双子(ふたご)上
土地独特の匂いというものがあるのだと、目が見えなくなって
そしてここ、
「吐きそう」
鼻を手で覆い、顔を
大きな荷物を背負った行商人の男が、苦笑しながら背中を撫でてくれた。
「本当につらそうだなぁ。ちょっと待ってろ。すぐに休める場所を確保するから」
「ありがと、
春青山に行商に来た晧と山を下りて、そろそろ二年になる。
手にしていた木の杖に寄りかかるようにして、桃糸は息をついた。
視力を失ったのは15歳の時。今ではすっかり鼻と耳がきく。
陽の落ちた通りはなにかと騒がしい。店や宿の客寄せの声、子どもを呼ぶ親の声、家路を急ぐ人々の足音や擦れる布音に荷物の音。
音の波に洗われ、桃糸はさらに気分が悪くなっていた。
しがみつくようにしていた杖から片手を離し、腰に手を伸ばす。
指先に触れたつるりとした肌触りのそれを、すがる思いで握りしめる。
深呼吸をして、崩れていた姿勢を正した。
「……はい、
口の中で呟いたところで、晧が戻ってきた。
晧に連れられて当面の宿に向かったが、桃糸はいつもと違う雰囲気に眉をひそめた。
周囲から聞こえるのは女性の声ばかり。
鼻をつくのは
「晧……?」
「違う違う!」
げんなりする桃糸に慌てて晧は首を振った。
「馴染みの取り引き先なんだ。装身具や香木をよく買ってもらってて」
「ふーん……」
焦った様子で「本当に違うんだ」と言い訳を重ねるのがなんとも笑えてきてしまう。
別に咎めるつもりはない。晧は独り身だ。決まった相手もいないと聞いている。病気にだけ注意してくれれば、好きにしていい。
笑い含みにそう伝えると、晧の「違うんだ……」という情けない声が聞こえ、桃糸はますます笑ってしまった。
「こちらをお使いください」
通されたのは店のかなり奥まった場所だった。ここは嬌声も香の匂いもせず、思わず深く息をしてしまう。
「お茶でよろしいかったでしょうか。御酒をお持ちしますか?」
愛らしい声で給仕を申し出てくれる店員に、
「あー、お茶でいいよ。君もさがってくれていいから」
しどろもどろに答えるとくすりと笑う気配がして、茶器を並べる音がする。
「ご心配なさらず。ボクはまだ新芽なので、お相手はできません」
「……新芽」
「そうか。桃糸は知らなくて当然か」
晧がぽんと手を打つ。
「決まりがあってな。下働きや雑務をこなしながら芸事の修行をするのが新芽。客を取り始めて1年未満が若芽。それ以降が若木。引退して次代を育てるようになると
「へぇ……」
室内にふわりと香ばしい香りが漂い、「どうそ」と桃糸の座っていた椅子の前の机に湯のみが置かれたのがわかった。
「では、これで失礼いたしますね。ご用があればいつでもお呼びください」
晧に名を訊かれ、
「ちなみに樒は男の子だし、さっきの新芽から播種は男娼の場合な」
桃糸の手元から湯のみが滑って落ちた。
晧に連れられて大通りを歩きながら、桃糸は不思議そうにしている。
今日も変わらず、体にまとわりつくありとあらゆる匂いに、頭が重くなってきた。
「この匂いもそうだんだけどさ。見えないことにそこそこ慣れてきた僕も、けっこう不便なんだけど……」
首を傾げる桃糸に、肩を貸していた晧も「はて」と顎に手をやる。
「そこは俺もわからんなぁ。なんせ当たり前に思っていたから」
「うん、そうだよねぇ……」
不思議だ不思議だと言い合う2人の横を、勢いよく人が走り抜けていった。
桃糸は右手に持っていた杖を蹴られてしまい、取り落としてしまう。
「おっと」
驚いて声を上げたが、左手は晧の肩に触れている。よろめく程度で、転ぶことはなかった。
「ごめんなさい!」
ぶつかったのは子どもだったようだ。樒とはまた違う、声変り前の柔らかさを聞き取り、桃糸は穏やかに笑う。
「いいよ、大丈夫。君は怪我はない?」
「大丈夫です。杖、どうぞ」
右手の先にそっと触れるように差し出され、桃糸は迷わずに掴むことが出来た。
「ありがとう」
「いえ、本当にごめんなさい」
軽い足音が響き、子どもが走り去っていったのがわかった。
「今の子もすごいよね。まるで見えてるみたいだった」
感心して言う桃糸に、晧は返答しない。
「晧?」
「……今の子……」
「ん?」
「いや、なんでもない」
歯切れの悪い晧に再度問おうとしたところで、頭上から鐘の音が聞こえてきた。太陽が頭上にきたことを知らせる鐘だ。
桃糸は音のした方に顔を向けるが、もちろん視界には何も映らない。
「どうする?こうやって歩いていてもお前さんの疑問は解決しないだろうし、いっそ宿で樒に訊いてみるか」
腹もへったし、と晧は言う。
国民全てが盲目なのに、全員が不自由なく暮らしているというのが不思議で訪れてみたのだが、晧の言う通り、街中をうろうろしているだけでは疑問は解決しそうにない。
だからといって宿に戻るのも気が引ける。
桃糸がなぜ宿に戻ることを渋っているのか察した皓は、大丈夫、と請け負った。
「この時間に泊まりの客はいないよ」
だから宿に戻ろう、と言う晧に折れる形で、二人は元きた道を戻ったのだった。
宿の入口で出迎えてくれた
なるほど、昼間の時間帯、こういった店はむしろしんと静まり返っていた。
香の残り香はあったが、昨夜のような重苦しい感じはしない。
部屋でのんびりしていると、良い香りのする昼食を持って、樒と、もう一人別の店員がやってきたのが足音でわかった。
「
樒によく似た声だったのでそう伝えると、くすりと笑って「双子なんです」と教えてくれた。
温かい汁物はこちら、野菜は、肉は、と
「訊いてもいいかな」
「はい」と応じる二人の声は本当にそっくり。姿の見えない桃糸には判別が難しい。
「
焼いた肉を頬張りながら「まるで見えているみたいだ」と続ける。
味付けは口に合うのだが、少し固めか。
湯のみを求めて伸ばした桃糸の左手を、柔らかな手が取り、導いてくれる。
「こちらですか?」
「ん、ありがと。えーと、榊」
「樒です」
「うーん」
くすりと右側から笑い声がして、そうか右にいるのが榊か、と一人で納得する。
その榊が「旦那様は」と話し始めた。
「魔力をお使いになるお方だとお見受けいたしますが、間違いないでしょうか」
もっとも当の本人はあっけらかんとしている。
「うん、ちょっとだけね。使えるよ」
「ご安心ください。お宿の中でうかがったお話を外に漏らすことは、まじないで禁じられております」
これは左側から聞こえたから樒。桃糸に、というよりは、晧に言ったようだ。
「まじないで禁じるって?」
問いかける自分の声にどうしても好奇心旺盛な雰囲気が滲んでしまい、大人げなかったかと桃糸は多少の恥ずかしさを覚える。
「お宿でお勤めすることが決まった時に受けるものです」
「旦那様方は色々なお話をしてくださるので」
「旦那様や周囲の皆様にご迷惑がかからないように」
「店主から施されるまじないです」
左右交互に話されて、桃糸は納得するよりも混乱した。気付いているのだろう、二人はくすくすと笑って楽しそうに続ける。
「なので、ご心配なさらずに」
「お話していただいて大丈夫ですよ」
それがどんなまじないなのか興味を惹かれたが、目的はそれではない。桃糸はお茶を飲んでひと息つき、話題を戻す。
「魔力を使えることは、目が見えなくても平気な蒼螺の人たちと関係があるの?」
空になっていた湯のみに茶を注ぐ音と「はい」という返事が左側から。
「ボクらは魔力を広げることで、周囲の様子を知るのです」
と右側から。
「魔力を、広げる」
どこか弾んだように「はい」と応じる声は両側から。
「広げる……?流し込むのではなく……?」
今まで試したことのない力の使い方に首を傾げる桃糸。
腰につけている木鈴に触れ、表面をするりと撫でる。
「よろしければ、少しお手伝いいたしましょうか」
榊はそう言って、「失礼します」と鈴に触れていた桃糸の右手を握った。
「じゃあボクも」
左手を同じように樒に取られてしまう。
「旦那様には難しくないかと」
「ボクらの魔力の広がりに、ご自分の魔力を乗せてみてくださいませ」
桃糸はなるほどと頷く。
自分の内なる力に気付いた時、同じようなことを師が度々やってくれた。
こちらの力を捕らえてもらい、師の魔力に添わせることで、力を使う際の感覚を身に付ける。
とんでもなく幼くなったような気がして
両手に意識を集中し、
二人の魔力は自分や師のものとは違い、力強さというよりも柔軟さを感じさせた。
その柔らかな力が、二人を中心にして周囲に広がっているのが確かにわかった。
優しく柔らかく広がり、そして二人の元に戻っていく。
さざ波のようなその動きに自分の魔力を乗せ、同じように広げてみた。
「あ、うわ」
桃糸の脳裏に、自分を中心とした室内の様子がゆっくりと現れる。
質素ながら湯気のあがる美味しそうな食事、心配そうに見つめてくる
そして左右には、自分の手を握る、暗緑色で癖のない髪を長く伸ばす、同じ顔をした少年たち。
榊がくすりと笑い、樒が小さく首を傾げた。
「お初にお目にかかります」
「旦那様」
感覚をつかんでしまえば桃糸の飲み込みは早い。その日の夜には、双子の援助が無くても宿のほぼ全体に自分の魔力を広げることができるようになっていた。
「気を付けてくださいまし」と白く濁った瞳で榊が笑う。
「見えてこない場所を無理に覗こうとなさいませんように」
確かに宿の中には、見ようと思っても魔力が弾き返されてしまう場所がいくつかあった。
そういう場所は「他の旦那様がご利用です」と樒がやんわりと教えてくれた。
魔力を広げてものを見るというのは同じなのに、桃糸と双子では決定的に違う部分があった。
「色が無い?」
驚く桃糸にこくんと頷いたのは樒。笑うとえくぼが出来るのが愛らしい。
「ボクらは生まれつき色を知りません」
二人は黒い貫頭衣に、くすんだ緑色の太い帯を締めていた。
黒の貫頭衣は男娼の、くすんだ緑色の帯は新芽の印。若芽になると明るい緑色の、若木は同じ帯に銀糸で花の模様を縫いとる。播種になると白い帯を締めるようになる。
「でもボクらは色が分からないので、晧様のような行商人様にお助けいただくのです」
くすりと笑う榊は小さな八重歯があって、それも愛らしい。
「でも僕は、色が見えるんだけど」
なんで?と首を傾げる桃糸の様子に、双子は顔を見合わせる。
そしてほんのりと頬を染め、榊は笑みを深くした。
「旦那様の魔力の広げ方は、ボクたちと少し違うようで……」
「ボクらは表面に触れるように広げていきますが、旦那様は時折、内側まで探るようにされるので……」
樒は恥ずかしそうに俯く。
「えーと、それは、つまり」
つまり、魔力を対象に流し込むことで理解する、という今までの使い方を、無意識に行っているということか。
しかも桃糸は色のある世界で生きてきた経験がある。魔力で触れ内側まで理解すれば、頭の中で色を結ぶことも出来るのだろう、というのが双子の意見だった。
「なるほどねー」
「俺にはさっぱりだ」
夕食を終えのんびりとお茶を啜っていた晧が、おいていかれた顔で呟く。
陽の光を集めたような優しい瞳が、なんだか寂しげだ。
樒が晧の膝に手を乗せ、「仕方の無いことです」と宥める。
「目の見える、魔力を持たないお方には不要のものです。ましてや、そういった方々が自分に触れる他者の魔力の感触など、分からなくて当然」
「ちょっと待って」
桃糸は片手を上げて樒の言葉を遮った。
「自分に触れる他人の魔力の感触って明確に分かるもんなの?」
「おや、気付いていらっしゃると思ったのに」
問われた樒はえくぼを浮かべて笑う。
「旦那様はこの国にいらしてから、頭痛や気分の重さを感じていらしたでしょう?」
茶菓子を机に並べてくれた。色鮮やかな砂糖菓子だ。
「おそらくそれは、他人の魔力が自分に触れていく感触に慣れず、不快だったのでしょう」
明日、町に出て試してみては、と榊がくすりと笑う。
「そうだね、面白そう。
ふと気付く。自分の魔力の広げ方は、「内側まで探るようだ」と榊は言わなかったか。
魔力の感触に
「あー、えー……。なんか、ごめんね」
首元まで赤くなり思わず謝罪する桃糸に、双子は「お気になさらず」と愛らしい笑い声を響かせた。
「ほえー、めっちゃ綺麗じゃーん」
翌日、
自分を不快にさせていたものが他人の魔力だと分かれば対処できる。
周囲に広げる魔力の一部を体に
(触れるように広げる。探らない、探らない……)
注意深く魔力を広げ、周囲の様子を読み取っていく。
国を貫く通りの広さは、人が10人は並んで歩いても余裕があるだろうか。左右にはたくさんの店が軒を連ね、朝の光の中で開店準備に忙しそうだ。
店の奥が住居になっているらしく、寝惚け眼の
「すっごいねー。色がたくさんある!」
「それがこの国の特徴だからな」
盲目になってから
立っている大通りは、茶を基調として少しずつ色合いの違う焼き石が丁寧に敷き詰められている。
商店の壁も一軒一軒色が違い、暖色も寒色も関係なく並んでいる。
そして最も目を引いたのは屋根だ。
気候が落ち着いている蒼螺国の家はみな四角い形をしていて、屋根の傾斜も緩やか。その屋根を色とりどりの瓦が覆っていた。
「上から見たらきらきらしてそうだねー」
「そうだなぁ」
焼き上げる時に特殊な薬を使うことで、蒼螺国の瓦は一枚とて同じものがないという。
太陽の向きによって表情を変えるその景色は、さぞ美しかろう。
「上から見てみたいなぁ」
桃糸が悪戯な視線で晧と
「おいおい、無茶を言わんでくれよ」
「えー。行商人ですぅって言っても駄目かなー?」
「俺を蒼螺宮とやり取りできる程の商人だと思ってるなら、買い被りすぎだ」
「ちぇー」
宮殿は小高い丘の上にあった。
高い塔を中心にして、白い大きな鳥が羽を休めるようにして左右に広がっている。
塔の一番てっぺんには鐘が据えられており、これが鳴ることで国民に時を知らせた。
「あ」
見上げているうちに、かーんかーんと高い音で鐘が鳴る。商店の開く時間だ。
蒼螺の人々は魔力で周囲の様子を知るが、それはあくまでも魔力の届く自分の周りのみ。人によって多少の範囲の違いはあれど、太陽の位置まで把握できる者はいない。
高い鐘の音2つが商店の開店を、1つが太陽が真上に来たことを知らせた。
低い、腹の底に響くごーんという音が2つで閉店を教え、そこからは夜の店の時間だ。
あちこちで元気な声が聞こえてきた。
待ち構えていたように、旅行者風の人々が通りに溢れ出す。
「すごいよなぁ、ほんとに」
魔力によって見ることを覚えた桃糸は、蒼螺の人々の多様さに驚きが止まらない。
人々は髪色はもちろん、肌の色も様々。
双子は暗緑色の髪に透けるような白い肌だった。晧のように日焼けした小麦色の肌の人、双子よりも白い肌の人。褐色の肌をしているのに髪は真っ白だったり、
色を見分ける旅行者たちだけが、そんな人々を物珍しそうに眺めている。
(このやり方で上手くいくといいけど)
桃糸は腰に下げていた、雫形の木の鈴を撫でる。
この魔力の使い方なら、自分たちの願いが叶うだろうか。ぼんやりと考えながら、通りをゆっくりと見回す。
「……ねぇ、
「ん?」
「あのお店かな」
「あぁ、みたいだな」
桃糸は双子に勧められた砂糖菓子をすっかり気に入っていた。
色によって、違う果実の甘い香りがする菓子は、お湯に溶いて飲むと美味しいのだと
「いくつ買おう……」
「残金を考えて買ってくれよ」
店の前に来ると、ほんのりと甘い香りがする。師が山で淹れてくれていたお茶のようで、桃糸はなんだか切なくなってしまう。
「いらっしゃいませ!」
そんな桃糸を明るく出迎えてくれたのは小柄な女性。濃紺の髪に浅黒い肌をしていて、瞳はやはり白く濁っている。
はきはきとした態度は働き者の女性という印象だ。
「こんにちは。ここのお菓子を知り合いに勧められて」
「おや、嬉しい。お客さん、旅行者さんでしょう」
「うん。僕、すっかりこのお菓子が気に入っちゃって……」
完全に目移りして「どうしよう」と悩む桃糸に、女性はからからと笑って小皿を出してくれた。
小皿には白、桃、黄の砂糖菓子が二つずつ乗っている。
「味見用だよ。割れているけど、味はたしかだから。食べながらのんびり選んでおくれ」
「ありがとう!いただきまーす」
小皿を喜んで受け取り、白く四角い菓子を口に放り込む。
果実の風味はない。上品な砂糖の甘さが口の中に広がり、塊がとろりと舌の上で溶けていく。
「うんまー」
相好を崩す桃糸に、女性も晧もくすりと微笑んだ。
「ほら、どうするんだ、桃糸」
「どーしよー。んー……全部?」
「馬鹿か」
「えー」
あれもこれもと悩んでいると、店の奥から軽い足音が近付いてくるのに気付いた。
顔を向けると、ちょうど子どもが一人やってきたところで、女性を「母さん」と呼んで手招きしている。
呼ばれた女性は子どもの頭を撫でてから、すぐに行くから奥へ行っているように話していた。
微笑んで見ていた晧だったが、子どもの顔を見ると何かを思い出したように声をかけた。
「君、この前の」
子どもは驚いて顔をこちらに向ける。
女性と同じ濃紺の髪、肌は白い砂糖菓子の色。そして瞳は
「え」
見えるようになった桃糸も気付く。
「あんた、またなんかやったの!?」
女性が子どもの頭をこつんと小突いた。
「
子どもは訳が分からないという顔をしている。
「……いえ、通りでぶつかっただけですよ」
晧は人好きのする笑顔を浮かべて続ける。
「ぼうっと突っ立っていたこちらが悪いので」
気にしなくていいと言う晧に、女性はすいませんと眉を下げた。
「ほら、お前もちゃんと謝りな」
母親に背中を押され、子どもはもごもごと謝罪の言葉を口にする。
晧は手を伸ばし、子どもの頭に触れた。
子どもは一瞬びくりと肩を揺らしたが、そのまま大人しく撫でられた。
「こっちこそ、ごめんな」
本当に申し訳ないと、女性から砂糖菓子の詰め合わせを二つ渡された。
「なんだか返って申し訳ない」
恐縮する晧に女性はからりと笑った。
「旅行者さんに迷惑はかけられないからね。……そうだ、お二人は、丘には登ってみたのかい?」
「丘って、宮殿の?」
きょとんと問う桃糸。晧も首を傾げる。
「宮殿には入れないけど、途中に見晴らし台があるんだよ。今日は天気もいいみたいだし、行ってみたら?」
仕事として来ることが多い晧は、観光となると詳しくない。地元の人のお勧めなら、と、二人は笑顔で頷いた。
(続)
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