この部屋からは抜け出せない!

黒井羊太

この部屋は何なんだ!?

『セックスしないと出られない部屋』

 部屋の一つしかない扉の上に、デカデカとそう書かれていた。

「冗談だろ……」

 ネット上ではよく見かける、ジョークのような部屋である。しかしこうして今現実に俺の目の前に存在しているらしい。

「セッ……っておい……」

 俺が絶望している理由は、俺がこれまでセックスをした事がないからではない。

「ここには俺一人しかいないんだけど……」

 一人ではセックスはできない。これは至極当然の事である。


「どうすんだよ、おい!」

 周囲を見渡す。普通、こういう部屋の指定があると、部屋にはなにもないものだが、ここは物がありすぎた。ゴミゴミとして、本やらゴミが一杯だった。

 とはいえラブドールの類もないし、そもそもあったところでそれはセックスにカウントされるのか謎であった。

「あー、部屋から出られん。どうすりゃいいんだ……」

 そもそもここにいる理由だってよく分かっていない。ここがどこかも分かっていない。更に普通に生活していたって、どうやったらセックスまで至れるのか、童貞の俺には皆目検討もつかなかった。

 セックスする為には女の子をここに呼ばねばならない。だがそんな女の子は知らないし、よしんば呼べても事に至れるとは思えない。

万一、万一男友達を呼んで、そいつが来てくれたとして、男二人になって出られなくなってしまったらその先には地獄しかない。

 どうすればいいんだ……と頭を抱えていると、部屋の片隅に転がっていたスマホの明かりが点いた。通知などではない、部屋中を照らし出す程の強烈な光だ!

「!?」

 そちらを見遣るが早いか、俺はスマホの画面に吸い込まれていた……


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