで……冷静でいられるのですか? あなたが……獅童くんを奪わなかったら……こんなことにはならなかったのですよ!」
端的に古瀬さんの主張をまとめたつもりだったが、神経を逆撫でしてしまったようだ。
さて、どうしようか? と悩んでいると、
「ハル、一ついいかな?」
アキが声をあげた。
「どうした?」
「ごめん。私のワガママかもだけど、古瀬さんを仲間にするのは反対かな」
アキがストレートに言葉を発したのであった。
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