気づいたら、宇宙
ドターン!
「いったた……ここは?」
床に強かに体を打ち付けたが、何とか生きている。辺りを見渡すと、先程までとは全く別な空間であった。
鉄板だらけの無機質な通路だろうか、やたら多い手すり、そしてやたらと忙しない空気。まるでSF映画で良く出てくる宇宙船の中のようである。
と、怒声が飛び込んできた!
「敵襲ぅ!!」
あまりの大きさに、竦み上がる。間もなく銃撃戦の音が、そして悲鳴がそこかしこから聞こえ始める!!
こ、ここは戦場か!?
戦場など当然来た事がない。が、この空気が異常な事ははっきりと分かる。
ここにいたら殺される!
俺の直感がそう叫んでいた。
俺はその場にあったスマホだけを握りしめ、怒声が聞こえてきた方とは逆の通路へ走り出した!
長い長い通路をあてどなく走る途中、窓があったのだが、それを見て俺は愕然とした。見た事もない色の星が、宇宙に浮かんでいる。わーきれー!とか言ってる場合じゃない。ここは本当に宇宙空間なのか!?
一体何がどうしてこうなった!
「きゃっ!」「わっ!」
通路の曲がり角、出鼻で俺は人とぶつかってしまった! 柔らかな感触、一瞬だけふわりといい匂い。
お互いに尻餅をついて、相手を見る。戦場に似つかわしくない女の子である。服装は不思議な物で、宇宙空間とは思えないくらい露出の多い格好であり、スカートがひらひらとしてその下まで見えそうなほどである。本当に彼女はここに何をしに来ているのか察する事さえできなかった。
「敵!?」
女の子はすかさず銃を俺に構える!
「違う! 敵じゃない! 丸腰だ!」
俺は両手を挙げて敵意がない事を示す。女の子は疑いの眼差しであったが、やがて銃を下ろした。
「どうやらそうみたいね。あなた、まるで気迫がないもの。ここは一般人がいていい場所じゃないわ! 早くどっかに逃げなさい!」
駆け出す女の子! しかしその手にはうっかり握りしめてしまったのか、俺が先程ぶつかった衝撃で落としてしまったスマホが!
「ちょちょ! スマホ! 返して!」
俺も慌てて駆け出す。それに気付いた女の子は、キッと俺を睨みつける。
「何!? やっぱり敵!? これでも立て込んでるんだけど!?」
「そうじゃない! 俺の物を返してくれないか!?」
ここがどこかは分からない。だから、元の場所との繋がりがあるスマホだけは手放せないんだ!
「えぇい、問答無用!」
バキューン!
女の子は容赦なく撃ってきた! マジか!
「スマホ! 返してくれ!」
「うるさーい!」
バキューン! バキューン!
乱射される彼女の弾の一つが、俺目がけて飛んでくる。
スローモーションで、くるくると回転した弾丸が、俺の心臓目がけて飛んでくる。俺はそれに対して、動く事もできず、ただ認識して、当たるのを待つしか出来ない。
あ、死ぬわこれ。やだなぁ。痛いのかなぁ。死にたく無いなぁ。俺はまだ、何もしてないのに。セックスだって、まだなのに。
と、女の子の手元にあったスマホがまた光り出す!
「キャッ、何?!」
「う、嫌な予感」
予感は的中し、俺はまたそのスマホの画面に吸い込まれていったのだった……
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