第2話 教室

紗理奈side


「じゃあ紗理奈、また後でね」

「優ちゃ〜ん。後でね。」

ショック。優ちゃんとはクラスが離れてしまった。優ちゃんは3組、私は2組だ。

一緒な高校に受かったそれだけでも奇跡なんだし、クラスも同じだなんてそんな上手くはいかないよね。

「休み時間には遊びに来るし元気出して!」

「うん、お昼ご飯一緒に食べようね」

「うん、食べよ食べよ!」


ガラガラガラッ

教室に入ると同じ中学校同士で席が近い子たちは一緒に話しているけどそれ以外の人たちは静かに座っているという何とも微妙な空気が漂っていた。

(なんか気まずいなぁ…。初日だし仕方ないよね。席順は黒板に張り出しているみたいだし早く確認して座っちゃおう。)

そう思い私は黒板に自分の席を確認しに行く。

(席は名前順かぁ。あっ私の名前あった!ラッキー1番後ろの席だ!)

私の席は窓際とはいかなかったものの窓際から2番目の1番後ろの席だった。

私は念のためにもう一度席を確認してから自分の席に向かった。

隣の窓際の席の方は空席。もう片方はおさげ頭のいかにも勉強が出来そうな感じの女の子が座っていた。

(隣の窓側の席の子はまだ来ていないのかな。隣の女の子はなんか話しかけないでオーラが出ているから話しかけづらいなぁ。)

そう思っていたら前に座っていた女の子が振り返って話しかけてきた。

「やっと後ろの席の子きた、どんな子かドキドキしてたんだよね!私は霧島(きりしま)なぎさ、よろしくね!」

すっごく明るくクラスのリーダー的存在になるか体育会系かと思えるような女の子というのが初めて会った霧島なぎさの第一印象だ。

「私は栗本紗理奈、よ、よろしく。」

「私のことは気軽になぎさって呼んで!私は紗理奈って呼んでもいい?」

「う、うん。もちろん!」

中身を知らずにこういうこと決めるのって良くないってわかっているけどなんか苦手かもしれない。

「隣の席の人まだ来ないね。どんな人なんだろう、私イケメン希望!」

「どんな人なんだろうね。私は女の子だったら嬉しいな。」

「そっかぁ!女同士の方が話しやすいもんね!」

「う、うん!」

そう私が返事した矢先にガラガラッ…教室のドアが開いた。

入ってきたのは前髪がすごく長く顔が隠れてしまっている男の子だった。

「何あれ、いかにも陰キャって感じ?私無理だわw」そうなぎさが私に耳打ちしてきた。

男の子は黒板で席を確認すると私たちの方に歩いてきた。

(もしかして私の隣の窓側の席の人だったりして…)

私の予想はまさかの的中。男の子は私の隣の席に荷物を置いた。

(本当に隣の席だったんだ。この子もなんか話しかけるなオーラ出ているしこの席で話せるのはなぎさだけなのかなぁ…)

「何か用ですか?」

隣の男の子の声だった。

(やっば、私ってば見過ぎてた!?)

「いえ、何でもないです。ごめんなさい!」

「そう」

男の子は短くそう言うと席に座った。

(やらかしちゃった。でもなんかすごくいい声だった!この勢いでもしかしたら話せるようになるかも?挨拶くらいしてみようかな)

「あの…」

そう声をかけると男の子は何も言わず目線を私に向けた。「何?」とでも言いたそうな顔をしているが男の子は声を発しない。

「隣の席の栗本紗理奈です。よ、よろしく」

「あーはい。よろしくお願いします」

そう簡潔にそう言うと男の子は目線を窓の外に向けてしまった。

(あっはい。私との会話はそれで終わりってことね。勇気出したのに会話続かなかった…。てか名前くらい教えてくれても良くない!?)

そう思っているとまたなぎさが今度は小さな声で話しかけてきた。

「あんな陰キャで無愛想な奴になんかもう話しかけなくていいって、てか何あの態度、こっちは自己紹介してるのに向こうは名前さえも言わずに挨拶だけってなんかムカつかない?よろしくするつもりないみたいな?」

「せっかく隣の席になったんだし少し話しかけてみようかなって思っただけだよ。そりゃ予想外の反応ではあったけどね。」

無愛想。暗い。誰とも関わらず1人で居たいタイプ。私の隣の彼の第一印象はそんな感じのあまり良くない印象だった。

(私このクラスでうまくやっていけるかなぁ。)

何となく不安になった。



志龍side


俺は来人や翔。仲のメンバー全員とクラスが離れた。

俺からしたらとても都合がいい。これで静かな高校生活が送れるかも知れねー。

俺の高校生活での目標は目立つことなく平凡な高校生活を送ることだ。そのために俺は見た目を変えた。

アイツらのことを別に嫌っているわけじゃねー。むしろアイツらは小さい頃から仲がいい俺の大切なダチであり仲間だと思っている。

でも俺の目標を達成させるには良くも悪くも目立つアイツらとはなるべく学校で関わりたくねー。アイツらにもそう伝えてある。


ガラガラッ…。

教室のドアを開けるとクラスの奴らの視線が一気に集まり一瞬静まり返る。俺はこの瞬間が1番嫌いだ。

静まったのも一瞬のこと話していた奴らはまた話し始める。その中には俺を見てコソコソと話している奴らもいる。

まぁ予想していた通りの反応だ。だから別に気にもせず黒板の席順を確認する。

(俺の席は窓際の1番後ろの席か。すげー良いところじゃね?あんま目立たねーし。)

そんなことを思いながら自分の席に向かう。

向かっている途中。

なんかめっちゃ視線感じんだけど。俺の隣の席の女めっちゃ見てくんじゃん。

(はぁ…。)

心の中でため息をつきながら声をかける。

「何か用ですか?」

そう敬語で声をかけると女はやっと自分がガン見していたことに気がついたのか慌てた様子だ。

「いえ、何でもないです。ごめんなさい!」

(声でけーよ。視線が集まっただろうーが。)

それが嫌で俺は短く「そう」と言い放ち席に座った。

するとまた横の女が「あの…」と声をかけてきた。

(なるべく関わりたくねーんだけどな。)

そう思いつつ無視するわけにもいかず目線だけを女の方に向ける。

「隣の席の栗本紗理奈です。よ、よろしく」

そう女は自己紹介してきた。

(自己紹介されたところで俺は覚えるつもりねーよ。)

「あーはい。よろしくお願いします」

そう簡潔に言うともう話すつもりないという意思表示のように俺は窓の外に視線を向けた。

俺との会話が終わるとすぐさま隣の女の前に座っている女が振り返って話しかけている。見なくても視界に入るから分かっちまうんだよな。

しかもその女は内緒話が苦手なのか俺にほぼまる聞こえ。

(めんどくせーな。マジでそう思ってくれて構わねーからそのまま二度と話しかけてこないでくれ。)

そう心の中で言い放ち俺は机に腕を置き、その腕の中に顔をうずくまらせるようにして時を過ごすことにした。

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