大雑把な《鑑定》
「えっと……次はこっちかな」
自ら記した地図を見ながら進むアコの先導に続いて、俺たちは森の中を進んだ。
「松山。それで、実際にはどうするんだ?」
「どうする……とは、オークと戦うのか、と言う意味か?」
「そうだ」
「ランクを見て判断だな。ランクがFランク以下なら戦うのもありかな」
「Fランクって言われてもピンとこねーな……」
「ゴブリンでHランクだ」
「Hランクって言うと……A〜B〜C〜D〜E〜F〜G〜、H……だから、Fだと結構強いのか」
ワタルはよく耳にするアルファベットの歌を歌いながら確認してくる。
「覚醒していない人間がH〜Gランクだから、結構強いのかもな」
「覚醒する前でもランク差はあるのか?」
「運動部にはGランクが多くて、文化部にはHランクが多かったな」
ちなみに、ワタルは覚醒する前からGランクで、覚醒する前の馬渕がHランクだった。
「松山の【鑑定】は便利だよな」
「便利だが……過信はできないな」
「そうなのか?」
「ランクを含めたステータスは全部アルファベットで把握できるのだが……大雑把すぎる」
「でも、+とかも付いてある程度細かいんじゃねーの?」
「+とかも付くけど、そもそも大雑把なんだよ」
「どういうことだ?」
俺の答えにワタルは首を傾げる。
「例えば……今のワタルの【肉体】はD++だ。対して、メイの【肉体】はF+++だ」
「メイって田中だよな?」
「そうだな」
「+はいくつまで付くんだ?」
「俺の確認できた限り、3つだな」
「うぉ……ってことは、田中はもう少しで【肉体】がEになるのか!? 松山の【肉体】は?」
「Eだな」
「抜かれそうだな」
「今の俺のランクはEランクだから、近い将来【肉体】は抜かれるだろうな」
今の俺のステータスは、
『種族 覚醒者
適性 魔法剣士
特性 鑑定の才
ランク E
肉体 E
魔力 E
スキル 魔法剣(E)
→エンチャントファイヤ
→エンチャントアイス
→エンチャントウインド
→エンチャントアース
→吸魔斬
鑑定 (E)
剣技 (E)
→スラッシュ
→ムーンスラッシュ
短剣技(H)』
「話を戻すが、【肉体】のランクは俺の方がメイより高いが……メイの方が俺よりも圧倒的に速い」
「速いって言うのは……? 足の速さか?」
「足の速さもそうだが、武器を振る速度……んー、なんて言えばいいんだ? 攻撃速度……? それもメイの方が速い」
「ん? どういうことだ?」
「推測になるが、俺が【鑑定】できるステータスの【肉体】ってのは、トータル的な肉体を指している」
「ふむ……よくわからん」
「ワタルはゲームとかするんだっけ?」
「松山ほどじゃないけど、ある程度なら遊んだことあるぜ」
「ロープレとかすると、ステータスに力とか素早さとか体力みたいな項目があるだろ?」
「あるな」
「多分、それらの要素を全てひっくるめて【肉体】って表示しているんだよ。だから、【肉体】のランクが同じでも、力とか素早さは全然違うんだ」
「なるほど……?」
ワタルは俺の説明にわかったような、わからないような曖昧な表情を浮かべる。
「同様にランクも……馬渕は覚醒して今のランクはFだけど、本人曰く覚醒前とそこまで変化を感じないそうだ」
「は? あり得ないだろ! 覚醒したときは、身体中に力が
「だから、多分……馬渕の持つ【鍛治師】という適性と【鍛冶の才】という特性を含めてランクがFなんだと思う」
「つまり、ランクは強さが全てじゃないってことか?」
「ま、そういうことだな」
ワタルはようやく俺の説明を理解してくれた。
そんな雑談を交わしながら森の中を進んでいると、
「……いた」
先頭を歩いていたアコの足が止まる。
「この先……200メートルくらい先かな?」
木々の遮蔽物となり、ここからは視認できないが、この先にターゲットが存在するようだ。
「数は?」
「一匹だと思う」
一匹か。願ってもない展開だ。
「ゆっくりと近付こう」
俺たちは慎重な足取りでアコの後を続いた。
慎重な足取りで進むこと3分。アコは大きな木の裏に移動し、身を隠した木の奥を指差す。
――!
アコが指差した方角には、槍を手にした巨大な二本の牙を生やした二足歩行の猪が
俺は視界に映る未知なる生物に意識を集中させる。
『種族 オーク
ランク F
耐性 土属性
弱点 火属性
肉体 F+
魔力 Z
スキル 槍技(F)
→一閃突き
かちあげ 』
Fランクで……スキルまで持ってるのか……。
ステータスのみで判断すると格下だ。俺よりも、ワタルよりも……ここにいる誰よりも低いが、ステータスだけで全ては判断できない。
「松山、どうだ?」
「ゴブリンよりもかなり強そうだが、ランクはFだな」
「お! ってことは、やるのか!」
ワタルは目を輝かせている。
戦っても勝てる気はするが……100%の安全を考えたら撤退すべきだ……。
弱点が火属性なら相性も悪くないんだよな……。
……戦うか。
「よし、挑もう! 但し、アキとアコは絶対に前線出るなよ」
「オッケー」
「うん!」
アキとアコはいわば後衛職だ。耐久性には不安がある。
「あいつの弱点は火属性だ」
俺はアキの目を見て伝える。
「りょーかい! 《ファイヤーボール》だね!」
アキの返答に俺は静かに頷き、俺も戦闘の準備に入る。
――《エンチャントファイヤ》!
手にした剣が炎に包まれる。
「開幕は、アキの《ファイヤーボール》。その後、俺とワタルが突っ込む。アコには念の為、各種アイテムを渡しておく」
「ありがとう」
アコにペットボトルに詰めた状態異常セットと、回復薬を渡す。
「俺が撤退と言ったら、アコはそのペットボトルを全部ぶちまけてくれ。ワタルは俺と共に即座に撤退だ」
「あいよ」
「了解」
「アキは攻撃よりも回復最優先な」
「はーい」
他に、言い足りないことはないか……?
あらゆることを想定しようとするが、如何せん知識も経験も乏しかった。
「ふぅ……それじゃ、作戦開始だ!」
俺たちは未知なるモンスター――オーク討伐を開始したのであった。
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