第2章 私とカラオケとマイナスイオン


学校が終わったと同時に友達にカラオケに誘われた

カラオケはまぁ苦手ではないが今日はクラス委員の発表原稿やらを考える予定だったのでめんどくさいしもう1人の岸野君に任せることにする。

岸野君はすごくいい人で文句の1つも言わずに引き受けてくれた。いい人は骨の髄までいい人なんだろうな

わたしはそんなことはない。いや、いい人って定義なんて無いし他の人から見ないとわかんないんだろうな。

なんて思いながら友達と駅まで向かう。

電車は割とすぐに来る。わたしの住んでいる場所は自分で言うのはなんだがそこそこ都会だ。

電車に揺られながらみんなスマホ片手に他愛のない話をする。


「あの人彼女出来たらしいよ〜」

「へぇ〜そうなんだ〜意外だね」と笑いながら答える。

本当は何も面白くもないくせに

別にあの人に彼女が出来ようが彼氏が出来ようが子供が出来ようが所詮他人だ。

だから彼氏出来ないんだろうな〜って考えたり…

彼氏持ちは高校においてはステータスに過ぎない

彼氏を持っているからあの子はイケているという証明にもなりうる

彼氏なんていなくても生きていけるのにみんなは彼氏を欲しがる。その理由がそこにあるとわたしは考える

そうこうするうちに電車が駅に着いた。電車から溢れ出る有象無象の中に紛れながらわたしたちははじき出されていく。改札を通り、自販機で天然水を買う。ジュースは糖分が多く太りやすいと聞くので天然水を最近は買うようにしている。これが例えキンキンに冷えた蛇口の水でも誰も文句を言わないんだろうなぁ。大抵の人は本当に天然の水なんて飲んだことない。そんな冷たい水を喉に流し込む。自分の体が浄化されていくのを感じる。

徒歩数分の所にそのカラオケのチェーン店はある。

「何名様ですか?」

5名様だ見りゃ分かる。

「ドリンクバーはお付けしますか?」

あんたは2時間ワンドリンクで過ごせと言うのか、笑えてくる。

「クーポンは使いますか?」

使わないから出してないんだよ!

「よろしければ当店の会員登録をお願いします」

毎回毎回うるせぇな…

なんていちいち店員にケチをつける自分にも嫌気がさしてくる。

指定された部屋に入り一息つく…と思ったが今流行っている盛り上がる系の曲を最初に選び、みんな自由に喚き散らかすためわたしも混ざらなきゃいけない…まぁこういう時がカラオケのピークだ。

1曲目が終わり

「1人1曲ずつね〜!」

とある子が言う。


うわ出た

歌いたくない子もいるはずなのに…なんて思うがこのグループにはそういう子は居ないので誰も文句はない。

わたしの番が来た、とりあえずみんなが知っていて少しマイナーな曲を選ぶ。他に好きな歌手はいるが絶対みんな分からず盛り上がれないなんてことは避けたいからこの曲を選ぶ。

いつの間に頼んでいたポテトが運ばれてきていたので機械的に口に運ぶ

素直にサクサクしてておいしい…

絶妙な塩っけがちょうどよくつい手が止まらなくなってしまう。ちょうど飲んでいたメロンソーダが無くなっていたことに気づいたのでドリンクバーに行く。

友達の1人が着いてくる。女子はこういう生き物だ。

同じメロンソーダを注ぎ帰ろうとするとその友達はジュースを順番に注いでいく。

「うわ、やめなよ」

「これ罰ゲームにしよっかなって!」

彼女曰く次の一巡で1番点が低かった人が飲むらしい。


なんとも彼女らしい


わたしたちは自分の部屋に戻る。すると案の定

「うわ!何それ〜」

「やめなよ〜」

なんて笑いながら言ってくる

何が面白いんだろう。

そして順番に1曲ずつ歌っていく

さすがにあれを飲みたくはないので私が1番得意な曲にする

5人中3番目だ


微妙…


まぁ飲まないことに越したことはないのでホッと息を着く

誰が飲むことになったのかと言うと、

ジュースを注いできた彼女だ。

自業自得だ

これにはわたしも笑みがこぼれてしまう。

渋い顔をしながらイッキしていく彼女を横目にわたしはスマホをいじり出す。

スマホ依存症なんて言葉があるが断じて私は違う。

あの子たちみたいに常に触っている訳では無いしこうして暇になったら触っているだけだ。

そうこうするうちに2時間程が過ぎ、そろそろお開きになる。


時間も7時


いい頃合いだ


わたしたちは駅にまた向かう。

少し肌寒くなってきた

そうしてわたしたちは四角い箱の群れの中を歩く


密集した密室から解放されて空気が美味しく感じる

わたしたちはこんな空気の中を過ごす

決して澄んではなく少し澱んでいる空気の中を過ごす。

決してマイナスイオンではないが確かに透明感を感じる

そんな空気の中をわたしたちは過ごす

自宅に戻り母に晩御飯を断りながら自室に戻る。

母にはLINEを忘れ申し訳ないことをしたななんて思いながら猫が戯れる動画を見る

こうしてベッドの上でわたしはまどろんでいく。

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