vsオーク
始まりの合図――俺はアキに視線を送る。
アキは頷くと入手したばかりの真新しい鉄の杖を握りしめる。
「いっくよー! ――《ファイヤーボール》!」
アキの杖からオークへと火の玉が放たれ、
「続くね! ――《ダブルアロー》!」
続けざまにアコの弓から放たれた二本の矢がオークの腕に突き刺さる。
「ブモォォォオオ!!」
ゴブリンなら一撃で葬り去るアキのファイヤーボールを受けても、オークは倒れることなく怒りの咆哮をあげた。
「ワタル」
「おうよ!」
俺はワタルとタイミングを合わせ、飛び出した。
「うぉぉおおお! ――《スラッシュ》!」
炎を帯びた剣でオークに鋭い一撃を見舞うと、
「っしゃ! ――《パワースマッシュ》!」
ワタルは両手に持った大きな斧をオークに叩きつけた。
ワタルが叩きつけた斧の一撃はどれほどの威力を秘めていたのだろう? オークは斧の一撃に耐えきれず、フラフラと後ろによろめいた。
「オラッ! トドメ――」
――!
オークの体勢がおかしい……。それに、あの殺気だった瞳は……。
オークは頭を下げ、身体を丸めている。
「ワタル、下がれ!」
俺は声を張り上げ、オークに追撃の斧を振りおろそうとしたワタルを制止。
「――ッ!? っと……」
ワタルは何とか踏みとどまり、強引なサイドステップを刻む。
「ブォォォオオオ!」
オークはその場で頭を思い切り振り上げた。ワタルがそのまま突き進んでいたら、あの凶暴な二本の牙の餌食になっていたかもしれない。
「いっけぇぇええ! ――《ファイヤーボール》!」
剣を構え、再びオークと対峙すると、後方から飛んできた火の玉がオークの顔面に命中。
「ブォ……ォォォ……」
ファイヤーボールを受けたオークは悲痛の叫びをあげ、地に倒れた。
「や、やったか?」
ワタルが遠巻きに倒れたオークを見る。
俺は倒れたオークに近付き、剣を振り下ろした。
オークの身体がビクンっと揺れたが、動く気配はない。
俺は地に倒れたオークを《鑑定》する。
『焦げたオークの毛皮』
『欠けたオークの牙』
『オークの肉塊』
『オークの槍
ランク G
刺突 G
耐久 F
特殊能力 なし
オーク愛用の槍』
《鑑定》した結果、目の前のオークはすでに素材と化していた。
「ふぅ……もう大丈夫だ」
俺は仲間たちに声を掛けながら、剣でオークの牙を折り、嫌な感触を感じながら……オークの皮を剥いだ。
「ハル、何してるの?」
「えっと……解体?」
解体といっても、専門的な知識がある訳でもなく、見様見真似の拙い作業だ。
「うわ……結構大変そうだね」
「慣れない作業だからな。後、コイツの肉食べれるっぽいけど、どうする?」
「猪っぽいから、ぼたん肉?」
アコが首を傾げる。
「名称は『オークの肉塊』だな」
「グロテスクだね……」
「こりゃ、アレだ……異世界転移っつーか、異世界サバイバルだな」
「焼けば食えるだろ」
その後、全員で手分けしてオークを解体した。
「こんなもんか……戻るか」
オークの解体も終えたので、仮拠点に戻ろうとしたが、
「あれ? なんだろ? ……この感覚? ハルくん、もう一匹オーク倒してもいいかな?」
アコが声を掛けてきた。
ワタルだけじゃなく、アコまで好戦的な性格になってしまったのか……と、思ったが、違うようだ。
『種族 覚醒者
適性 狩人
特性 索敵の才
ランク F+++
肉体 F+++
魔力 G
スキル 索敵 (D)
解体 (F)
弓技 (F++)
→ダブルアロー
短剣技(F++)
→スタブ 』
なるほど。
アコは新たに《解体》というスキルを習得していた。
同じように解体作業をしていた俺、ワタル、メイは習得していないのに、アコだけが習得できたのは……【適性】による相性だろうか?
思えばスキルを習得する手段はレベルアップだけではなかった。
俺が習得している《短剣技》や、佐伯が習得した《槍技》は【適性】やレベルアップの恩恵ではなく、使用していたから習得したスキルだ。
と言っても、俺の習得している《短剣技》はランクがH。多少使い慣れた……程度の技量だった。
【適性】に応じて相性が良いスキルとかあるのか?
推測となるが、このまま俺も解体作業を続けたら……《解体(H)》は習得するのだろう。
そして、HとFの間には埋めがたい差もあるのだろう。
何とも不親切な異世界転移だ。山田の言葉ではないが、最初にこの世界の仕組みを教えてくれる女神とかは用意できなかったのか?
俺はこの世界の仕組みを読み解くことに興味を覚えると共に、不親切すぎる異世界にイラつきを感じるのであった。
―――――――――――――――――――――――
(あとがき)
いつも本作をお読み頂き、ありがとうございます!
オークの強さをどうしようか悩んだのですが……EランクのハルとワタルがいるのにFランクのオーク相手に苦戦を描いたら、今後の流れに支障が出そうなので控えめな強さにしました。
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