仲間たちの【適性】と【特性】②

「最後に、アコは?」


 ユウコ、ワタル、山田、ミユの【適性】と【特性】を聞き終え、俺は最後に残ったアコ(野村)へと視線を移した。


「えっと……うちは【狩人】と【索敵の才】を選ぼうと思うけど、どうかな?」


 アコは聞き返すような口調で答えた。


「【狩人】と【索敵の才】か……。凄く良いと思うけど、選んだ理由は?」

「えっとね、みんなの選んだ【適性】を聞いていたら……後方支援って言うのかな? 遠くから援護出来る人が少ないなぁと思って……。【索敵の才】は誰も選んで無かったし、【狩人】なら何となく相性もいいかなぁ? と思ったからかな」


 自分の意思ではなく、周囲の【適性】と【特性】を聞いてから足りないモノを選ぶ……か。完璧だ。まさしく、俺が足りないと感じていた【適性】と【特性】をピンポイントで埋めてくれた。


 俺はアコ――野村亜子の評価をワンランク格上げする。


 俺は、仲間の希望した【適性】と【特性】をノートにまとめた。


◎ハル派

【アタッカー(近接)】

 松山春人 (魔法剣士、鑑定の才)

 獅童夏彦 (聖騎士、光の才) ※兼タンク?

 佐藤渉  (戦士、斧の才)

 山田マイケル (忍者、忍術の才) ※遠距離?

【アタッカー(遠距離)】

 辻野秋絵 (賢者、魔力の才) ※兼ヒーラー

 野村亜子 (狩人、索敵の才)

【バッファー】

 塩谷深雪 (付与師、強化の才)

【生産】

 馬渕明宏 (鍛冶師、鍛冶の才)

 菊池悠子 (装飾師、裁縫の才)


 こうして見るとバランスは悪くない。


 対して、佐伯派閥は――


◎佐伯派

【アタッカー(近接)】

 佐伯冬二  (竜騎士、力の才)

 相澤剛 (魔闘士、無才)

 内海拓哉 (暗黒騎士、耐久の才) ※タンク?

 木下虎太朗(暗殺者、隠密の才)

【アタッカー(遠距離)】

 北川聡  (魔導師、炎属性の才)

【ヒーラー】

 立花佳奈 (聖女、回復の才)

 村井圭佑 (僧侶、水属性の才)

【生産】

 宮野由衣 (料理人、料理の才)


 バランスは悪くないな。


 一見、戦力は互角に見えるが……実際にはレベルが大きく負けている。


 今争えば――敗北は必至。


 早急に、こちらの仲間を『覚醒者』にして、レベルアップに励む必要があるな。


「今夜、全員を『覚醒者』にする」


 仲間たちの顔を見回し、宣言した。



  ◆



 皆が寝静まった深夜2時過ぎ。


 俺は仲間と共に暗い森の中、モンスターを探し回った。


 結果的に、朝日が昇る時間ギリギリのタイミングで仲間全員が望む【適性】と【特性】を授かることに成功した。


「実感は湧かないが……俺も『覚醒者』になったんだよな?」


 ワタルが自分の利き手をグーパーグーパーと開いたり、閉じたりしながら聞いてくる。


「私は実感あるかな! いっくよー! ――《フィジカルブースト》!」


 対してミユは嬉しそうに覚えたばかりの魔法を唱える。


「ワタルは【戦士】だから魔法が使えないから……実感が湧きづらいのかもな」

「そう言われれば……そうかもしれないが、何か寂しいな」

「斧でも持てば実感湧くだろ」

「斧か……斧持ちのゴブリンを探すか……」

「それでもいいが、馬渕に作ってもらったら?」

「そういえば、馬渕は【鍛冶師】か……頼んでみるか」

「某も手裏剣と短刀が欲しいでござる!」

「短刀って……ゴブリンのナイフでもいいだろ?」

「忍者と言えば、短刀でござる!」

「そうなのか?」

「そうでござる!」

「じゃあ、私は杖が欲しい!」

「うちは弓が欲しいかな」


 『覚醒者』になった仲間たちは、楽しそうに好き勝手言い合っていた。


 役目を終えた俺たちは寝床に戻り、僅かな仮眠をとったのであった。



  ◆



 眠い目を擦りながら怪しまれないように、いつも通りの時間で起床し、朝食を終えると……、


「今日の散策だが、同行したい者はいるか?」


 佐伯が同行――新たに【覚醒者】になるクラスメイトを募る。


「立花さんには助けられた。借りを返すよ」

「真司を助けてくれたお礼をしなくちゃね」

「舞が行くなら、私も行こうかな」


 すると、立花に怪我を治してもらった乾真司と、その彼女の栗山舞、栗山舞の友人である菅野由紀が手を挙げた。


「乾に栗山に菅野か……今回はこの3人だな」


 佐伯は立候補した3人を見回し、首肯する。


 一気に3人かよ……。俺は佐伯派になるであろうクラスメイトを見回し頭の中で計算を張り巡らせる。


 クラスメイトは27人。


 佐伯派はこれで11人。対して、こちらは9人。


 これで【覚醒者】になっていないクラスメイトの数は残り7人……。


 個の力も然ることながら、数は大きな力となる。


 日本人の習性と言う訳ではないが……何かを決めるとき多数決に頼ることは多い。


 過半数を取るなら最低あと5人のクラスメイトをこちらに引き入れる必要がある。


 仮に過半数に達しなくても……最悪のケースが起きれば、俺は佐伯派と袂を分って派閥の仲間たちと共にこの拠点を出ればいい。


 しかし、その場合はあと1人――【建築士】の【適性】を持つ者をこちらに引き込みたかった。【建築士】がいれば、人が生きていく上で必要な――衣食住の住を補うことが出来るからだ。


 さてと、誰を引き込むべきか……


 俺は残ったクラスメイトたちの顔を見回して思考するのであった。

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