狩り(ナツチーム編)①
◇(ナツ視点)
「ただいま」
「たっだいまー!」
狩りに出かけていたハルたちが帰ってきた。
スマホで時間を確認すると、狩りに出てから2時間58分後。
約束の時間を守れるハルはやはり信頼に値する最高の友人だ。
「おかえり。大丈夫だったか?」
俺は帰ってきたハルに駆け寄った。
「大丈夫。全員無事だ。っと、これお土産な」
ハルはザザーッとカバンから大量の食材や素材を放出すると、
「ふふふ……まだまだあるよん」
「ん」
「追加でござる」
アキたちもハル同様にカバンに詰めていた食材や素材を放出した。
「カーッ! 大量だな!」
「凄い量だね! でも、うちらだとハルっちと違って食べれる草とかの見分けは無理だよー」
「石……鉱物? も、よく分からないよね」
「まぁ、全員が見分けついたら、俺の存在価値は半減するけどな」
ミユやアコの言葉にハルは苦笑する。
ハルの存在価値が半減する……?
何を言っているのか! 《鑑定》は確かに便利だけど、ハルの存在価値は、そんなちっぽけなものじゃない!
ほんの少し前――この世界に転移させられる前のハルと比べたら、だいぶ自信を取り戻しているが……まだまだ足りない! ハルはもっと自分の価値に気付くべきだ!
俺はハルに
ハルと一緒にいると本当に楽しかった。
中学生になった頃を境にハルとの間に距離が生まれた。いつの頃か、
でも、今は
そのことがとても嬉しかった。
家にも帰れない。大好きだったサッカーもできない。クラスメイトもバラバラになった。更には化け物が闊歩するような異世界に飛ばされたが……ハルとの距離が縮まった――それだけで、今を悪くないと思った。
「んー、そうだな……」
ハルはいくつかの植物や鉱物を取り出し並べる。
「ナツ」
「ん? どうした?」
「ここに並べたのは比較的ランクの高い素材だ。写真を撮って参考にしてくれ」
「――! なるほど! 流石はハルだ!」
スマホで写真を撮れば現地で見比べることができる。ハルの柔軟さにはいつも感心させられる。
「後は……これ薬草な。んで、この赤いキャップのペットボトルの中には毒草の粉末、こっちの黄色いキャップのペットボトルの中には痺れ草の粉末を入れてある。どちらも貴重なアイテムじゃないから、少しでも危険を感じたら遠慮せずに使ってくれ」
「あはは! ハルってばお母さんみたい」
「誰がお母さんだ」
ハルの言葉にアキが楽しそうにツッコミ、ハルはふてくされる。そして、俺はそんな二人の様子を見て笑う。
この関係性が最高に心地良かった。
「っしゃ! ナツ、そろそろ行こうぜ!」
「そうだな」
ワタルに促され、俺は狩りの準備をする。
「ワタル、アコ、ミユ、準備は万全か?」
「おうよ!」
「うん!」
「オッケー!」
「よし! それじゃ、行ってくる!」
「気を付けろよ!」
「アコちゃん、ミユちゃん気をつけてねー!」
「い、いってらっしゃい……」
仲間たちに見送られ、俺はチームメンバーと共に狩りに出かけるのであった。
◆
「しっかし、レベル上げとかマジでゲームみたいだよな」
「うちは嫌いじゃないよー」
「ミユ、油断は禁物だからね!」
「はーい! わかってるってば」
和気あいあいと話しながら、俺たちは森の中を進む。
ハルがクラスメイトとの決別を選択したとき、俺は多少の不安を感じていたが……今のワタルたちの笑顔を見たら、ハルの選択は間違っていなかったと心の底から感じる。
「発見。前方10メートル先にゴブリンの反応」
アコが立ち止まり、敵の存在を告げる。
ハルの【鑑定の才】もそうだが、アコの【索敵の才】もかなり便利な適性だ。何も考えず……語感のみで【光の才】を選択した自分が悔やまれる。
「数は?」
「4匹」
4匹か……。こちらも4人だが、明確な攻撃手段があるのは、俺、ワタル、アコの3人だ。
「どうする?」
ワタルが俺に視線を向けて問いかけてくる。
「ワタル2匹いけるか?」
「ハッ! 4匹全部でもいけるぜ!」
「アコは?」
「んー……少し不安はあるけど、頑張ってみる」
アコは狩人だが、得意武器である弓をまだ所持していない。現在の武器は短剣だ。
木と伸縮性のある弦で簡易的な弓を作ってはみたが、ハルの《鑑定》ではソレは弓と認められず、使い勝手も実用性に足るものではなかった。
「俺は1匹倒した後、アコのフォローにまわる」
「ありがとう」
「うちはアコから順番にバフをかけるね」
顔を見回すと、仲間たちは笑顔で首肯する。
作戦は決まった。
「それじゃ、行くぞ!」
ナツチームとしての初めての狩りが始まった。
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