第3話 オリエンテーション
紗理奈side
ガラガラッ…
教室のドアが開き1人の先生が入ってきた。
まだ結構若い先生で体育教師ってイメージの先生だ。
「全員席についているな、2組の皆さん入学おめでとうございます!今日からこのクラスのを受け持つことになった今野英祐(こんのえいすけ)だ、みんなよろしくな!」
そう先生は明るく挨拶をした。
(先生結構当たりかも!若くて結構顔も整っているし!)
なんて私は思ってしまった。
すると前の席のなぎさが振り返り「先生結構イケてない!?当たりだよ!」っとこっそり声をかけてくる。
(まさかの思っていること一緒だったー。w)
「早速だがこの後すぐに先輩たちと新入生歓迎オリエンテーションが体育館である。なので出席番号順に廊下に並んでくれ、体育館入場の時もその並びで入るからな!それとオリエンテーションが終わって教室に帰ってきたらHRをする。その時に先生から色々説明したり係とか決めないといけないことを決めたりもするがその後に自己紹介もしようと思うから各自何か言うこと考えておくようにな!w」
(うわぁ…。まぁそういうのって入学したばっかりの時って絶対あるけど私苦手なんだよね。1人で立って喋るとか声震えちゃう。)
先生の指示で教室にいる生徒が一斉に廊下に移動を開始する。
みんな嫌なのか所々で愚痴だったり相談だったりしている声が聞こえる。
(私もさっさと移動しよっと。)
教室から出ると他の教室からもゾロゾロと生徒が出てきていた。
(優ちゃん見えるかなぁなんてねw)
そう思い何となく隣のクラスに視線を向けるとちょうど優ちゃんも教室から出てきたところだった。
(あっ優ちゃん!なんだかんだ今日私結構運良くない!?)
そんなことを思っていると優ちゃんと目があった。
目が合うと優ちゃんは私に優しく微笑み小さく手を振ってくれた。
(ホント天使。可愛すぎでしょ!)
大きく手を振り返したい気持ちを抑えて満面の笑みで小さく優ちゃんに手を振り返す。
(よし!頑張ろう!)なんか自然とそう思えた。
一斉に体育館に移動する。
人数多くてとても密度が高い。入りきらなくて始まるまで外で待機。
(まだ4月だから少し肌寒いなぁ)
制服を少し大きめに買っておいて良かった。手を袖の中に隠す。
でも少し大き過ぎたかな?スカートとか膝下だしw
よくよく考えればそんな高校生になってから成長ってしないよねw
パーッ!
突然吹奏楽部の演奏が聞こえてきた。
(あっ始まるのかな?)
少しずつ列も動き出した。話し声もピタリと止み、少し緊張感が漂っている。
私の入場の番も近づいてきた。徐々に吹奏楽の演奏の音も大きく聞こえてくるようになる。
(なんか私も緊張してきたなぁ…)
ついに順番。勇気を出して体育館に足を踏み入れる。
体育館の入り口を潜り抜けると一気に眩しい光が広がった。
体育館の中では2,3年の先輩たちが振り返りながら私たち1年生の方を見ている。
(こうやって見られながら入場って苦手だぁ。)
少し足を震わせながら俯いて入場する。
自分の入場が終わっても1年生全員の入場が終わるまで座れない。
(まだかなぁ。足の震えがw)
そんなことを考えながらしばらく耐えていると吹奏楽の演奏が止まった。
そして、「全校生、起立!」と進行役の生徒会役員の人の声が聞こえた。
「今から新入生と在校生の交流オリエンテーションを始めます。全校生、礼」
体育館にいる全員が一礼する。この時に遅れたりするとすごく恥ずかしいよねw
「着席」
放送の合図で全員が着席する。
(やっと座れるー。やったー。)
「校長先生から……(以下略)」
その後、式は続いた。
…
「新入生代表より挨拶があります。」
ボーッとしていて気がついたらかなり式が進んでいたようだ。
(もうこんなに進んでたんだ。ボーッとし過ぎたw そういえば新入生代表挨拶って入試で1位の人が担当するんだよね。誰なんだろう?)
見渡しているとどこからか返事が聞こえ見覚えのある男の子が立ち上がった。
(えっ!?あの子隣の席の無愛想な男の子だ!頭いいんだぁ。でも納得かもしれないと思うのは偏見かなw)
「本日は私たち新入生のためにこのような素晴らしい式を…(以下略)」
男の子はすごく綺麗な声でスラスラと新入生代表挨拶をこなしていた。
改めて聞くと本当にいい声をしている。世の中で言う「イケボ」と言う分類に絶対に入るほどの声の持ち主だと思う。
如何せん見た目があれだから宝の持ち腐れじゃないかと思ってしまう。
(なんかすごい子だなぁ。)
私は素直にそう思った。
志龍side
(こう見ると世の中平和だな)
俺は窓の外を眺めながらそう思った。
ガラガラッ…教室のドアが開いた。
この学級の教師だろう。明るい声が教室に響く。
俺は全く興味がない。何か話しているが構わず窓の外を眺め続ける。
(早く卒業してぇ)
入学早々に思うことではないだろうな。でも俺は高校生活なんかどうでもいい。早く時が進めばいい。
そんなことを考えているとクラス内の人間が全員動き出した。
(移動か、だりぃな)
そう思いつつ重い腰を上げ移動を始める。
教卓に近づいた時だった。
「あっ荒川」教師に声をかけられた。
「はい、何ですか」
(早く終わらせてくんねーかな)
「言い忘れてたんだけどな、お前入試1位だから今からある新入生歓迎オリエンテーションの新入生代表挨拶よろしく頼むな!言い忘れててすまんなw」
「は?」
急すぎて素で声が出てしまった。教師も一瞬目を丸くした気がした。
(すまんじゃねーだろ、ふざけんなよ。何で俺がそんな面倒なことしなきゃなんねーだよ、しかも全校生徒の前とか目立つし)
「まぁお前なら大丈夫だよ、頑張れ!」っと笑顔で肩を叩いてきた。
(何を根拠に言ってんだよ、クソ教師)
俺は何も返事せずその場を去った。
体育館では入場を控えた新入生で密集していた。
ガヤガヤと色んな人が話している声でうるさい。
さっきの教師のこともあって俺は少しイラついていた。
(何も考えず無心でいるのが1番だよな。)
そう思い俯き目を閉じて時を待った。
しばらくして吹奏楽の音が聞こえてきた。そしてさっきのうるささが嘘であったかのように静まった。
(やっとか)
俺も目を開け顔を上げる。少し周りを見渡すと翔と目が合った。
そして、俺に向かってウインクをして合図を送ってきた。
すると周りにいた女が少し騒ぎ出し、合図を送ったのは誰なのかと視線の先の主を探すように俺の方を覗いていた。
(野郎にウインクされても気持ちわりーだけだろ)
そう心の中でぼやきつつ、合図を送った主を俺だと気づかれないように視線を逸らした。
入場が始まった。
何を緊張することがあるのか知らねーが周りの奴らの緊張感がひしひしと伝わってきた。
そんな中で俺は、だるいと思いつつも挨拶の言葉をどうするか考えていた。
俺の入場の番も近づいてきた。
(進むか。)
体育館に足を踏み入れる。体育館の真ん中には綺麗に赤い絨毯が敷かれていた。
(眩しっ)
俺は、体育館のライトの明るさに思わず目を細める。
歩いていると時々2,3年の先輩の視線が刺さる。
俺はそんなことでさえだるいと思ってしまう。
入場が終わると全員が入場し終わるまで立ったまま待つ。
来人や翔、俺の仲間・ダチたちも全員入場してきた。
あいつらは全員顔がいい。案の定入学早々騒がれていた。
(ご愁傷様)
そう心の中で呟いた。
俺はそういうのごめんだ。中学で散々思い知らされた。
一瞬だけ中学の時の記憶がフラッシュバックし、少し長めの瞬きをした。
新入生の入場が終わりオリエンテーションが始まった。
生徒会の人間だと思われる先輩が司会進行を務めどんどん式を進めていく。
校長挨拶、先輩からの歓迎の言葉など次々と項目が終わり、とうとう新入生代表挨拶が回ってきた。
「新入生代表より挨拶があります。新入生代表、荒川志龍。」
俺の名前が呼ばれた。先生の冗談だったのではないか何かの間違いだったのではないかと現実逃避をしていた俺の考えが打ち砕かれた。
「はい」
返事をして重い腰を上げる。列の横を通り過ぎマイクの前に立つ。
一礼をして一歩前に出ると視線を全校生徒に向けた。
全員の視線が俺に集まっている。その視線の中で目立っている俺の仲間たちがにやついているのが見える。
(あいつら後で覚えとけよ)
心の中で毒を吐きつつ俺は代表挨拶を始めた。
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