クラス会議③
15分間の休憩が終わった。
クラスメイトは再びナツを中心に円型に集まる。
「全員、集まったかな?」
ナツは集まったクラスメイトの顔を見回す。
「俺からの提案をもう一度伝える。ゴブリンを探索。俺、ハル、剛、佐伯以外のクラスメイトがゴブリンを討伐。回復魔法を習得出来ると思われる【適性】と【特性】を授かり、怪我人の治療を試みる」
休憩を挟んで冷静さを取り戻したナツが落ち着いた口調で提案内容を告げる。
「他に提案がある人は?」
ナツがクラスメイトの顔を見回すと、古瀬さんが控えめに手を挙げる。
「提案じゃないですが……仮に、仮にですよ……獅童君の言葉が正しいとして、回復魔法を使える【適性】と【特性】は授かれるのかしら?」
古瀬さんはクールタイムを経て、非現実的とも言えるナツの主張を僅かではあるが、信じ始めたようだ。
「すまない。説明もいくつも飛ばしてた。【適性】と【特性】は選択可能だ」
「選択可能……?」
「俺も全部は覚えてはいないが……パッと見たと言うか、脳に感じたと言うか……とりあえず、【適性】と【特性】は100種類以上はあった」
「ひゃ、100種類も!? そ、それでその中で回復魔法が使えそうなのはいくつあったのですか?」
「確実性が高いのは二つ――【僧侶】と【聖者】だ。他にも、【神官】、【賢者】、【薬師】など回復魔法が使えそうな【適性】はいくつかあった。ハ……俺の推測となるが、一番確実性が高いのは【僧侶】と【聖者】だ。【特性】は【回復の才】を選べば間違いはないと思う」
ナツはまたしても俺の名前を出そうとしてしまうが、
「【僧侶】……に【聖者】……? 【回復の才】ですか?」
「あぁ……それからみんなには一つ重要なことを伝える。これも、ハ……じゃなくて俺の推測だが、【適性】と【特性】は早いもの勝ちになっていると思われる」
ナツはいつか俺の名前をポロッと出してしまうのではないだろうか?
「早いもの勝ちとはどういうことですか?」
「別の誰かが先に選んだ【適性】と【特性】は選択出来ない。つまり、今だと……俺が選択した【聖騎士】と【光の才】、ハルの選んだ【魔法剣士】と【鑑定の才】、佐伯の選んだ【竜騎士】と【力の才】、剛の選んだ【魔闘士】は選択出来ない」
ナツの告げた推測を話すことも
「どういうこと……?」
「え? それってつまり……」
「後になればなるほど不利なのか?」
「――! 某の暗黒騎士は無事でござったか」
「ねぇ! 意味わかんない! どういうこと!」
ナツの言葉の意味を理解出来た者と理解出来なかった者……それぞれが違う感情で困惑する。
「静かに! 俺は誠意を見せるために……隠しごとをせずに自分の推測を全て伝えた! 各々思うところはあるだろうが……今は協力してくれ!」
ナツはざわめくクラスメイトたちを叱咤する。
「他に提案がある者は? ならば、次に具体的な行動指針を話したいと思う。質問、反論は後から聞くので、まずは俺の考えを聞いてくれ」
真剣な表情で訴える言葉にクラスメイトたちは無言でナツへと意識を集中させる。
「まずは二つのグループに分類する。一つはゴブリンを捜索するグループ。もう一つはここに残るグループだ。【適性】と【特性】を授かっている者が四人いるから……二人ずつ分けたいと思う。ここまでで質問は?」
「そうなると、グループ分けはどうすんだ?」
相澤がナツに質問する。
「グループ分けか……そうだな……」
ナツは腕を組んで悩んだ表情を浮かべながら、俺へと視線を送る。
何故、こちらを見る?
俺が発言したら、相澤のアホは無駄にキレるぞ?
「同じく【適性】と【特性】を授かった――ハルはどう思う?」
ナツは取ってつけたような理由を添えて、俺に話を振る。
「チッ……何であんな奴に聞くんだよ……」
感情を隠しきれていない相澤の舌打ちと小声が俺の耳にも届く。
ほんと……何でだろうな? この件に関しては、相澤と同意見だ。
とは言え、名指しで指名されたのだ。知らない振りをする訳にもいかない。
「えっと……獅童君は光属性の攻撃が出来る。俺は剣に炎属性を付加して攻撃することが出来る。相澤君と佐伯君は何が出来るのかな?」
「俺は……《咆哮》というスキルで敵を竦ませることができるらしい」
佐伯が習得したスキルの効果を伝える。
「俺はこれだ――《ファイヤーフィスト》!」
――!
相澤は立ち上がり拳を突き出すと、その拳が炎に包まれる。
「この拳でぶっ叩けばさっきのゴブリンみたいな雑魚は一撃だぜ!」
【魔法剣士】の格闘版が【魔闘士】なのか?
奇しくも、相澤は俺と似た【適性】を獲得したみたいだ。……相澤は【特性】は有していないが。
拾ったゴブリンの短剣で攻撃出来る、俺とナツ。素手での攻撃が得意な相澤。ゴブリンを竦ませる可能性がある佐伯。
「佐伯君のゴブリンを竦ませるスキルは他のクラスメイトがゴブリンにとどめを刺すのに有用な気がする。だから、佐伯君はゴブリンを捜索するグループの方が向いていると思う。武器が乏しい現状で素手で戦闘力がある相澤君は頼りになる戦力だと思う」
俺は佐伯と相澤を精一杯持ち上げる。
「頼れるか……松山ぁ! てめーわかってるじゃねーか!」
相澤は満更でも無さそうな笑みを漏らして、俺の言葉を受け入れる。
……チョロいな。
「それで、メンバー分けはどうするんだ?」
相澤が納得しホッとしたのもつかの間、次は佐伯が鋭い視線を向けてきた。
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