狩り(ハルチーム編)

「3時間後の15時目安に戻ってくる」

「いってきまーす!」

「無理はするなよ!」

「アキ、頑張ってねー!」

「き、気を付けて……」

 

 仲間たちに見送られ、俺はチームメンバーと共に狩りへと出かけた。

 

 今回の狩りの目的は3つだ。

 

 1つは、レベル上げ。

 

 1つは、食材を含めた素材収集。

 

 1つは、仮拠点近辺の把握マッピング

 

「お! ハル! 草発見! 食べれるかな?」

「食べれるが……採集は後回しな」

「そうなの?」

「草程度ならいいが、素材を集めすぎると重くなるだろ。まずは、経験値稼ぎからだな。使えそうな素材が落ちてる場所はとりあえずマッピングだな」

「承知! マッピングは某にお任せを!」

 

 マッピングは空間把握能力に優れ、絵心もあると自己申告してきた山田に一任した。

 

 山田は器用にスマホのメモ帳アプリにタッチペンを用いて地図を描いていた。

 

「へぇ……本当に上手いな」

「フッ、照れるでござる……否! ほ、褒めても何も出ないんだからねっ!」

 

 何が否なのだろうか? これ以上、山田に属性はいらない。

 

 ツンデレ属性を加えようとした山田を無視して森の中を散策すること5分。

 

 3匹のゴブリンを発見した。

 

「この森ってアレしかいないのかな?」


 アキが発見したゴブリンを指差す。


「ウルフもいただろ?」

「あ! あの大きな犬?」

「犬って……ウルフだから、一応オオカミだろ」

 

 俺たちは仮拠点に到着するまでかなりの数のゴブリンを倒していた。今更、ゴブリンに遭遇したからと騒ぎ出す仲間はいない。

 

「3匹か……アキ、メイ、山田で1匹ずつ仕留めるか?」

「ん」

「承知」

「ハルはいいの?」

「俺は3人よりもレベルが少し高いからな」

「むぅ……そんなこと言って油断しているとすぐに抜いちゃうからね!」

「ん。マハルとすぐに並ぶから」

「松山殿は日ノ本が誇る軍師! ここは某たちに任せてドーンっと構えてて欲しいでござる」

「へいへい。頑張って」

 

 俺は手をひらひらと振り3人を見送る。

 

「一番奥のゴブリンは私が倒すね」

「ん。手前は私」

「承知した!」

 

 3人は各々のターゲットを確認し、武器を構える。俺は念の為近接が不得手なアキの後ろで控えた。

 

「いっくよー! ――《ウィンドカッター》!」

 

 アキの放った風の刃が奥にいたゴブリンを斬り裂くと、

 

「ん。遅い」

 

 あっという間に距離を詰めたメイが手前にいたゴブリンの首を跳ね飛ばし、

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣――」

「山田、無詠唱」

「むむ……承知。――《火遁の術》!」


 最後に残ったゴブリンが山田の巻き起こした火柱に包まれた。


 全員が一撃ワンキルとは、余裕だな。


 一切苦戦することなく、アキたちは3匹のゴブリンを倒したのであった。


「楽勝だな」

「へへっ」

「ん」

「真の力を解放するまでもなかったでござる」


 アキは嬉しそうに鼻の下をこすり、メイは静かにVサインを決め、山田は憂鬱そうに頭に手を置いている。


「一応確認だが……アキは《ウィンドカッター》を何発くらいまでなら連続で放てそうだ?」

「んー……どうだろう? 使うと少し倦怠感があるけど、この程度なら何発でも使えると思うよ」


 俺も魔法――《エンチャントファイヤ》などを使用すると軽い倦怠感に襲われる。恐らくこれはゲームで言うところのMP消費なのだろうが……《鑑定》してもそういったステータスは確認できないので不明だった。


「山田は?」

「某は……ちなみにこの質問は重要でござるか?」

「凄く重要だ。誤魔化すようなら、俺は一緒に行動することができない」

「――!? そ、それほどでござるか……。むぅ……《火遁の術》は連続使用であれば、2回が限界でござる」

「そんなにも消費が激しいのか」

「如何にも」

「どのくらい休めば完調するんだ?」

「1回使うと……3分も休めれば問題ないでござる」


 ってことは、山田が《火遁の術》を使える回数は2回だから……6分休めばMPは全回復するってことなのか?


「山田は短剣での戦い方も練習した方がいいな」

「承知……忍術は暫く禁止でござるか?」

「いや、忍術の熟練度も稼いだほうがいいと思うから……交互に使う感じでいいんじゃないか?」

「承知した!」


 《火遁の術》は強すぎと感じていたが、それ相応の代償もあったようだ。


「んじゃ、ゴブリンを倒しまくってレベルを上げるとするか」

「「「おー!」」」


 そこから2時間ゴブリンを探しては倒すを繰り返した。


 〜♪


「残り1時間か」


 スマホにセットしたアラームが狩りの残り時間を告げる。


「素材収集を始めるか。珍しそうな素材があったら、俺のところに持ってきてくれ。鍛冶で使えそうな鉱石があったら最高だな」

「はーい」

「ん」

「承知。馬渕殿への土産でござるな」


 そこからは、植物、鉱物問わず森に落ちているあらゆるモノを《鑑定》し、有用そうな素材をカバンに詰め込んだ。


 〜♪


「もうこんな時間か」

 

 スマホにセットしたアラームが狩りの残り時間が10分と告げた。

 

「それじゃ、帰るとするか」

 

 初回から遅刻をしては信頼を失ってしまう。俺は時間に余裕を見て帰還するのであった。

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