第5話 お兄ちゃんは渡さないっ! 3
「ベル、私…解放する」
『ダ…ダメよっ、解放は反動が強すぎて、ハルカの身体では耐えられないっ』
焦ったようなベルの叫びが、ハルカの頭の奥にキンと響いた。
「それは分かってる…だけどっっ」
『…リスクを背負わずに、勝てる相手ではないか』
「うん…」
ベルとハルカは思い出す。
ルーとの初戦は、ハルカの惨敗であった。
追い詰められたハルカに更に追い討ちをかけるように、ミサがトラ系統の魔法生物を呼び出した。
しかしそれが気に入らなかったのか、ルーはひとり退散してしまう。
その後ハルカは、魔法生物を相手に何とか勝利を収めることが出来たのだ。
『…分かった、だけど使うのは二葉までよ。それ以上は絶対ダメ!』
以前は使おうと思っただけで、その反動の強さにハルカは耐えられなかった。言われなくても充分に分かってる。
「大丈夫、無茶はしないよ」
ハルカは力強く頷いた。
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「何かするつもりですね、いーですよ」
ルーが余裕の笑みを見せる。
「ルリちゃん、これはお兄ちゃんを
ハルカは魔法杖を両手で中段に構えると、両足を開いて全身で踏ん張った。
「光玉解放っ!二葉っ!!」
ハルカの声に呼応し、魔法杖の先端にある青水晶から光が溢れ、光り輝く2枚のクローバーの葉っぱが発現する。
「マ…マジカルハンマーーっ!!」
ハルカは全身に駆け巡る激しい反動を気合いで堪えると、声を限りに叫んだ。
その瞬間、二葉の上方に白銀に輝く巨大な金槌が創り出された。それからその側面に、金色に輝く文字で「100t」と刻まれていく。
「スゴい魔力ですね」
ルーは驚いたように目を丸くした。
「ですが、私には届きません」
そう言って「フッ」と微笑むと、左手を前に突き出した。すると2メートル以上はありそうな、大きな魔法陣が描き出される。
ルーはそのまま右足を後ろに引くと、半身になって右正拳突きの構えをとった。
ハルカは両手で構えた魔法杖を、まるで釣竿のように右肩越しに振りかぶる。同時にショートブーツの小さな白い翼が、勢いよくシュンと伸びた。
「やあぁぁあああーー!」
それから気合いと共に駆け出した。まさに疾風と表現するに相応しい。
「いっっけーーぇ!!」
ハルカは途中で跳ね上がると、ルーを目掛けてマジカルハンマーを振り下ろした。
「暴乱の大鷲っ!」
ルーは鋭く呪文を唱えると、魔法陣越しに、ハルカを目掛けて正拳突きを繰り出した。
その瞬間、
必殺魔法同士の真っ向勝負である。
しかし徐々に、ハルカのマジカルハンマーが押し戻され始めた。
「うう…うっ」
ハルカは唇を噛みしめる。
「うわぁぁああーーっ、み…三ツ葉ぁー!!」
『ハルカっ!?』
ベルの焦った声が響くが、ハルカの声に反応した青水晶が3枚目の光る葉っぱを開かせた。
白銀の金槌の表示が「1000t」と、金色の文字で書き換えられていった。
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