夜の散策②

 先程のコボルトとの戦いで得た経験――ナツの役割を理解して以降は、更に効率良く狩りを進めることができた。


 ナツが盾となり、俺が攻撃する。


 非常にシンプルな作戦とも言えないレベルの作戦だが、シンプル故に効率よく動くことができた。


 拠点を抜け出し、狩りを続けること3時間。


 休息を取ることにした。


「ナツは怖くないのか?」


 ナツは、すべての攻撃を引き受ける役割――タンクをすることに恐怖はないのだろうか?


 タンクはゲームの中では割とポピュラーな役割だが……ゲームだからこそ成り立つ役割だ。


 画面を通して見るゲームの世界と違って、現実だと攻撃されると痛いし、死んでも復活することはなく人生終了ゲームオーバーだ。


 率先してタンクをするナツの姿に俺は驚いていた。


「んー、最初は怖かったけど、慣れたかな」

「俺なら怖くて無理だな……」

「ハハッ、そんなこと言ってるけど、ハルなら俺たちがピンチになったら自分をかえりみずに突っ込むだろ? 俺はそっちの方が……自分が傷つくことより、ハルが……仲間たちが傷つく方が怖いかな」

「ハッ、俺はそんなにできた人間じゃねーよ」

「あと、覚醒した影響なんだろうな……まだ、Fランクの俺だけど攻撃を受けても耐えられる程度の痛みなんだよな」


 苦笑する俺にナツは自虐的な言葉を添えて笑みを浮かべた。


「安心しろ。すぐにEランクに成長するさ」

「本当か?」

「今はF+++だから、もうすぐだろ。さてと、後1時間が限界だな。気合を入れて経験値を稼ぐか」


 現在の時刻は3:30。


 狩りを4:30に終わらせて、そこから戻れば拠点に戻るのは5:00。7:00に朝食だから……1時間ちょっとは仮眠できるだろ。


 俺たちは狩りを再開したのであった。



  ◆



 4:10。狩り再開から40分後。


「ナツ!」

「おう! ――《ホーリースラッシュ》!」


 コボルトを光り輝く剣で斬り伏せたナツの全身が震える。


「うぉぉぉおおお!」


 ナツは握りしめた拳を天へと突き上げた。


 お、ランクアップしたのか?


 どれどれ……、


『種族  覚醒者

 適性  聖騎士

 特性  光の才

 ランク E

 肉体  D

 魔力  E

 スキル 光魔法(D+)

     →ライト

     →ライトアロー

     →ライトシールド

     剣技 (E)

     →スラッシュ

     →ムーンスラッシュ

     盾技 (F+++)

     →タウント

     ホーリースラッシュ

     聖騎士の鼓動   』


「ナツ、ランクアップおめでとう!」

「ありがとう! ハル、ありがとう!」


 ナツは俺の両手を握ってブンブンと振り回す。


「んで、《聖騎士の鼓動》ってなに?」

「あぁ……ハルはスキルが視えるのか」

「名称しか視えないけどな」

「えっと……徐々に傷を癒す効果があるみたいだ。対象は俺だけなのか?」

「へぇ、リジェネみたいな感じか」


 俺はゲームでよくみる魔法の名称を口にする。


「対象が俺だけなのは残念だな……」

「まぁ、回復魔法にはならないけど、効果は十分だろ」

「だな! ハル、何度も言うけどありがとうな!」

「あいよ。んじゃ、帰るか」

「おう! ……と、そうだ」

「ん? どうした?」

「よかったら、また狩りに付き合ってくれ」

「連日連夜は無理だけど、また一緒に行こうな」

「おう! 約束だからな!」


 晴れ晴れしい笑顔を浮かべるナツと共に、俺は拠点に帰還するのであった。



  ◇



 拠点に移住してから14日目。


 居住空間は日々充足し、俺を含めたメンバー全員のレベルアップも順調に進んでいた。


 床には絨毯が敷かれ、ベッドの上に布団を敷いて睡眠。食事は簡易的ではあるが、味もちゃんとついている。女子メンバー待望のお風呂も完成し、清潔感を保たれている。


 そんな人間らしい生活を送っていたある日――


 いつも通り狩りをしていた俺たちは以前の拠点――仮拠点で一通の手紙を発見したのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


第二章はこれにて完結?


ステータス周りを最初から見直そうか悩んでいます。(数値だと管理が難しいから、アルファベットにしたら……それはそれで調整が難しかったorz)


えっと、次話以降はSIDEストーリー(外伝)を投稿予定となります。


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