拠点①
仮拠点に移ってから2週間後。
この2週間でオークに続く新たなモンスター――コボルトを発見した。発見したのは、またしても【索敵の才】を有するアコだった。
《索敵》のみならず、《解体》により貴重な食材である肉を調達できるアコは欠かせない存在になっていた。
活躍したのはアコだけじゃない。俺も、狩りの最中に『岩塩』を発見し、仲間の食生活を大幅に向上させた。
また、【建築の才】を選択した沼田もベッドを始めとした様々な家具を作成。【裁縫の才】を選択したユコは、仲間の服のみならず、布団や枕などを作成し、俺たちの生活水準を大きく引き上げてくれた。
転移した当初こそは戦闘に関する【適性】と【特性】ばかりが目立っていたが……ここにきて《索敵》、《鑑定》、《建築》、《装飾》と非戦闘系の【適性】と【特性】が脚光を浴びていた。
そんな、生活水準を向上させながら、経験値と素材を求めて、狩りをする日々にも慣れ始めたある日――
「ハル! 拠点の候補地を発見したぞ!!」
狩りから戻ったナツが嬉しそうに俺の元へ駆け寄ってきた。
「距離は?」
「ここから2時間ほど離れた場所だな」
当初は3時間交代で行っていた狩りだが、活動範囲を拡げるために、最近狩りの時間を6時間に延長していた。
「2時間か……少し遠いな」
現在地――仮拠点の最大のメリットは近くに川が流れていることだ。
生きていくために水源を確保することは、最優先されるべき条件だ。
「少し遠いけど、近くに湧き水が出ていたぞ」
「――! マジで?」
「マジ! 条件としては良い感じだろ?」
驚く俺の姿を見て、ナツは嬉しそうに笑う。
「最高だな! 早速案内してくれ!」
「いいなぁー! 私も一緒にいくー!」
案内人にアコとナツ。そして、何故か同行を申し出たアキと共にナツたちの発見した拠点候補地へと向かうことにした。
◆
「ハルと狩りに出るのは初めてだな」
「そうだったか? 今回も狩りじゃないけどな」
嬉しそうに笑うナツに、俺はツッコミをいれる。
「アキ、あの二人楽しそうだね」
「ハルと獅童くんは昔から仲良しだったからね!」
「男の子の友情かぁ……尊いね……。ねね、やっぱり『ハルくん✕ナツくん』かな? 学校のイメージだったら『ナツくん✕ハルくん』だったけど、最近のイメージだとやっぱり『ハルくん✕ナツくん』だよね!」
「――? ん? 何の話?? 私たちはハル派だから、やっぱりハルが先にくるほうが自然なのかな?」
「……ごめん。なんでもない……ミユだったらわかってくれるのに……」
「え? え? なに? どういうこと? アコちゃん、頭抱えてどうしたの!?」
後ろから不穏な会話が聞こえてきたが、無視しよう。
そうか……アコとミユは腐ってたのか……。
「そういえば、ランクが変わる瞬間ってやっぱりわかるのか?」
「ランクって《鑑定》で見える、ステータスのランク?」
「あぁ……今って仲間内でFランクなのは俺だけなんだろ?」
この二週間でナツを除く全ての仲間たちがランクアップを果たしていた。非戦闘系の【適性】を選択した者は、敵を倒さなくてもランクが上がる仕組みだった。
「そうだなぁ……+が付いた瞬間はナツも体感できただろ?」
「あぁ、俺自身はステータスが見えないから、よくわからないが、身体の奥底から力が湧き上がってきたな」
「アレの凄い版かな? ランクアップしたときに感じるのは」
「そうか……早く俺もランクアップしたいな」
「ナツもすぐにランクアップできるよ」
「そうなれるように、頑張るさ」
以前推測した通り、選択した【適性】によってランクアップまでに必要な経験値は大きく変わる仕組みだった。
詳細は不明だが、仲間たちの成長速度を観測すると……
【戦士】〉【狩人】〉【双剣士】〉【付与師】〉〉〉【魔法剣士】〉【忍者】〉【賢者】〉〉〉【聖騎士】
【戦士】の成長速度が一番早く、【聖騎士】の成長速度は圧倒的に遅かった。
非戦闘系の【適性】に関しては、比較のしようもないので割愛した。
「すぐに追いつけると思うから、そんなに焦らなくても大丈夫だと思うぞ」
「本当か……? どんどん差が広がるんじゃないのか?」
「いやいや、それはないな」
Eランクに上がってから、あからさまに成長速度が鈍化した。ランクが上がると必要経験値は跳ね上がると、俺は推測していた。
とは言え、ナツの置いていかれる……という不安になる気持ちもわからなくはない。
「今度、夜に二人で稼ぎにいくか?」
「ハル、いいのか!」
「周りに迷惑をかけなかったら、大丈夫だろ」
「ハハッ! 楽しみだな!」
チーム単位で動くのは8:00〜20:00までの12時間だ。夜は交代で見張りをする決まりになっているが、見張り当番でなければ、個々の自由時間だ。
夜の経験値稼ぎに誘われたナツは嬉しそうに笑うのであった。
◆
仮拠点を発ってから2時間後。
「もう少しだ」
ナツとアコに案内され辿り着いたのは、森の中にある崖下だった。
「ここら辺は『岩塩』を見つけた場所の近くだな」
この絶壁ともいうべき岩壁の上には何があるのだろうか?
「ふぅ、到着だ」
足を止めたナツの視線の先には、岩壁にぽかんと空いた横穴が見えたのであった。
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