第16話
その日の夜、僕はサングラスをかけたままいつものように町の中を自転車で走っていた。受験勉強の息抜きだ。すると向こうから自転車に乗ったヤンキーっぽい制服を着た男の子が近付いてきた。すれ違うときに僕はその男の子がこーちゃんだと気付いた。僕は自転車をすぐに止めて大きな声でこーちゃんに声をかけた。こーちゃんは僕の声にすぐ気付いてくれて自転車をUターンさせて僕のところに自転車を押しながら歩いてきた。僕はサングラスを外した。その時、僕は初めて気が付いた。サングラスを外すと目に入るものの色がハッキリと分かる。めちゃくちゃ鮮明に見える。
「なんや、えーじか。夜にサングラスかけてるやつなんてけったいなやつやなあと思ってたらお前やったんか」
「うん、最近よくかけるようになってな」
「サングラスなんか夏とか日差しが眩しい時にかけるもんやぞ」
「そうなん?」
「俺らん中でサングラスをかけるのはダサい奴ってのがあってな。お前も分かると思うけど、サングラスってかけてる奴がどこを見てるか分からんやん。粋がってガンもよー飛ばせん奴がかけるもんやってみんな思ってるで」
こーちゃんの言うとおりだ。僕はダサい。サングラスをかけて強くなったつもりになってただけだ。
「そーやな。確かにダサい」
そう言って僕は手に持ったサングラスを地面に落とし、足で踏みつけた。サングラスは簡単に割れた。
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