螺旋状の微睡

澄岡京樹

螺旋状の微睡

螺旋状の微睡


 安楽椅子は暖炉前。私はそこに座ってる。

 ゆらゆらゆらゆら揺れる椅子。私はそこで微睡むの。

 外では雨がシトシトと。冷たく地面を濡らします。

 私は部屋でウトウトと。眠さで目蓋を落とします。

 揺れる椅子の浮遊感。そこはかとなく安らぐの。

 微笑む貴女はそこにいて、私はそれにも安らぐの。


 うつらうつらと夢の中。それはほんとに夢の中?

 私の意志とは無関係。私は貴女を見つめるの。

 夢か現かおぼろげで。それでも貴女は囁くの。

 それはどちらも本物で。超克するため絡まると。

 反転していくゆめうつつ。そうこうする間に夢の中。

 曇天模様は何処へやら、そこには綺麗な海景色。


 こちらは夢かと問いかける。そうではないと貴女は言う。

 夢と現は溶け合って、どちらも同じと呟くの。

 それは変だと咎めるも、異常はないと貴女は言う。

 世界の境は混ざり合い、現実電子はひとつだと。

 既にここは現実で、虚構はどこにも在りはしない。

 それは何故かと訊ねるが、そう言うものだと返すのみ。

 

 どうしたものかと小一時間。考え続けていく数日。

 世界は既に混ざり合い、電子も虚構も在りはせぬ。

 愚図な私も理解して、電子の海で囁くの。

 世界は既に、狂ってる。褒め言葉ではありません。

 褒めに使う、事もある。だけどそれは他の事例。

 私は窓から外を見て、数字だらけの空を見る。


 世界は既に電脳化。奇怪は既に制御の

 この世の神秘は海に溶け、そもそも海は電子虚構。

 データの海で泳いだら、たちまち体は情報化。

 そこそこ世界を回ったが、あちこちあらかた電脳化。

 私はここで何をする。貴女は笑顔でこう言った。

 微睡の果てに混ざるなら、反転させては如何でしょう。


 微睡の対は眠りのつい。ならば私は頬つねる。

 痛みはないとふと気づき、ここは夢だと暴きます。

 夢とされた虚構世界、現は形を取り戻す。

 さあ目覚めましょう痛みと共に。痛みは生の欠片です。

 螺旋状のゆめうつつ、元の形に戻りましょう。

 世界を二つに戻しましょう。



 安楽椅子は暖炉前。私はそこに座ってる。

 ゆらゆらゆらゆら揺れる椅子。私はそこで目を覚ます。

 外では雨がシトシトと。冷たく地面を濡らします。

 私は部屋でもぞもぞと。気合いで目蓋を開きます。

 揺れる椅子を足で止め、そこはかとなく安らぐの。

 微笑む貴女はそこにいて、夢の中身を訊いてきた。


 私は笑顔でこう言った。

 海では浮くより泳ぎたい。


螺旋状の微睡、了。

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螺旋状の微睡 澄岡京樹 @TapiokanotC

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