サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました24

 いやいやこんな偏屈な考え方してたらいかんだろう。なんというか独身拗らせた叔父さんみたいな風になっちゃってもの悲しさすら感じる。さすが内面世界に幽閉されていただけの事はあるが、せっかく外に出たんだ。お前こそ趣味や趣向の一つでも見つけてその偏屈な思考を矯正すべきなんじゃないかね。人生において何ら拘りのない人間が「お前の道を歩め」なんて言ったって説得力なかろうよ。まずお前はどこを歩いてんだよ。Google earthすら届かないようなド辺境うろつきやがって。




「ぐーぐーぐー」




 そういや最近なんか説教臭いタイトルの小説が流行ってるな。”君たちはどう生きるか”だったか。うるせぇよって感じだよな! 知らねーよどう生きるかなんてよぉ! こうやって生きてんだよぉ! なんか偉そうに語りかけてきやがって何様だてめぇこら。どう生きようがこっちの勝手だろうがふざけやがってなんだてめぇ物知り風に突っかかってきやがってよぉ。“僕的にはこう考えてますけど、貴方はどう考えますか? おぉなるほどなるほど。いえ、なんでもありません。続けて”みたいな感じで上から目線を隠す事もなく人生観語ってきそうで腹立つんだよなぁ。意識高いインテリモドキを量産する悪書っぽい雰囲気ある。めちゃくちゃある。まぁ読んでないから完全に言いがかりなんだけどタイトルからしてそんな予感が伝わってくる。んなもの読むなら男塾読めや! 剣桃太郎カッコいいぞ!?




「むにゃぁ! むにゃぁ! むにゃぁ!」




 そうだ、後でピカ次君に男塾全巻を買ってやろう。きっとドはまりして赤石先輩辺りに感情移入しちゃうぞ。そうそう。そうだよ。こういう暗くて思考がひん曲がっちまった奴には漫画が一番なんだ。現実世界から束の間のエスケープ。労せずして認識をオフにできるお手軽ツールだ。普段なにかと深く考えがちなピカ次君にはピッタリの贈り物だろう。それにしてもそんな作品を描ける漫画家先生は凄い! だからみんなジャンプとか読んでる時に「んだよこの読み切りくそつまんねーじゃん。俺の方が上手いまであるわ」とか言わないようにしようね!




「あー! ぐーぐーむにゃむにゃぁ! むにゃむにゃぐーぐー! あー!」





「……」




「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにゃむにゃむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! にゃむらとほてっぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅそろそろ起きそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 起きそうそろそろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」




「……クリスタル」


「はぁ~い」


「ちょっとそこのファービーのパチモンみたいなゴミ排除してくんない? うるさくてしょうがない」


「粗大ごみを不法投棄するのはちょっと無理だね~。役所に電話して回収日決めてから出さないと~。あと~シール買わないと回収してくれないからね~」


「粗大ごみシールが近所のコンビニに売ってなかったとき俺は軽く殺意を覚えたよ。なんだよ“当店では取り扱っておりません”って。地域に密着しろよ」


「それはお店の都合だからピカ太さんが理不尽なだけだと思うなぁ~」


「一理ある」




 確かにムカつくがコンビニもやたらめったらサービス展開して大変だもんな。もはやライフラインになっちゃってまぁどうしようもない。経営的には成功かもしれんが労働者目線からしたら面倒の一言。それでいて賃金が安いってんだからまぁ歪な構造だよ。原材料の高騰で商品価格上がるんだから人件費の高騰でサービス料くらいとってもよさそうなもんだがな。まぁそれをやるとサービス料取らない店が一人勝ちしちゃうんだけどな。ぐへへ。




「起きそう! 起きそうですよー! レム睡眠でウサギちゃんの夢をみているスーパービューティフルウーマンの島ムー子ちゃんが長い長い眠りから今目覚めようとしていますよー! でもこのまま簡単に起き上がってしまうのはもったいないよねー! だってこのムー子ちゃんに“そろそろ起きてムー子ちゃん。やっぱりムー子ちゃんがいないと寂しいよぉ”って声をかけられる幸福が得られないんだからー! だから私はまだ眠っているー! 誰かに起こされるまでは眠り続けるー! ビューティードリーマー! スリーピービューティー! さー誰かなー!? このムー子ちゃんを起こせる世界で一番の幸せ者はー!? 早いもの勝ちー! 早いもの勝ちですよー!? ムー子ちゃんを起こすのはいったいー!? いったい誰なんだー!? あぁーーーーーーーーーーー楽しみだなぁーーーーーーーーーーーーーーー!? むにゃーーーーーーーーーーー!」





「クリスタル。スピリタスある?」


「あるけど……」


「じゃあボトルと、ショットグラス一つ。あとライター」


「火気厳禁だよ〜?」


「大丈夫だ。任せておけ」


「……」




 ドン。




 アイボリーのラベルにグリーンのフォントカラー。禍々しいね! さ、こいつをグラスに入れて……




 クイッ!





 おっふ! 口に入れるだけで強烈なアルコール臭! こりゃいかん。舌が焼ける。はやいとこ済まそう。よーしいくぞー!? せーの、着火ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!




 ボッ! 



 ヨガフレィム。



 ブフゥゥゥゥゥゥゥゥ!

 ブワァァァァァァァァ!




「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ! 火、火、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」




 燃え上がれムー子! 金閣寺のように!





 ※火吹き芸は危険です。絶対に真似しないでください

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る