第67話 再会の従者(13)
玉座に座るレコンキングス王は静かに僕たちを見下ろして、口を開いた。
「さて、では詰問をはじめようか。そうさな、まずはラング。お前からだ。お前がブラックサンライズの者たちに拉致された、というのは真か」
レコンキングス王の言葉に頷き答える。
「はい、事実です。手足を縛られて布袋をかけられ拐われました」
「ふむ。報告と一致するか。拉致の理由は」
「……僕の持つ情報を欲してのことかと」
それだけ答えた。レコンキングス王は茶色い顎髭を撫でて目を細める。
この質問は事前にアナイさんが想定していたものだ。そして、レコンキングス王の意識を引くために、敢えて情報は伏せるよう言われたのだ。
「そうか。ではヒルグラム=ウェンティコよ。お前の話を聞こう。経緯を話せ」
「はい、王よ。私は昨日、見回りと魔灯点火のため詰め所へ向かった際に先任からの引き継ぎで誘拐の情報を聞き、アナイとともに現場へ向かったものであります。その際船から爆発音と煙が上がるのを確認し、事態の確認のため船内に突入したものであります」
ヒルグラムさんの言葉にレコンキングス王はやはり表情は変えず頷いた。そうして、ゆっくり身を乗り出すと重く声を放つ。
「ヒルグラム=ウェンティコよ。お前は王都騎士である以上、ブラックサンライズの立ち位置を知っておるな。であるにも関わらずそれに手を出したのは、なぜだ」
ヒルグラムさんは、目を閉じ少し間をおいてから、答えた。
「どのような事情であれ、人の生き死にが起きるのならそれを止めるべきと考えたからです」
その答えに迷いはなく、瞳はまっすぐレコンキングス王を見つめていた。
「……若いな。そして愚かだ。仮にも戦士の誉れ、ウェンティコの称号を受けた者だろうに。あまりに視野が狭い」
レコンキングス王はため息をついて玉座へもたれ掛かる。
「お前の行いによって幾人が死ぬか。後の事を考えもせず目先の事で飛び込むなどと」
そう言って興味を失ったように深く玉座へ腰かけるレコンキングス王へ、声を上げる者がいた。
「お待ちください、レコンキングス王!ヒルグラム…かの王都騎士は拐われたラングの価値を考えて救出を決めたもので、目先の事ではありません!」
「……ほう。口を開くことを許した覚えはないが。良いだろう、名を名乗れ」
ヒルグラムさんの隣、震える右手を握りしめた彼女は気丈に顔を上げて名乗る。
「王城魔術師見習い、アナイ=デルタルです……!」
その言葉に、ピクリとレコンキングス王は眉を持ち上げた。彼女の名乗った名前、そこに冠された称号に反応したのだ。
「……成る程。口を開くことを許す。お前の言葉をもってそれらの無実を証明してみよ」
アナイさんは力強く頷いて、深呼吸をする。僕らは、見守るしか出来なかった。
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