第7話
「やぁ今日も勉強頑張ってるね。気がついてたんだけど声をかけ損ねたよ」
嫌味のない声でサラッと彼は答える。
「今日も来てたんだね」
彼の声に反応せず隣の彼女に目をやる私に気がついたのだろう彼女について紹介をではないな・・・彼の場合、説明を始める。
「いつも僕が座ってる席に彼女がいて場所を君のいた自習スペースにしようとも思ったらそっちもいっぱいだったんだ。だからここに座ったんだよ。そしたら問題に悩んでるみたいだったから声をかけたんだ。だから会うのは初めて、いや、初めてでは無いかも知れないね。正しくはお話するのは初めてと言い直すべきかな?」
なんだか彼の彼女でも無いのに浮気現場で彼氏を問い詰めている私。の様な構図になっている気がして言い返すことを忘れそうになったがそこは気合いと根性である。必要ないだろうが。
「別に説明は求めてないわよ。ただ普通、座るなら反対側に座らないのかな?そうじゃ無いなら初めから知り合いだったのかなって思っただけよ」
「言われてみればそうだね。考えもしなかった。というより反対側まで周るのが面倒だった。それにもしかするとこの子は前に人がいると気が散るタイプかも知れないしね」
私たちの攻防を彼氏彼女の痴話喧嘩と受け取ったのかどうかは分からないが女の子が割って入る。
「本当に何も無いんです。確かに最初はいきなり横に座ってきて変な人だなって思ったんですけど私のことなんて全く気にせず勉強をし始めてむしろ私の方が気が散ってしまって、問題に集中できなくなってそしたら吉野さんが声をかけてくれて」
この子は何も悪くない。やはりこの男が変なのだ。というかこいつの名前、吉野だったのか。初めて知った。
「で、吉野くんは結論として変人だけど勉強はできるからこの可愛い中学生に勉強を教えてたと。そして私は彼と会うのは2回目、それも名前は今、あなたから聞いたから安心していいわよ」
「そっか。そういえば僕も君の名前知らないや」
つかみどころの無いうなぎの様な男だ。こういう奴が大学であっちこっちに手を出して刺されるに違いない。勝手な失礼な妄想をしながら、ただ未来に本当に起きそうな気がしながら私の名前を名乗る。
「私は明石よ。明石京」
「私は堺湊です。一文字の方の・・・」
彼女が小さな声で名前を名乗った。
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