サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました23
「せっかく親元から離れたんだ。なにかやってみたらどうだ。楽器とか」
四十手前のおじさんって何故か楽器に興味持ちだしたりするよね。なんなんだろうねあれ。
というかピカ次君。アドバイスが浅いんよ。趣味持て。楽器とかどうよ。なんてお前、今日日SNSの鬱相談会場でも見ねーぞ。
「楽器ねぇ。柄じゃないんだよねぇ。私リコーダーもてんで駄目だったしぃ」
「ビーマニやろうぜビーマニ。クリスタル。この店にビーマニ置いてくれよ。通うから」
「アーケードゲーム置くのは風営法的にどうなんだろうね~。まぁでも~問題ないのであれば一つの売りになるかも~。聞いてはみるね~」
「許可出たらついでにクレタクとアフターバーナーと戦場の絆も設置しようぜ! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ俺好みの穴場スポットができちまうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「もはや何屋さんか分からなくなっちゃうよ~? そういえば~ピカ太さんはゲームとかアニメとか好きなんだよね~? そういうジャンルに携わる仕事してみたいな~って思たりしないの~?」
「ないな。俺は一消費者であり続けたい。意図せず関わってしまう事もあるが……」
「あ~ピカ太さん代理店勤務だったもんね~。例えばどんな事してたの~?」
「守秘義務があるから詳細は言えんが、まぁマーケット調査だな。Twitterなどに投稿された情報を基に統計を取りレポート化するみたいな」
「へぇ~凄~い」
「凄い事あるもんか。投稿データはツールさえ使えば取れるうえに、前提としてTwitter情報の価値があやふや。一応形としてのデータは取れるからソースとしての機能はあるだろうけどそこまで大きな仕事じゃない。まんま下請けよ」
「それでも凄いと思うな~普通レポートなんて書けないし~」
「俺からしたらモデルやってるあんたの方が特別で凄いと思うがね。普通は好きだからっていってなれる職業でもないし」
「私の方こそ大した事ないよ~専業で食べていけてないしね~。それに~小さいからモデル諦めようとしてたって言ったけど~皮肉なもので小さいからこそ入ってくる仕事なんかもあって~。でも小さいからパリコレは難しいっていうジレンマが生まれて~なんというか~あちらを立てればこちらが立たず~みたいな~?」
「あぁ。何となく分かる。オプションで付けた業務がメインになっちゃって旨味ないのに継続しちゃうみたいな案件あるわ」
忘れもしない省庁関連の案件。公営なんて適当に済ませられるだろうと思ってったらめっちゃ厳しいんだあいつら。テレビで「杜撰な管理が~」なんてよく言ってるけど嘘だよ。予算ケチる癖にひたすら働かせようとしてくるし目敏い。おかげでなんかい納品物を再送した事か……内容自体は面白かったがあんなに文句言われた仕事はそうないよ。次回やるなら管理は他の人に担当してもらいたいね。
「……なんか、二人供いいなぁ」
「? なにがだ」
「うんとね。そうやって仕事の話ができるのって、凄いなって。頑張ったからこそ言葉が出てくるんじゃないかなぁって」
「まぁ、ある程度は頑張らないと解雇されて食えなくなるからな」
「私は好きでやってるから~頑張ってるっていうか~楽しみながらやってるかな~」
「そういう風に考えるのも私には無理だもん。親がやれっていうからやってます~としか答えられないなって。情熱もなければ動機も薄くて、ちょっと恥ずかしいな」
「それは別に悪い事じゃないだろう。好きな事を仕事にできず悶々としたり、好きでもない仕事を嫌々やるよりはまだ健全な気がするけどな」
「健全なものか。受動でしか生きていけない人間は不幸だ。自らの意思で考え動かなければ命がある意味がない」
「と、ニートが申しております」
「なんとでも言え。ともかくピチウ。お前はお前の自由のために生きるべきだ。家業は俺が継ぐから安心しろ。やりたい事がないのであればこれから探せ。見つからなくても探したという結果がお前の人生においてプラスになる。これからは親の目や言葉に惑わされる事なく、心のままにあればいいんだ」
「自己啓発みたいなセリフだな。俺はよくないと思うなぁそういうの。確かに聞こえはいいけど、結局責任も義務も放棄していいじゃん! って言ってるようなもんだろ? 社会的にそれってどうなのよ」
「そんなものピチウ以外でやっていればいい」
「選民とかのレベルじゃねぇな。まぁいい。じゃ、仮にピチウが自由人になったとしよう。それで金がなくなったらどうするんだ。結局やりたくもない仕事に就かなきゃいけなくなるんだぞ?」
「その時は俺がなんとかする」
「なんとかって……まぁその身体使えばなんとでもなるだろうが、しかしそれこそ不自由なんじゃないか? 誰かに生かされてるって事はつまり、生命の自由を他人に委ねているって事だろ? 一番の束縛じゃね?」
「俺の事など気にしなければいいだけの話だ」
「お前それは独りよがり過ぎるぞ。クリスタル。なんか言ってやれ」
「おかわり飲みますか~?」
「同じものをくれ」
「は~い」
「……」
ピカ次君の奴、変な方向に振り切れちゃったな。妹好きだから殺したい! なんて欲求よりははるかにましだろうが、なんか、難儀だし不憫だなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます