第6話
次の日、私は昨日とは違う気分で昨日の図書館へ向かった。
特に約束をした訳では無いが何故だか彼がいる様な気がして昨日と同じ席を探す。残念ながらそこには中学生ぐらいの女の子がテスト勉強だろうか?黙々と励んでいるところだった。
隣に座ろうかとも思ったが集中しているところに態々、他の席で無くこの子の隣に座るのは申し訳ないと思い違う席を探す。
壁際にパーティションとライトがついているほぼ自習用として開放しているスペースが比較的空いている。と言うより一番奥の席で調べ物をしているであろう老人以外には10席ほどのスペースには見当たらない。大体は余裕のある子や付き合いで離れられない子たちはここ以外で友人と勉強していたり本気の子は予備校の自習室を使っている。かく言う私も地元の焼酎規模とはいえそれなりの実績と設備を揃えた予備校に通わせて貰っているので自習室を使うことは可能なのだがやはりまだ、1日では気が向かない。
その点、ここはいい。ちょうど良い静けさと余裕が心に落ち着きを与えてくれる。昨日は少し違う落ち着きだったが。あれを落ち着きと解釈すると人にはおかしな考えだと思われるだろう。しかし私にとってあれは落ち着きだ。それでいい。
ひとまず席を確保とは言っても選び放題なので調べ物をしている老人の邪魔にならない様反対側の一番奥にカバンを下ろし、中身を出す。まずは英語からだ。
間違えない様にと何度も模試の前に何度も復習したくたびれ切った問題集を引っ張り出しノートとペンと一緒に並べる。なんと無くだが私は部屋は汚いが机は綺麗で無いと集中できない気がする。そのせいなのか私の部屋は机以外は人に見せられない。机の上は何も無さすぎて勉強をしていないかに思われるのでなんとも言えないのだが。
それはさておき擦り切れた英語の問題集にはよく間違える点に付箋が貼ってある。今回はそこの問題が出ず普段なら間違えないところで間違えたことを思うとこの付箋に意味はあったのだろうかと考えてしまう。
まぁ終わったことは仕方がない。これが本番でなかっただけマシだと考えよう。昨日もお風呂で、寝る前に、家を出た時も、そう考えながら自分を慰める。
一つのルーティンが出来上がった様に目の前の問題に集中する。確かに解けている。苦手な問題も残ってはいるものの付箋の数が少しずつこの問題集を購入したときよりも減って来ていると思った。
一時間ほど集中して少し背伸びでもするかと顔を上げると気がつけば自習スペースは人で埋まっていた。だがその中にも彼はいなかった。そういてば名前を聞くことも私の名前を伝えることもしなかったことに今、気が付く。一期一会、そんな日もありますかそう思い気持ちを切り替えて別の科目を取り出す。どうにも私は同じことをし続けることが苦手な様で勉強をする時は一時間から持って二時間ごとに科目を変える、それも全く違うジャンルのものにだ。
今日、持って来たのは苦手な化学の問題種だ。こればかりはいつも点数が低く、付箋の数が減らない。受けるのが文系でしょ?と簡単に友達は言うけれど金銭面を考えれば私学は難しいのではと勝手に子供が親を心配している。親は親で気にするなといってはくれているがせっかくなら自分の限界を試してみたいと言う気持ちから地元の国立を第一志望にあげ結果、模試はあの様だ。
情けないなと思いながら必要なものだけ机の上に置き少しストレッチ代わりに周りを見渡す。すると私が来た時に勉強していた女の子の隣に彼を見つけた。
あの机は四人がけになっており中学生の反対側の席は誰もいない。つまり彼はわざわざ彼女の席の隣に座った訳だ。こいつは怪しいと勝手に思いながら見ているとどうも二人は顔見知りの様だ。何かを話している。じっとその様子を観察していると向こうも流石に視線を感じたのか手招きしてくる。
仕方がない、机に広げた問題集やペンをカバンに押し込み彼と彼女の座る席へ向かう。私がいなくなるのを待っていた様に別の人がさっきまで私の座っていた席で本を広げ出してしまった為、戻ると言う選択肢は無くなってしまった。後ある選択肢は「帰る」だけだ。でも癪なのでその選択肢は除外だ。乱暴に詰め込んだカバンを抱え彼の正面の席に座った。
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