決別
今後の身の振り方か……。
「仮に俺がリーダーを名乗り出たらどうする?」
「どうだろうな……。即答はできないな」
「は? ふざけんな! 俺は認めねーぞ! 松山がリーダーなんてぜってーに認めねーからな!」
試しに一つ質問をすると佐伯は慎重に答え、関係のない相澤が騒ぎ立てる。
佐伯が大人しくなったということは……俺のハッタリが効いたか? 実際には俺のほうが低ランクだとバレたらどうなる? 少なくとも現時点で騒いでる
とはいえ、佐伯にリーダーを任せたら?
一緒に行動していたら先程のハッタリはいずれ露呈する。すると、やはり
となると、答えは一つしかないな。
「佐伯、俺はさっきの佐伯の意見――『生き残る為にはリーダーが必要』と言うのは同意だ」
「だろうな。で、どうするんだ? 松山がリーダーに名乗り出るのか?」
「いや、そのつもりはない」
「ほぉ……ならば、俺をリーダーと認めるのか?」
「残念だが、そのつもりもない」
「ん? ならば、どうするのだ? クラスメイト全員で話し合いでもするか?」
「話し合いか……それも悪くはないが、全員が納得するのは無理だろ」
話し合いをしても、全員が納得するのは土台無理な話だ。最終的に多数決になったのなら、少数派の意思は殺されたことになる。多数決に頼らないまでも、方向性を示すのは一部の影響力のある者だ。口を挟めず、傍観する者の意思はやはり殺される。
「ならば、どうすると言うのだ!」
「出ていくよ。俺は……俺を信じてくれる仲間たちと一緒にここを出ていく」
俺の導き出した答えは――決別だった。
一人では何も出来ない。仲間がいないと無理だ。仲間は多いほうが良い。
但し、多すぎる仲間は統制不能となり、時に足を引っ張り合う事態に陥ってしまう。
「俺たちを追い出すのではなく、出ていく……と言うのか?」
「言い出しっぺは俺だからな。こちらが出ていくのが筋じゃないか?」
「なるほど……出ていくのか……確かにそれも一つの最善なのかもな」
佐伯は俺の言葉を反芻し、最後には納得したようだ。
「俺と一緒にここを出るクラスメイトは志願制にしたい。志願した者を快く見送ってくれると助かるし、佐伯が俺の仲間だと思っている者でも、残りたいと願う者がいたら、良くしてやって欲しい」
「わかった。約束しよう」
佐伯は首肯すると手を俺へと差し出し、俺は差し出された佐伯の手を握りしめた。
「と言う訳で、俺と一緒にここを出る者は挙手してくれ!」
これで誰も手を挙げなかったら笑うな……。クラス転移かと思ったら、追放モノへと早変わりだ。
そんな心配も杞憂に終わり……
「はいはーい! 私も行くよー!」
「当然、俺も行く!」
「ん。マハルと私はずっと一緒」
「某、身も心もハル殿に捧げたでござるよ!」
「ぼ、僕も……行きます」
「うちも行くー!」
「もち、私も!」
「わ、私も……ご一緒させて……下さい……」
「佐伯、悪いな。俺はこいつらと一緒に行く」
「あ、えっと……よろしくお願いします」
アキ、ナツ、メイ、山田、馬渕、アコ、ミユ、ユウコ、ワタル、沼田の10人が手を挙げてくれた。
「松山を含めて9人かと思っていたら2人も増えていたのか」
佐伯は挙手した仲間たちを見回して苦笑する。
「ハッ! てめーら後悔すんじゃねーぞ!」
「にしし……あーしはとーじとずっと一緒だょ」
相澤は負け犬の遠吠えを吐き捨て、立花は笑顔で佐伯へ歩み寄った。内海、木下、村井の三バカトリオは憎しみに満ちた視線をこちらに向ける。
順風満帆とは言わないが、クラスメイトで争う事態は避けれた。悪くはない門出だ、と思っていたが……
「すまない。私たちもここから出ようと思う」
予測していなかったクラスメイト――
「へ? 俺たちと一緒に来るってことでいいのかな?」
「いや、私たちは別の場所に行くよ」
早川さんの周囲には2人の女子。早川さんは3人でここから出るようだ。
「私はここに残るわ」
「里帆が残るなら、私も……」
里帆――古瀬さんはここに留まるようだ。
結果的に、ここに残るクラスメイトは、佐伯派を中心に13人となった。
その後、俺たちは荷物を纏めて旅立つ準備をした。
「佐伯、一つだけ忘れないでくれ。結果的に……ここから出ることになったが……俺たちは敵じゃない」
「分かってる。互いの無事を祈ろう」
「そうだ。最後に一つだけ助言だ。【竜騎士】の得意武器は『槍』じゃなくて『大剣』だぞ」
「は?」
呆ける佐伯に見送られ、俺は仲間と共に新天地を求め、拠点から旅立ったのであった。
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